19、3つの封印



日本は、57年を経過しても終戦直後症候群を抜け出せないでいるが、それは巧みに3つの封印が貼られているからである。1つは左右対立という封印、2つ目は神仏対立の封印、3つ目は東アジア対立の封印である。 動物園のオリの中で日本人どうしが、左右、神仏、親中反中で大喧嘩をしている姿に、オリの外で世界中の人たちが腹を抱えて大笑いしているのである。

1 本居宣長
本居宣長の時代に日本に流入していた外来文化は、ほとんどが中国からである。日本文化の復活を目指すときに中国文化を批判したのは当然のことである。
翻って現在の日本を考えると、許容限度を越えて入りこんでしまったアメリカ文化に反対する事は当然である。本居宣長が今を生きていたら「アメリカ文化を排斥せよ」と叫ぶであろう。

2 当時の世界標準
今から50年後に「貿易黒字国こそ50年前の、貧困、テロのA級戦犯であった」と世界中が突然言い出し、日本の首相がアフリカやアフガニスタンに行くたびに謝罪させられたりしたら、どうだろうか。誰もが「当時の世界ルールに従っていただけで日本が悪い訳ではない」と反論しよう。 戦前の日本も同じである。当時の世界ルールに従ったのである。侵略された国々から見れば、これほど残酷な話はないが、その残酷さが当時の世界ルールであり、欧米思想なのだった。
多くの日本人が、日本そのものが悪かったと考えているが、日本が反省すべきは、欧米の真似をしたことである。そのことを反省しないから、本当に反省していないという意見や、自虐的だという反発が出るのである。

3 佐藤A作
あのとき、東条英機ではなく佐藤栄作がタイムスリップして首相になっていたら、どうなっていただろうか。それでも戦争は避けられなかっただろう。佐藤栄作は、ノーベル平和賞の代わりにA級戦犯になっていたであろう。名前も佐藤A作と改名しなければならなかった。

4 泣いて馬謖を斬る
誰が首相になっても避けられぬ戦争を、東条英機一人の責任にするのは酷である。しかし、モンゴルが突然、フビライハンを日本攻撃の功績により歴史英雄に指定したらどうなるだろうか。アメリカが原爆投下者を国民英雄にしたら、どうなるだろうか。日本人は、泣いて馬謖を斬る思いで、東条英機を扱わなければならない。

5 中国国民党
中国国民党の軍規の悪さは有名で、そこを「三大規律八項注意」の共産党に突かれ敗れた。 戦後、日本人が国民党を悪く言うことはほとんどなかった。親台派にはできなかったし、親中派は気にもとめなかった。 蒋介石は、共産党員大量処刑など共産党に対し酷いことをしたし、戦後、台湾住民の大量殺害も行った。しかし大陸では共産党が、台湾では民進党が政権を取った。李登輝氏も国民党を離れた。国民党を正当に批判することが、日中台すべてが円満に収まる方法だと思う。


6 伝統文化軽視思想を憎み、共産主義を憎まず
多数の飢えた人と、力を持つ宗教界。このような状況下で考え出された共産主義が、伝統文化や宗教を軽視したとしても、今の世界に当てはめて非難することはできない。餓えた人にとっては、伝統文化なんぞはどうでもいいし、科学が発達し始めた当時では宗教が人類に必要なことを認識できる筈もない。
目を現代に戻せば、経済競争しか頭に無い市場主義や、贅沢家畜の生活を目指すアメリカ民主党的個人主義こそ、世界で最も伝統文化を軽視している。マルクスが今を生きていたら、伝統文化や宗教の重要性を認識したのではないだろうか。
左のひげが長い猫も右のひげが長い猫も、グローバルネズミを退治し、長年かけて築いた人類遺産を守る猫は良い猫である。

7 20世紀で最も賞賛される軍隊
「三大規律八項注意」で国民党を破った人民解放軍と、アメリカを遥かに上回る犠牲を出しながらついに勝利したベトナムは、20世紀で最も賞賛される軍隊である。どちらも多数の犠牲を出し勝利したのだから、アメリカから政治体制を云々されるいわれはない。その一方で、世代は交代し今の軍幹部に当時の関係者は少ない。また、戦争が得意でも政治が得意とは限らない。イギリスが香港を返還したのは、国境が平穏だったからである。毎年のように軍事衝突が起きていたら、999年経っても返還はしないだろう。賞賛されるべき軍隊には、世界は賞賛をもってあたるべきである。自主的に独自の民主主義を目指すと確信している。

