48、論理の平衡と感情の平衡
平成十七年
9月3日
保守思想の要諦は平衡にある。
手すりのない丸木橋では、右にそれても左にそれても谷川に落ちる。
文化の永続は、大変な努力が必要である。
明治以降の日本は欧米の真似で戦争に負け、今またアメリカの猿真似で亡国寸前である。
日本人は論理で平衡を取らず、感情で平衡を取ってきた。
これが今回のテーマである。
9月5日
世界は平衡を求めて動いている。
日清、日露戦争のときは小国の日本を支援し、日本が強くなり過ぎたら戦争で叩き潰す。
貿易摩擦も同じである。日本が強大になり過ぎたら、ブラザ合意と日本文化破壊でこれを抑える。
プラザ合意は経済内部の問題だが、日本文化破壊は先祖が長い間かけて築いてきたものを破壊してしまう。防がなければならない。
9月7日
人類は進歩するから、過去の文化は不要だという考えもある。
この思想を最も信じているのが、アメリカ自由主義と旧ソ連共産主義であり、西部邁氏が主張するように、まさに進歩主義個人派と進歩主義集団派の内ゲバであった。
世の中の矛盾を解決しても、新たな矛盾を生む。例えば独裁者や資本主義を倒しても、ポピュリストや党内幹部という新たな矛盾が出てくる。
9月9日
1つの矛盾を解決し、その結果生じる矛盾が前より小さいのであれば、どんどん矛盾は潰したほうがいい。まさに科学的弁証法である。
しかし昔の人は、今の人より賢くはあっても馬鹿ではない。
過去から現在に至る膨大な人数の智慧と、今を生きる僅かな人たちの智慧では、過去のほうが優れているに決まっている。
今の人が昔より賢そうに見えるのは、資源大量浪費による人類滅亡と引き換えである。
人類滅亡を防ぐには資源浪費をやめることだ。その結果、貧乏が戻る。
資源浪費文明の落し子、マルクスの思想のうち、唯物弁証法は時代遅れの思想として廃棄すべきである。
その代わり、貧乏に戻った人類の富の再分配にマルクス経済学も役立つであろう。
一人の思想家が100%正しいこともないし100%間違っていることもない。
9月11日
私の主張は西部氏に近いが100%同じではない。
西部氏の主張に、日本は神道で儀式を行うべきで一番古い祭祀だからだ、というものがある。
1ヶ月前にフジテレビが靖国神社の討論会を行い、ここでも西部氏は同じ主張を行った。
このとき松本健一氏は、靖国神社に政府が介入し従わなければ解散させるべきだ、と主張し、菅直人氏は神仏習合で行くべきだ、と主張した。このとき私は松本、菅の両氏と同意見だった。
西部氏の主張に従うと、パレスチナの地はパレスチナ人より古いユダヤ人のものになってしまう。どれを採用すべきかは次の4つに依る。
- どれが古いか
- どれが長いか
- どれが現在に近いか
- どれが人為的や外圧の影響で為されたのではないか
神道は一番古いが、神仏習合は極めて長い。現在に一番近いのは戦後の唯物論だがこれはアメリカによる日本文化破壊政策であり、二番目に近いのは明治維新以降の国家神道だが黒船というアメリカ砲艦外交による国内混乱の結果だから除外する。
私の主張が松本、菅の両氏と同じなのは以上の理由による。
松本氏は西部氏に近いから驚くにあたらないが、保守主義とは平衡主義であるから菅氏と同意見なのも驚くに値しない。
なお、先程の4つの条件は常に正しいとは限らない。こういう場合はどうなんだ、やはり西部氏が正しいではないか、という場合だってある。100%正しい人も100%間違っている人もいない。
9月13日
すべての現象は収束か発散である。収束とは永続であり発散とは滅亡である。
一方では発散即収束でもある。つまり発散に因り人類が滅びれば、地球全体では収束する。しかしそれでいいのか。
かつて全国都市部に革新知事市長を誕生させた市民パワーは、ソ連崩壊とともマルクス経済学を捨て唯物弁証法だけを保ち、市民派となった。
エンゲルスは、自然科学の分野で画期的な発見が行われるたびに、唯物論は形態を変えなければならない、と述べた。経済が解決しても人心を不安定にするだけで、各民族各地域文化の重要性が発見された今こそ、唯物論は形態を変えるべきである。
9月15日
唯物論は社会主義の専売特許だと思われている。しかし財界も唯物論である。
円高は文化破壊の元凶である。
財界がすべきことは貿易黒字の解消であり、それには時間外規制しかない。
すべての会社が時間内に終わらせる。その上で各社が競争すべきである。
海外進出もすべきではない。貿易収支の平衡が機能しなくなる。
失業者とニートと外国製品とアメリカかぶればかりが街に溢れる。そんな国で会社だけ利益を上げてどうするのか。
9月17日
今、世界の関心事は、世界一の石油浪費国アメリカをどう平衡させるかにある。
日本はアメリカの集金マシンと化している。世界から集めた貿易黒字をアメリカに貢いでいる。
アメリカが起こす戦争は、日本のカネに責任がある。
日本もアメリカをどう平衡させるかを考えるべきである。
アメリカを増大させ人類を滅ぼすことで地球の平衡を取ることだけは避けたい。
9月19日
日本はそもそも論理で平衡を考えてこなかったのではないか。
その代わり感情で平衡を取ろうとした。
貿易黒字を解消することなく、首脳会談でにやにやするだけの首相が出現したのもそのためである。
貿易黒字は輸出を削減するしかない。にやにやして済む問題ではない。
日本はまず国内で、論理の矛盾は論理で解決するようにすべきである。
にやにやする人は自分が不利になることに対してにやにやしている訳ではない。全体が不利になっても自分だけは有利にしてもらいたくて追従笑いを浮かべているのである。
今後会議でにやにやする人は不要である。要職にも付けるべきではない。
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