11、経済と英語


作成日 平成13年1月31日

暗いニュースが多いが、日本は世界第2の経済大国である。経済で心配する事は何もない。しかし、借金を抱える会社や住宅ローンに苦しむ人など、経済回復への期待は大きい。今回は、経済から見た英語問題を取り上げてみたい。

1 インドヨーロッパ語族
ドイツ人に、フランス語とはどういう言語か質問すると「文法は同じだが単語が異なる。」と答えるだろう。ドイツ語はゲルマン系、フランス語はラテン系であるが、どちらもインドヨーロッパ語族に属している為である。
ひるがえって日本語を見ると、韓国語と文法が似ている。どちらもアルタイ語族に属すると見られるが、学説ではまだ確定していない。南方の言語、チベット語、ドラビダ語と共通という説もある。

2 帰化した理学博士の話
1年ほど前に、あるプロジェクトで東大出身の理学博士(あるいは工学博士だったか)と一緒に仕事をした。博士は中国出身で日本留学の後に帰化した人で日常会話なら何の問題もないが、込み入った仕事の話になると判断力が急に鈍った。
英語、英語と騒ぐ人に言いたいが、アメリカの一流大学で博士号を取りアメリカに帰化しても言語の壁は乗り越えられない。 その一方で、韓国人は、日本人と変わらない日本語を話す人が多い。日本語の同時通訳だったら簡単だと豪語する人も多い。同じ語族に属する所以であろう。

3 3つの要素から見た経済効率
日本語がインドヨーロッパ語族に属していないことは日本人の英語が苦手な第1の要素である。
日本語は母音中心の言語であり、子音のみの音は聞き取りにくいことが第2の要素である。
日本語は母音や子音の種類が少ない事が第3の要素である。
別の語族の言葉を使う不利益を仮に30%としよう。母音中心言語がそうではない言語を使う不利益も30%としよう。母音子音の数が多くない言語の不利益も30%としよう。フランス語は母音が優勢だが日本語ほどではなく不利益を15%、母音子音も英語ほど多くはないが日本語より多いので15%、しかしノルマンジーによるイギリス占領時代にフランス語から英語に入った単語が多い分で15%相殺し、全体で115%となる。一方、日本語は3項目すべてに該当するので30%の3乗で220%になる。アメリカ人より15%生産性を上げることは可能である。しかし120%は無理である。2倍働いても追いつかない。

4 フランスと友好を
江戸時代の参勤交代は不公平な制度であった。関東近辺の藩には楽だったが、九州の諸藩にとっては領民の血税を浪費する大変な制度だった。日本語は英語から最も離れた地にある。日本は、世界の英語共通語化を防ぐように最も努力すべき国である。外交的には親米、言語的には世界非英語政策が重要である。日本人のなかに英語の世界制覇に加担する者がいるが、薩摩藩が「参勤交代の回数をもっと多くしろ」と言っているようなものなので、やめてもらいたい。
日本はまず、英語に対抗する世界のもう一方の旗頭のフランスと組むべきである。フランスからは自国文化を大切にする精神も学ぶことができよう。日本人が習得しやすい韓国語、中国語などと連携することも重要である。

5 国を売ってはならない
国際化時代を迎え英語が使える人が多数必要である。しかし通訳が足りないという話は聞かない。英語が専門ではないが業務で使う人も5年前に比べ格段に増えている。
英語、英語と騒ぎたてる人たちは何か別の意図があるのではないか、と勘ぐりたくなる。日本を心配する振りをして国を売ってしまうことは防がなくてはならない。

6 縁の下の力持ち
英語に関して今の日本で一番心配な事は、英語が堪能な人は縁の下の力持ちになるべきなのに、自己主張したがる人が出てきたことである。過去にはなかった現象である。英語は努力の割に報われないものである。それでも英語を勉強したいという人たちに今後も地道にがんばってほしいと思う。

7 日本語が堪能な外国人の優遇度から事実が判る
日本語が堪能な外国人は海外に多数いる。しかしこれらの人たちは、ほとんど有効利用されていない。国際化時代を迎えても、これらの人たちを活用すれば、日本は心配する必要は何もない。これらの人たちが活用されていない事実から見て、今の日本は英語で騒ぐ必要がまったくないのである。海外に資産がたくさんあるのに、金がないと心配するようなものである。

8 英語に疑問を感じる人のほうが正しい
英語を勉強するうちに、その非合理性と、記憶だけが物を言い、俗語やくだらない口語まで覚えなければならない事に疑問を感じる人も多いはずである。英語がよほど好きな人と、仕事で使う人以外が、途中で挫折するのは当然である。
逆の視点から見ると、英語ほど楽しい勉強はない。考えずに暗記の繰り返しを毎日すれば良いのである。無理やり勉強することにより、あるいは英語に熱中しすぎることにより、他の能力を犠牲にする弊害は大きい。

9 学校は効率的に教えているか
母国語で授業を行う国は、植民地時代の言葉で授業を続ける国より効率が良いのは当然である。しかし果たして日本は効率が良いだろうか。教え方のうまい教師と下手な教師では効率に10倍の差がある。もっと真剣に教えるべきである。特に大学教授は失格の人が多い。
小学校で英語を教えろという主張があるが、その場合はその時間数だけ中学校の英語の時間を削ってもらいたい。効率良く教えるのが教師の役目である。予算さえ多ければ誰にでも政治家が勤まるし、授業時間さえ多ければ誰にでも教師が勤まる。効率が大切である。

10 「グローバル」「グローバル」と社長がはしゃぐ会社は先行きが危ない
新製品の開発は極秘に行うものである。世界進出も黙ってやるものである。社長が「グローバル」とか「グローバルエクサレントカンパニー」と言い出したら、その会社は危ない。TOEICで何点以上取らないと昇進させないという会社も危ない。TOEICは、ばらつきがあり何回も受験すると良い得点が得られる。TOEICだけを目標に勉強をしても良い点が取れる。最初750点で数回目には900点という人もいる。そのような一時的な尺度でしか人を判断できない会社は、人事部を総入れ替えしたほうが良い。

11 人を有効利用できてこそ人の上に立つ人である
私が英語に厳しい目を向ける理由は、3年ほど前の新聞記事で「大企業の社長は英語ができる人がなるべきだ」「英語ができる人と通訳を通してしか話せない人の差ははっきりしている」という数ヶ月を前後した2つの記事を読んだからであった。どこの新聞社だったか、2つの記事が同一の新聞社だったかは覚えていないが、見過ごすことができない記事である。社長はパソコンを使える必要はない。頭は悪いがパソコンのできる社員(例えば私?)にやらせれば良いのである。社長は英語もできる必要はない。頭は悪いが英語のできる社員(これも私?)にやらせれば良いのである。(そうすると、私は二重に頭が悪いことになるが。)


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