三千三百四十 物語(多田と石原、兵を将官まで昇進可能に)
丙午(西洋地球破壊人歴2026)年
十月二十四日(土)
はじめに 多田陸軍大臣
戦前の陸軍では、三長官(陸相、参謀総長、教育総監)人事を、三長官の合意で決める、とする慣行があった。此れに反して、真崎甚三郎が教育総監から更迭され、皇道派は三長官から椅子を失った。激怒した相沢三郎が、永田鉄山を惨殺した。そしてこれが、二二六事件の引き金となった。
もう一つ、三長官の合意が覆った事があった。多田駿が陸相に内定したのに、昭和天皇の意向で取り消された。理由は、おそらくその前に、日華事変の非拡大か拡大かを巡って、陸軍内と政府内で、大論争があった。多田は、非拡大の最先鋒だったので、また二二六事件のやうな事が起きるのを、嫌ったのだらう。
多田が参謀次長のときの参謀総長は閑院宮、石原の創設した戦争指導課の後進組織作戦課戦争指導班、に在籍した昭和天皇の弟秩父宮も非拡大派であり、昭和天皇自身も非拡大派のはずだった。
憲兵隊工作があり 軍内の反乱惧れ天皇が中立選び 東條勝利
反歌
天皇と皇族二名非拡大多田を潰すは歴史の悲劇
今回は、多田が陸相になったときの物語である。
第一章 多田陸相誕生
多田は、石原を作戦部長に戻し、内地へ呼び戻した。そして、石原の進言に従ひ、天皇と蒋介石が会談し、天皇のラヂオ放送を以て、停戦が実現した。心配した二二六事件みたいなことは、起きなかった。
日華事変が無いので、日本は第二次欧州大戦に巻き込まれず、従ってアメリカも、この大戦に参加しなかった。やがて、ソ連が戦線を離脱すると、連合国と同盟国は戦力が均衡し、アメリカの仲介で終戦した。
日本は、欧州の国力が弱った隙に、インドとアラブを後押しし、独立戦争を起こさせた。英仏蘭に戦争を止める余力は無く、中国もアジア側に立ち、すべてのアジアアフリカ諸国が独立した。日本と中国は、アジアアフリカ地域の太陽と称された。
第二章 石原を次官に
戦争の危険は無くなったので、多田は石原を陸軍省へ呼び、次官に任命した。そして、陸軍改革をやらせた。石原が常日頃云ったことに、兵は神だ、がある。将校は、号令を掛けるだけだ。兵が鉄砲を撃ち、大砲を操作する。
石原は次官に就任すると、言葉を実行した。それまで、兵の上に下士官があり、その上に士官があった。これを、兵曹と、士官の、複線とした。
農民と、米流通組織や米小売商は、どちらが偉いのではない。同じやうに、兵曹と士官は、どちらが偉いのではない。この理論を陸軍内に広めると、特務曹長、後に准尉と改称されるが、特務曹長の上位を順番に、曹尉、曹佐、曹将、と改称した。今までは、特務曹長の上位が、少尉だったので、士官の下に組み込まれてゐた。
士官学校を出た若い少尉と、二等兵から昇進し選抜された曹尉では、経験と年齢が違ふ。兵曹と士官の階級は、独立したものなので、どちらが上、と云ふことは無い。しかし、曹尉が大尉と同じになるのは、時間の問題だった。
曹佐は、佐官と比べると、任務内容による。とは云へ、曹佐の上は曹将なので、何となく大佐扱ひになった。曹将は、周囲によって、完全に異なった。退役し故郷へ戻れば、おらが村の大将、として大変な尊敬を集めた。前線では、部隊の指揮は取らなかった。それ以外では、人間性と経験豊かな、陸軍の宝として、重宝された。そもそもここまで来るには、東條英機の百倍の大脳細胞が必要だ。
第三章 最終戦争論変更
この制度は、徴兵制を大きく変へた。兵役満了になっても、親の田畑や商売を引き継がなくてよい人たちは、継続を希望した。陸軍省は、選抜に苦労した。皆にやる気が出るし、新兵に暴力でも振るへば、一発で出世街道から外れた。そもそも多田の改革で、暴行罪、更には傷害罪として、一般の裁判所で裁かれることになった。軍人が軍服を着て裁判所に行くのはみっともないので、上に蓑を着ることが流行った。法律で、軍服の上に洋服を着ることは禁止された為だった。
兵のやる気が出たので、日本は世界最強の陸海軍と云はれるやうになった。石原の「最終戦争論」の信奉者が、歓喜した。今こそ、アメリカを負かす時だ。石原は言った。世界情勢が、あの時と変はった。世界は、欧州、アジア、ソ連、アメリカの四強だ。
欧州は、二度の大戦に懲りて、EUを作った。それぞれの国は残るので、戦はず、しかし一つの強国に為らずで、よい状態だ。アジアは、日中印の三国がそれぞれ役割を果たし、これも佳い状態だ。ソ連は共産主義が世界で一国なので弱いし、アメリカは実戦の経験から遠ざかったので弱い。
日米激突から変化した今が、世界にとって楽園ではないのか。もし日米が最後に戦って勝ったときに、その国は三十年で堕落するだらう。
現実の世界はソ連崩壊後三十年で 温暖化アメリカ独裁リベラルと人類危うし地球危うし
反歌
三十年先進国は堕ち続け地球危うし地の底へ着く
欧州とアジアアフリカは、多数の国で構成される二強。ソ連とアメリカは、独裁国の準二強。これは安定するので、もはや最終戦争は起きない。これが石原の新しい最終戦争論だった。(終)
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