千六十七(その八十) 特区の獣医学部は一時的なものだ
平成二十九丁酉年
十二月二十八日(木)
特区とは一時的なものだ。特区が廃止されたときには、それによって認可されたものも廃止される。加計学園については、テレビの報道で受験者が愛媛県や四国とは無縁のことばかり話した。これで特区の意義は既に失はれた。特区を新設したときと状況は変はったのだから、速やかに廃止すべきだ。
さて日刊ゲンダイディジタル11月17日号に「集中審議で浮き彫り “加計ありき”認可プロセスのデタラメ」と題して良質な記事が載ったので、これを紹介したい。

十二月二十九日(金)
記事は「完全に居直った林文科相(C)日刊ゲンダイ」と云ふ解説とともに、片腕をついて前を向いたまま後の官僚から資料を受け取る林さんの写真で始まる。
安倍首相が国会から逃げ回るわけだ。加計学園の獣医学部新設計画の認可を受け、15日に開かれた衆院文科委員会の集中審議は文字通りグダグダ。改めて浮き彫りになったのが、「加計ありき」で猛然と進められたデタラメ認可プロセスだ。

といふ全体説明があり、具体的には
答弁に立った林文科相は特区の所管は内閣府だと早々に防衛線を張り、「設置審では特区構想との整合性について審査する役割を有していない」と逃げ口上。立憲民主の逢坂誠二議員から「4条件がクリアされたとは全く思えない。(特区指定は)どういう事実に基づき誰がどう判断したのか」と追及された内閣府の長坂康正政務官はシドロモドロ。言葉に窮してたびたび審議を中断させ、「4条件に異論がない中での議論だった」などと意味不明な答弁を繰り返した。

これらの内容は、特区を廃止させるときに役立つ。野党は今後もどんどん攻撃して特区を廃止させ、安倍を退陣させよう。
元文科省審議官の寺脇研氏(京都造形芸術大教授)は言う。
特区による獣医学部新設そのものが“加計ありき”で始まり、プロセスを積み上げずに突破したものだから、説明材料となる記録もないということなのでしょう。それにしても、ブザマな国会審議だった。質問に立った自民党の義家前文科副大臣なんか、前川喜平前文科次官への批判に時間を費やしていましたからね。大モメして野党から分捕った質問時間を個人攻撃に使うなんて、ちょっと信じられない感覚です」

まったくそのとおりだ。

十二月三十日(土)
記事は続く。
一方、認可答申に二の足を踏んだ設置審の背中を押したのは、内閣府の事務方がチラつかせた「加計からの損害賠償訴訟」のようだ。民主党政権時代に田中真紀子元文科相が大学新設の不認可に動いたが、賠償請求が持ち上がって頓挫。しかし、「把握している限り、不認可による損害を請求された事例はありません」(文科省大学設置室)という。
行政訴訟に詳しい湯川二朗弁護士はこう言う。
「学校法人側による賠償請求が認められるのは、明らかな国側の過失で計画通りに開校できなくなった場合や、学生の入学手続き後に認可を取り消され、損失が発生したケースでしょう」
であれば、加計学園は論外だ。認可前の学生募集はアウトだし、すでに完成間近の校舎建設についても林文科相は「一般的に自己責任」と答弁していた。「加計問題は疑惑の核心である安倍首相と“腹心の友”と呼ぶ加計孝太郎理事長を国会に引っ張り出さなければ、真相究明はあり得ません」(寺脇研氏)
逃げ得は許されない。

まったくそのとおりだ。そもそも加計学園の獣医学部は特区だから、一時的に認可されたものだ。ましてや先日のテレビ放送で明らかなやうに、既に特区を逸脱してゐるから、廃止の検討を開始すべきだ。(完)

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