千六十三(その一) 西部ゼミナール(伊藤貫さんとの対談)
平成二十九丁酉年
十二月十日(日)
昨日の放送は、伊藤貫さんとの対談だった。2割賛成8割反対だった。私のメモ書きを記し、賛成の部分を赤にすると
1.ヨーロッパは多極でバランスを取らうとする。1618年からの30年戦争から1945年までその思想。 ほとんどの日本人は2極または1極
2.今の日本人は感覚が変。今後は米中露印欧の五極になる。
3.米中合意、日本を独立国にはしない、1971年、キッシンジャーと周恩来の会談、日本は変な国だ。翻訳されてゐるのに日本人は読まない。
4.アメリカによる日本への核の傘が既にないのに、外務省の次官、局長、審議官は議論してゐない。日本が核攻撃を受けたときアメリカ本土に核攻撃の危険がある核による反撃をするはずがない。
5.ソ連、アメリカは人為的な国。イギリスの内戦でホイッグに不満を持つラヂカルホイッグがアメリカに出て行った。
6.アメリカに付くのが保守、ソ連に付くのが革新といふ変な考へ
7.アメリカの資本主義と、17~19世紀のヨーロッパの資本主義は異なる。
8.資産家が工場を造り、それを動かす労働者がゐるのに、0.1%の人が利益全部を持って行くアメリカの資本主義は変だ。マルクス以前にも皆が分ってゐた。


以上について説明を加へると
1.ヨーロッパに限らず、世界は2極または多極でバランスを取ることになる。これはヨーロッパだけではなくすべてがさうだ。1極になると、今度は1極内で対立が起きて、2極または多極になる。ヨーロッパが30年戦争から第二次大戦の終結まで多極だったのは事実だが、それをヨーロッパ人の思想とすることには賛成できない。

2.今の日本人は感覚が変なのは賛成だが、それは明治維新後の西洋猿真似、第二次大戦後の米ソ冷戦、その後のアメリカ1極への拝米と続いたことが原因だ。伊藤さんのやうに変だと云ふだけでは解決にならない。きちんと原因を挙げなくてはいけない。
米中露印欧の五極には反対だ。これは単に軍事力、人口で5つに分けただけだ。私は文化論で(1)人工移民国(アメリカ、イスラエル)、(2)中(中華的東アジア)、(3)日本ASEAN等(非中華的アジア東部)、(4)インド(インド、パキスタン、スリランカ等)、(5)イスラム西アジア(アラブ、イラン)の5つになると見た。

3.米中合意で容認できるのは、当時の米ソ冷戦下で日本を軍事的に独立国としないことだけだ。日本を変な国とキッシンジャーと周恩来が話したのは、その原因を探るべきで、その部分だけ文脈から切り離してはいけない。まづ当時の中国は毛沢東主義だから人造国家で、アメリカもさうだった。人造国家どうしから見れば、日本に限らず世界中は変な国だ。2番目に敗戦を迎へても第一次大戦に敗戦した後のドイツみたいに皇帝を廃止しないのは変だと思ったのだらう。それは鎌倉幕府から江戸幕府までの歴史をキッシンジャーと周恩来が知らなかったからだ。変でも何でもない。

4.アメリカによる日本への核の傘は今でも有効だ。しかし北朝鮮が核を持ったら地球は無法地帯と化すから、これは阻止しなくてはいけない。

5.これは賛成だ。賛成だが産業革命以後、人為的な状態になったから、それへの対応としてマルクスなどが現れた。ロシアはさうなる前の状態で共産主義革命が起きたから人為的な状態になった。その分析が無い。

6.アメリカに付くのが保守と云ふのは間違いで、これは賛成だ。一方、米ソ冷戦下の社会党と共産党を革新と呼ぶのは、当時の正式な日本語用法だったし、多くの国民は革新に期待した。私も美濃部革新都政の東京から埼玉県に引っ越したとき、同じく革新の畑県政だったので悦んだものだった。当時の国民の革新への期待度を考慮する必要がある。

7.朝鮮戦争の後は、米ソ冷戦だから資本主義は労働者寄りになった。17~19世紀のヨーロッパは労働者の悲惨な生活や帝国主義の段階だから米ソ冷戦下の資本主義よりはるかに悪い。一方、アメリカの資本主義は、ソ連崩壊後の資本主義だから、これは悪質だ。マルクスの前にも多くの人が社会主義を考へたことは賛成だ。たまたまロシア革命で共産党が政権を握ったため、マルクスが有名になっただけだ。(完)

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