92、欧米野蛮人

平成ニ十年
八月三十一日(日)(欧米野蛮人)
最初に断っておくと、私は個々の欧米人が野蛮だとは全然思っていない。それにも関わらず欧米野蛮人を論じるには、二つの理由がある。
一つは、属国主義者がここ10年ほどさかんにうごめいている。売国奴といってもよい。これらと平衡を取る必要がある。
二つには、東洋人が欧米の真似をすると必ず野蛮になる。日本の大東亜戦争然り、カンボジアのポルポト然り。

九月一日(月)(織田信長)
日本史上もっとも残虐な男は織田信長である。比叡山を焼き討ちにして山内にいた僧俗を皆殺しにした。長島の一向一揆では、降伏して出てきたところをだまし討ちにし、残った砦は柵で囲って二万人を焼き殺した。
代々重臣として織田家に仕えてきた佐久間信盛は追放された。親子ともども出家して高野山で赦しを請うべきであろう、という信長の言葉に従って高野山で謹慎していたところ高野山からも追放した。
日本では前例のない残虐さは、織田信長が西洋を学んだことによる。地球が丸いことを知った信長は、何をしても神仏の罰はないと思い込んでしまった。

九月ニ日(火)(兵農分離)
信長が最も興味を持ったのは西洋の軍事であろう。それまでの日本は兵農が分離していなかった。戦で死傷者が多いと領地の農業は打撃を受ける。戦には自ずと限度があった。大河ドラマで川中島の合戦の後、武田信玄を囲み家臣団が「負傷した捕虜を甲斐まで連れてくるのは大変ですがどういたしましょうか」「農民だから国へ返してやれ」と相談する場面もあった。
信長軍は西洋の真似をして傭兵が多かったから、戦に限度がなかった。負けても信長だけ逃げれば、傭兵はあとからいくらでも補充できた。

九月三日(水)(西洋文明が切腹を作った)
信長の兵農分離はその死後も益々悪化した。豊臣秀吉は刀狩りと太閤検地を行い、徳川家康は士農工商の身分固定を強行した。武士が特権を保つためには他の身分向けの儀式が必要である。切腹を一般化させたのもその一環であった。それまではほとんど行われなかった。例えば平家一族は壇ノ浦で入水している。
江戸時代の切腹は介錯人が付いた。しかも切腹者が短刀で反撃する例があったため、短刀に手を伸ばすと同時に介錯人は首を刎ねた。短刀の代わりに木刀や扇子を用いるようにもなった。
歴史の教科書はこの点をしっかりと書く必要がある。黒人を奴隷にし、アメリカ先住民を滅ぼし、アジアアフリカを植民地にし、ユダヤ人を虐殺しその後始末をパレスチナ人の犠牲に転化した欧米野蛮人ではあるまいし、日本に残酷な風習があろうはずがない。
新渡戸稲造は著書「武士道」で「腹部には人間の霊魂と愛情が宿っているという古代の解剖学的信仰」と述べた。新渡戸は私費でアメリカに留学し奥さんはアメリカ人であった。切腹は西洋かぶれの織田信長から始まりアメリカかぶれの新渡戸稲造で完成した。

九月五日(金)(現在も続く欧米猿真似による残酷)
欧米猿真似による残酷は現在でも存在する。アメリカでは派遣が禁止されていないし英米では解雇が簡単だ、と日本が猿真似をしたため雇用破壊が起きた。
労働組合が職能別の国は派遣を認めても良い。転職が容易な国は解雇も容易でよい。日本でこれらを認めれば大変なことになる。ここ10年ほど40代以降の人たちの会話に、我々はまだいいけど子供の世代が心配だ、というものが多い。現代の残酷物語である。

九月六日(土)(民主主義という残酷な制度)
民主主義とは残酷な制度である。必ず最後は多数派が少数派をいじめる。ユダヤ人虐殺は民主主義の行く着く先であった。
終戦直後に日米自転車の町田工場は三百名のうち百四十名を解雇すると発表した。百六十名が多数決で解雇を認めるかどうかを労組に提案した。採決直前に平沢栄一氏(後に全国金属書記長)が「こんな多数決ってどこにあるか。もし百六十対百四十で解雇承認が決まるなら全金は百四十名のために断固たたかう。そうなれば会社自身がどうなるかわからない」と主張し、採決は取りやめになった。(平沢氏「争議屋」より)
沖電気では25年ほど前にこれと同じことが行われた。会社が指名解雇を提案し、各工場では集会やストライキなど大変な騒ぎになった。会社は少数の指名解雇を発表した。指名されなかった人たちはたちまちいい子になり電機労連と沖電気労組は解雇者を見捨てた。
日本でさかんに民主主義を叫ぶ人がいる。こういう連中は欺瞞である。江戸時代に民主主義を叫んだ人がいるとすれば、これは偉い。しかし現代に叫ぶ人は欧米かぶれ、少数切捨てという下心を持っている。

九月七日(日)(西洋と東洋1)
リチャード・E・ニスベットの著作「木を見る西洋人、森を見る東洋人」を紹介しよう。中国人の優秀な学生が次のように語った。 リチャードは東西両洋の哲学者、歴史家、文化人類学者の文献を次々に読み、この学生の言葉が正しいことを悟った。

九月八日(月)(西洋と東洋2)
「あなたはどんな人ですか」という質問に対して 他の質問についても同様である。 ハムデン=ターナーとトロンペナールスの研究は、西洋人と東洋人が会社を収益体とみるか共同体とみるかなど、日本の会社がここ15年ほどなぜ駄目になってしまったかを示している。ここでは西洋にも幅がある部分を取り上げてみよう。 日本はアメリカ、イギリスの真似は絶対にしてはならないことを示している。

九月九日(火)(言語を考える)
東洋と西洋の違いの原因の一つに言語が挙げられる。

九月十一日(木)(二重規範)
西洋と東洋の違いを知らず、自分たちのやり方を押し付ける欧米は野蛮人である。それでは西洋と東洋の違いを認めた上で、西洋と東洋の両方の文化を身に付けるのはどうであろうか。
一見よさそうに見える。しかし弊害のほうが大きい。まずは二重規範である。日本は世界有数の自殺大国である。経済が貧しいと自殺者は増える。日本の経済水準から考えると極めて異常である。原因は国内と欧米という二つの規範があり、国民の精神が混乱しているからである。あの高度成長のときでさえ、カローシ(過労死)という単語が世界に広まるほど日本は飢えていた。
二重規範のいけない理由は、正直な人、善良な者が損をすることにある。そのような社会は絶対に永続できない。

九月十三日(土)(平衡に時間が掛かり過ぎる)
西洋のやり方が東洋で平衡するには時間がかかる。まず日本が西洋の真似をして侵略を始めた。そして敗れた。戦後は日本や香港が西洋の真似をして経済が伸びた。他の国々も真似を始めた。長い精神混乱が続き各国の格差はなくなりいつかは平衡しよう。
しかし西洋ですら未だに平衡していない。近代化の結果、出生率が低下した。欧州は人口が減りいつか平衡しよう。しかしアメリカという出生率が高い化け物が現れた。人類滅亡前に平衡は不可能である。

九月十四日(日)(必ず野蛮となる理由)
冒頭に東洋人が欧米の真似をすると必ず野蛮となる、と書いた。必ず、と断言するのはニつの理由に拠る。
一つには欧米のこれまでの野蛮な植民地政策を肯定している。二つ目には多数の生物が滅ぶことを肯定している。西洋文明は徹頭徹尾野蛮である。地球を守るにはここから出発する必要がある。


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