15、中だるみ社会


1 ピラミッド型社会
算盤玉を机の上に置いてみると不安定である。日本の社会が心理的に不安定なのは算盤玉型に中央が脹れているからである。それに対してピラミッド型の社会は安定である。下層は収入が少ないが人数が一番多く、心が安定している。今の日本は中間層がひしめき合っている。日本のホワイトカラーの収入がブルーカラーより多いのは、たまたまホワイトカラーの人数が昔は少なかったからである。工場労働者全体の給料を上げるのは大変だが、少ないホワイトカラーの給料を上げてもたかが知れていた。ホワイトカラーが優秀だったからではない。

2 日本薄給協会
上からの中だるみもある。優秀な人たちを、官僚主義の会社や官庁に置き中間層にしておくことは、人間の無駄使いである。このような組織の給料が高くなりすぎたことが、日本が活性を失った原因である。公務員の給料は民間の平均ということになっている。
民間の給料が対数正規分布に従うことは、統計学の基礎である。この分布を単純平均で計算すると実際より高い金額となる。人事院勧告が単純平均を用いているのかどうか判らないが、そうだとしたら対数平均に改めるべきである。また、失業者も年収の計算に加える必要がある。
昔は「NHKは日本薄給協会の略だ」と言われていたそうである。公務員、特殊法人、政府の保護下にある産業は薄給を保ってこそ、日本は活性化する。優秀な人は民間に流れるようにしなくてはならない。官僚組織は事務方に徹するべきである。その分は優秀な政治家や党職員が穴埋めすべきである。

3 需要と供給
日本では貧富の格差が少ない。しかし日本の風土を考えると、格差を拡大すべきではない。肉体労働と言われる職業で、若い人たちに金髪に染めた人が多いことが気になる。昔の肉体労働者は仕事に誇りを持っていた。給料は需供関係で決めるべきである。ホワイトカラー希望者が少なく日本経済に悪影響があれば別だが、ブルーカラーの給料がホワイトカラーより高くても不思議はない。 職業に誇りを持てず不満だらけの人に、「日本に誇りを持て」と言ってみても無理がある。ブルーカラーが誇りを持って働ける社会にする必要がある。

4 大学入試は、試験抽選制に
大学入試があるために、高校、中学、小学校の教育は、目的ではなく手段となってしまっている。試験に合格するも不合格となるも、はっきり言ってばらつき範囲内である。その上、試験が終われば覚えたことは忘れる。入試は、半分は、運だめし兼我慢競争である。
入試は、まず学力が充分な人を選択し、この中から抽選で選んだらどうだろうか。完全な成績順と比べれば、学力平均点は下がるだろう。しかし小学校から高校までの教育が、手段から目的に戻り、16年間全体の総教育効果を考えれば、欠点より得るもののほうが大きい。出身大学名は半分は抽選運だから、企業も人の能力を見る目が養われるようになる。
欠点として受験勉強をあまりしなくなることである。その対策として、ここに授業三分の計がある。

5 授業三分の計
10年も前の事だが、コンピュータ専門学校の教師を数年間勤めた。そのとき考えたのが授業三分の計である。三分は三分割であり3分間でもある。 授業を、最初の3分間、本題、最後の3分間の3つに分ける。まず本題に入る前に、前回の授業内容を3分に要約して復習する。授業が終わる3分前に、その日の内容を同じく3分で話す。理解しなくてはならない内容と覚えなければならない教科書の個所の指摘を3分間にまとめることは、大変である。しかしそれより大変なのは、3分で教えられる内容を1時間かけて講義していることを生徒、学生に悟られないようにすることである。授業三分の計を用いれば、学習効率は3倍にはなるだろう。


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