8 色変えぬ松
日本外務省のチャイナスクールと呼ばれる人たちが、一時話題になった。外国語の習得は、気が遠くなるほどの努力が必要である。その間に心までその国に染まってしまうことが多い。外国語を学ぶ前に、降り積もる雪に耐え色を変えぬ松になる決意が重要である。 それでもチャイナスクールは、外務省内のごく少数の人たちである。それより心配なのはアメリカスクールである。国民のほとんどがアメリカスクールとなってはならない。

9 民主主義の欠点
短期には独裁でも良い。しかし中期では、豊臣秀吉や毛沢東のように最悪の結果となる。
中期には民主主義が良い。しかし長期では最悪の結果となる。野火止用水という農業用水がある。長らくどぶ川だったが、20年ほど前に、清流が復活した。しかしその直後に埼玉県内で野火止用水の暗渠化が行われた。平行する道路の車に歩行者が危ないというのである。道路を一方通行にするのが上策、反対側の家を買収し道路を広げるのが中策。しかし市役所はせっかく復活した用水を暗渠化するという下策を取り、ニュースにもなった。買って5年の車や建てて10年の家と、江戸時代に松平伊豆守が作った用水と、どちらが大切なのだろうか。長期の目で見ると、民主主義とはとんでもない愚民政治である。 政治責任を持たない人たちによる政治は、自分達の世代で資源を食いつくし、長年かけて先人が築いた文化を退廃させ、最後は人類を滅亡に追いやる。
大きい船は揺れが少ないのと同様、民主主義の利点は蛇行が少ない点にある。利点を生かして時間を稼ぎ、その間に人類は、民主主義に続く道を探してほしいものである。

10 アジアの共産党に
マルクスやレーニンは異国の人たちである。それも当時の植民地競争という残酷な世の中に生まれたため、共産主義自体には残酷さが入り込んでいる。中国を始め、ベトナム、日本などの共産党は、アジアの共産党になってほしいと思う。日本共産党を例にあげれば、後醍醐天皇(足利軍事政権に反対した)や大塩平八郎(儒学者)を尊重したらどうか。まったくの冗談だが、不破さんは、初代不破哲左衛門と改名する方法もある。左という字も入っている。良い名前である。歌舞伎ファンが間違えて共産党に投票するかも知れない。

11 台湾とベトナム
反中派の日本人には、2つのタイプがある。共産主義が嫌いな人と、中国そのものが嫌いな人である。共産主義が嫌いな人は、台湾と付き合えば良い。共産主義は性に合わないので申し訳ないが台湾と交流させてもらいます、という態度であれば、何の問題もない。これまでは、北京政府を怒らせてやろう、嫌がらせをしよう、という姿勢が露骨だったため、問題になった。中国そのものが嫌いな人たちは、ベトナムに注目したらどうか。日本でさえ勝てなかったアメリカに勝ち、カンボジアのポルポト政権を倒し、中国の人民解放軍にも負けなかった。思えば昔の日本は、日清戦争といい日露戦争といい、強いものいじめの国であった。弱いものいじめに転じたのは第一次世界大戦からである。日本とベトナムは馬が合うような気がする。

12 日中の違い
日本と中国は、言語も文化も全く異なる。これを同一と考えるところから、「これほど教えてやっているのに、なぜ日本人は判らぬのだ」「これほど誠意を持って説明しているので、なぜ中国人は判らぬのだ」と双方に反発が起こる。日中は、まったく別の国だということをまず考える必要がある。そうすれば共通点が多いことにも気付くであろう。 日中以外にも言えることだが、外国人の不快な言動は、いつまでも心に残る。親切な中国人や人のいい日本人も多いが、そうではない人ばかりが記憶に残る。
中国人は商人、日本人は職人、とよくいわれる。中国に進出した日本企業は、中国商人にカモにされないように頑張ってほしいものである。

13 アジアの言語を
外国語を習うことは、その国の文化を習うことである。日本人は、せっかく漢字を勉強するのだから、中国語を学ぶ人がもっと多くないともったいない。 他のアジアの言語を学ぶ人も計画的に育成すべきである。アジアの国々との商談に英語の使用を禁止する法律を作っても良いほどである。日本語を学ぶアジアの人々に就職先を提供することにもなる。アジア各国での親日派の育成も重要な課題である。

14 三国寄れば文殊の知恵
日本がアジアの国々と仲良くすることは、アメリカに対抗するためであってはならない。中国は、中国ではなく大国である。アメリカは更に超大国である。どちらも二国間では相手に飲み込まれてしまう。三国で付き合うのが良い。日本と韓国で中国と付き合い、日韓とASEANで中国と付き合う。そして、日本と中国でアメリカと付き合い、日本とEUでアメリカと付き合う。三国寄れば文殊の知恵である。

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