千七十八 三つの時代劇(必殺仕掛人、木枯し紋次郎、子連れ狼)
平成三十戊戌
一月十四日(日)必殺仕掛人
今回私の頭の中で時代劇ブームとなり、結果として三つの時代劇を観ることになった。そのきっかけは先週の土曜に、必殺仕事人2016と云ふ番組を観たことだった。正午から14時15分までだった。題名のとおり一昨年の番組の再放送だった。
依頼人からお金を受け取って殺害を請け負ふ。しかし相手は悪質な人間に限る。そこには法律を超えた人としての道徳に反しない原理があり、今では許されないことだが時代劇にすることで法の支配を超越させ、それが高い人気に繋がったのだらう。
インターネットの動画で、必殺仕掛人と云ふ昭和47年(1972)の第一話も観た。この時点で仕掛人と仕事人の違ひが判らず、同じシリーズなのだらうと信じて疑はなかった。話は必殺仕事人2016と変はらずお金を受け取って殺害を請け負ふ。相手は悪質な人間に限ることは2016と同じだった。
一月十四日(日)その二木枯し紋次郎
これまで時代劇と云ふと、二十年程前までは大河ドラマを毎年観たし、ときどき「水戸黄門」「暴れん坊将軍」「遠山の金さん」を観ることもあった。しかし「必殺仕掛人」は初めてだったので、当時の時代劇を他にも観ようと思ひ立ち、インターネット動画で「木枯し紋次郎」を二つ観た。ここで私の頭の中が時代劇ブームになった。
その理由は一昨年ジャパンスネークセンターに行ったとき隣に三日月村と云ふ展示施設があったからだ。そのとき木枯し紋次郎の名は、多くの時代劇の一つとして私の記憶に入った。だから木枯し紋次郎をインターネットで検索して初めて、あのときの三日月村かと記憶が蘇った。
木枯し紋次郎は第一話「川留めの水は濁った」と第六話「大江戸の夜を走れ」を観た。話の筋に芸術性もある。紋次郎と見知らぬ女が宿の同じ部屋に短時間居るが、別に何でもない。昭和四十七年(1972)辺りはこれが当然だった。その後、アメリカではエレベータに女性が乗らうとして別の男が居るときは一台待つ話を聞いてずいぶん野蛮な国だと思ったが、今では日本もそれに近くなってしまった。さうなる前の話だった。
紋次郎と云へば「あっしには関はりのないことでござんす」が流行語になったが、それに近いセリフはあったがこれは出て来なかった。念のため昨日、第三話「峠に哭いた甲州路」を観たところ「あっしには関はりのねえこって」が出てきた。インターネットもテレビは後者だが前者が流行ったとある。
一月十八日(木)子連れ狼
子連れ狼を観て、私の時代劇ブームは終了した。まづ第1部15話「来たから南、西から東」。信州の小藩(伊那辺りがモデルか)は貧乏なのに年貢を上げず善政を続けた。それには隠し金山があった。筆頭家老の娘は甲府代官に嫁ぎ、代官は隠し金山を見逃してきた。
ところが幕府の知るところとなり、代官は江戸に護送されることになった。筆頭家老は代官の暗殺を子連れ狼に依頼する。自分たちの違法を棚に上げて婿を口封じに殺害しようとする。その非道徳が嫌いだ。あと場面の途中にエロまがひの部分がほんの数秒だがあった。
子連れ狼は漫画をテレビ化したものだ。テレビで放送するには内容の修正が必要だ。それが子連れ狼には欠けた。二番目に第1部7話「あんにゃとあねま」を観た。これは女郎屋のおかみとの駆け引きで芸術性はある。しかしエロまがひの部分がやはりほんの数秒だがあった。子連れ狼は主題歌も流行り、あの当時は大変な人気だった。しかし漫画のテレビドラマ化が不十分と云ふ欠陥があったため、時代劇全体に与えた影響と、その後の時代劇衰退に繋がったのではないか。
一月二十日(土)大河ドラマ
私はNHKの大河ドラマを第七作「天と地と」から三十七作「徳川慶喜」まで、現代物の二十四作を除いてすべて観た。三十八作以降を見なくなったのは、大河ドラマはわずかだが子供に見せたくない場面がある。子連れ狼のやうに低俗なエロではないのだが、やはり見せたくなかった。
日本は江戸時代までは性におおらかで、しかし明治維新後にだんだん西洋流に厳しくなっていった。これはよいことだ。江戸時代は太平であるとともに堕落の歴史でもあったのだから。落語で西洋人に聞かせたくない噺があるが、時代劇も同じだ。矯正の機会のないことが衰退に繋がったのではないか。
今の世は逆に西洋の堕落がひどい。ひどくても欧州にはまだ社会秩序が残る。日本が今後すべきは西洋の悪いところは真似してはいけない。時代劇のほとんどなくなったテレビは異常だ。(完)
追記一月二十日(土)
先週の日曜は大河ドラマを見ることができなかった。そのため本日再放送を観て、一つ気付いたことがある。大河ドラマでは主人公が大声を張り上げて正論を述べることがある。例へ正論でも大声を張り上げてはいけない。子供のころから大河ドラマを見てああ云ふ正確になるといけないので見ないのは、もう一つの理由だった。
子供が大きくなり再び大河ドラマを観るやうになったが、途中で止めることがほとんどなのは、NHKの堕落が原因か、私の年齢が上がって番組を見る目が厳しくなったためか。
今年の「西郷どん」はテンポが良いし、あらすじも面白い。鹿児島弁なのもよい。或いは最終回まで見続けるかも知れない。
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