10、日本人に欠けているもの
船が倒れないのは、右に傾けば左への復元力が働くし、左に傾けば右への復元力が働くからである。日本人に欠けているのは、この復元力である。バランス感覚といってもよい。戦後長らく傾き続けた船体も、最近になり復元力が働いて文化や道徳の重要性を考える人が増えてきた。しかしそれに逆行する動きもある。英語公用語論はその1つである。
1 頼朝びいき
判官びいきという言葉がある。日本人は判官びいきだ、ともよく言われる。しかしそれは芝居での話である。頼朝と義経が戦を始めたら、100人中99人は頼朝に付くだろう。日本人は頼朝びいきである。1つの政党が政権を取ると、いつまでも政権交代しない理由もここにある。決して自民党だから長期政権を保てたのではない。例えば東京、京都、神奈川などでは社共推薦知事の時代が長く、自民党推薦の候補はいつも負けていた。保守だろうと革新だろうと有権者の野党側への復元力が働かないのである。ここに日本人の欠点がある。
2 第1の子分
義経の第1の子分は弁慶である。アメリカの第1の子分は世界中を探しても日本以外には考えられない。ただでさえ「アメリカの子分になったおかげで金満国になった」と世界中から腹の底では冷笑されているのに、8ヶ月前には英語第2公用語論が飛び出し、再度世界中から物笑いの種にされた。バランス感覚に欠けていなければできない芸当である。私は本来は親米派である。もし日本が反米に振れ過ぎたら、率先してアメリカを誉めるつもりでいる。今の日本はアメリカ一辺倒が過ぎるのに更に悪化させようとする人たちがいる。低血圧なのに血圧を下げる薬を飲むようなものである。
3 こういう外国人は日本から出ていってもらいたい
外国人が日本に住む事はいいことである。日本が気に入った人たちには長く住んでほしいし、日本人にもいい刺激になる。しかし、6ヶ月以内の短期滞在を除き、外国人は日本語(本土方言もしくは琉球方言)またはアイヌ語を話すべきである。琉球方言やアイヌ語を突然持ち出したので「思いつきで言っているんだろう」と思う人もいよう。9年前に奄美諸島を旅行したとき、沖永良部島では語彙が本土と完全に異なり、内容はもちろん日本語を話しているということすら判らず嬉しかったが、奄美大島ではかなり本土の単語が入りこんでいて暗い気持ちになった。奄美方言は、沖縄、宮古、八重山の各方言とともに、琉球方言を構成している。5年程前にはアイヌ語を自然に憶えた最後の世代という社会党の国会議員の講演を聴きにいったこともある。言語を重視することは、伝統文化を重視することである。
4 日米安保条約について
私の関心事は専ら日本文化とアジア文化である。前回のWebページで安保条約に触れたが、あれは英語第2公用語への対抗処置で本当のねらいは日本文化養護にある。
船橋洋一氏が最初に英語公用語論を主張したとき、ほとんど反応がなく本人までが、英語関係者にも無視された、などとぼやいていたのに、それを首相私的懇談会に持ち込み、更に最近また懲りずに主張している。本当にしつこいと思う。こういう発想を日本から絶つのが目的である。
5 カネの切れ目が「円」の切れ目
日本への留学生を増やすために日本の大学で授業を英語で行えという珍奇な主張がある。日本語で勉強したいから日本に来るのである。英語で勉強したい人はアメリカかイギリスに行くだろう。本国に帰ってからもアメリカ留学組に2流扱いされるだけである。先進国で唯一、欧米文化に毒されていないということを売り物にしたらどうか。実際は毒され過ぎているので変革が必要だが。カネだけが取り柄の国は卒業してもらいたい。カネの切れ目が円の切れ目になりかねない。
6 世界のバランス
日本では、流入を続けるアメリカ文化との衝突で若者の心も社会全体もパニック状態にある。それでももっとカネ持ちになったほうがいいや、という人もいよう。日本だけのことを考えればそれでも良い。しかし世界のことを思うと、本当にそれでいいのだろうか。人類が滅亡の寸前まで行こうとしていて、それを防ぐには世界で一番資源を浪費するアメリカがすべてを決定するのではなく、国々のバランスが必要なのではないか、と声を大にしていいたい。
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