千四十 シンポジウム「トランプ時代の日米同盟」を聴いて
平成二十九丁酉年
十月二十七日(金)
本日は有給休暇を取り、日経新聞社と米戦略国際問題研究所が共催のシンポジウム「トランプ時代の日米同盟」を聴きに行った。私は、英語公用語論だのアメリカ留学猿真似ニセ文系学者・官僚には反対だが、日米安保条約そのものに反対ではない。かつての米ソ冷戦時代と今は時代が異なる。
軍事同盟と文化は別の問題だ。アメリカは世界一の軍事大国、日本は軍隊を持たない国だ(自衛隊は軍隊ではない)。だから同盟とは名ばかりで軍事上は不均衡だ。軍事上で属国だと精神まで属国になりやすい。それが防止できれば軍事同盟に反対ではない。
ソフトパワーを論じたジョセフ・ナイさんの主張を悪用すると文化でも属国になってしまふ。だからジョセフ・ナイさんの(1)実物と(2)話し方と(3)話の内容を観よう。これが今回の一番目の目的だ。
二番目に元アメリカ海軍作戦部長の話の内容を聴こう。これが二番目の目的だった。ナイさんと比べて(1)実物と(2)話し方がナイ(無い)が、それほど理由は無い。素晴らしい人物だったとなるかも知れなかった。
三番目に北岡伸一さんは、私の印象では英語公用語論だのが出てきた時代に極めて拝米、つまり本当の右翼・左翼の表現では売国奴の印象がある。しかしその後の主張を見るとそれほど特異ではない。そこを観ようと云ふ思ひがあった。
四番目に現役の防衛大学校校長國分良成さんが出演する。防衛大学校元教授戸部良一さんが東條英機を称賛したことがあった。これ自体は大した内容ではないから一笑に付せばよい。ところがYahooのアクセスランキングて戸部さんの記事が上位になった。アクセスランキングは短期で変動するから無視すればよいのだが、防衛大学校校長が出演するのでつひでに見ようと云ふ考へもあった。

十月二十八日(土)
一番がっかりしたのは、基調講演の元アメリカ海軍作戦部長だ。作戦部長は米海軍の制服組トップ。しかも太平洋と大西洋の艦隊を指揮したのはこの人の他に一人しかゐない。それなのに話の中身が無い。抽象的な話ばかりだ。あと話に面白さがない。アメリカ人は話すときに面白いことを言ってから始めるのが礼儀だ。この人は完全に手を抜いたな。これが感想だった。
太平洋と大西洋の違ひでもよい。面白い話なら幾らでもあるはずだ。こんな完全な手抜きでも日本人はありがたがると思ってゐるらしい。実に人を馬鹿にした話だ。

十月二十八日(土)その二
パネル討論で司会兼パネリスト、二人のアメリカ人は反トランプなことに驚いた。北岡伸一さんは現JICA理事長。安倍を褒める発言が多く、トランプを批判するアメリカ人二人とは大違ひだが、海外協力の対象国の選定が日本の戦略と関はってゐる話は、事の是非はともかくよかった。事の是非とは、中国の一路一帯に対抗することは有益なのか。無駄な努力のやうな気がする。それより日本語の発言は聞いてゐて有意義だ。アメリカ人の英語の発言は通訳で情報量が落ちる。情報量とは中身ばかりではない。話し方も情報量のうちだ。

十月二十八日(土)その三
二十分間の休憩の後に自民党副総裁高村正彦さんによる特別講演「憲法と日米同盟」は内容と云ひ、話し方と云ひ良質だった。まづ昨日の講演と同じ内容を話さうと思ったら題が憲法と日米同盟」で違ってゐたと話して、皆を笑はせた。会場に大きな笑ひ声はなくても皆が心の中で笑った。日本社会党の左右合同と自民党の誕生、砂川最高裁判決は現在の憲法学者の大勢とは異なることなどを話された。
講演の途中でハンドレシーバを2chにして英語でも聞いてみた。パネルディスカッションでのアメリカ人の英語よりはるかに遅い。日本語で聞く分には何の問題もないが、英語で聞くとかなり遅く感じた。高村さんの講演はよかったので、副総裁職を誰かの役職と交換すればよいのにと余分な ことを考へてしまった。

十月二十八日(土)その四
元国務副長官アーミテージさんと、元国防次官補でハーバード大学教授のナイさん、司会日経新聞社役員による「アーミテージ、ナイ白熱討論会」は聴衆による投票がよかった。入口で配布されたプログラムの表は青、裏は橙。表は賛成、裏は反対で十回ほど投票を行った。自民党を支持するかは、会場の多くが賛成、安倍さんを支持するかは半分以上が反対。会場は笑ひ声につつまれた。いよいよ高村さんと役職を入れ替へたほうがいい。ナイさんから日本文化破壊のやうな発言は一つもなかったのはよかった。
私はシンポジウムの途中で、プログラムを紛失した。終了後の退場の時に受付でもう一部いただいた。だからアンケートは書く時間が無かった。提出しなかったのは今回の内容に反対だからではない。主催した日経新聞社に心から敬意を表し、入場できたことにこころから感謝をしたい。(完)

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