33、平衡感覚

平成十六年八月廿八日






日本人に欠けるのはバランス感覚である、と書いてからもう四年が経過した。先日西部氏の著作を読んだら、保守とは平衡感覚のことだと書いてあった。さすが西部氏である。私も西部氏に合わせ今後は平衡感覚と称することにした。
平衡感覚は中道主義とも同じである。因みに私が保守主義を主張できるのは、中道主義を掲げる公明党が自民党と連立してくれているからである。もし自民党単独政権だったら、平衡感覚から私はもっと民主党寄りの主張をすることになる。公明党、旧民社党、旧羽田グループの中道三会派には日本のために頑張ってほしいものである。


1 平衡感覚と保守思想
欧米文明は、アジア各国の先祖伝来の歴史、伝統を破壊し続けている。欧米文明を懐疑することは、非欧米地域に於ける保守思想の根本である。 一方で、距離を置き過ぎることは世界標準から遅れることになり、欧米に対抗できなくなる。欧米文明を懐疑し、しかし欧米文明を理解すること、即ち平衡感覚が重要である。 明治の人はいいことを言った。和魂洋才である。

2 組織の平衡感覚
新しいことを新しいという理由だけで取り入れるのは、組織の歴史、伝統を破壊することになる。
しかし何もしないでいると組織はいずれ崩壊する。
江戸幕府がいい例である。黒船が現れてから適切な対応をしなかったため15年で崩壊し、その後の明治政府は欧米の猿真似を繰り返したため、77年で崩壊した。
明治神宮外苑の聖徳記念絵画館に行ってみよう。入って右側は明治天皇が和服姿で描かれている。一方、左側は軍服姿で描かれている。日本が目指すべきは、欧米文明を充分理解する能力を持ち、しかし軍服や洋服ではなく和服姿の日本人であった。

3 日本は韓国に抜かれた
昨年都内の私鉄に乗っていたときの話だが、隣の座席に韓国語の新聞を読んでいる青年が座っていた。次の駅で老人が乗ってきたが毎度のことで誰も席を譲らないようだったら私が譲るかと考えていたところ、隣の青年がすっと立ち上がって席を譲った。最近はシルバーシートでさえ席を譲らない若者が多い。
日本は韓国に抜かれた。日本は韓国を手本としてアジアの心を取り戻すよう務めたほうがいい。
日本をアジア第一の国だと考えるのが右翼、民族主義は有害だとばかり日本の悪口を言いながら単にアメリカ化を進めるのが左翼である。日本は平衡主義にたち、アジアの一員として経済だけではなく学術文化においても非欧米の共存の道を歩むべきである。

4 アメリカが最も占領に失敗した国
日本人は経済にしか関心が無くなってしまった。 戦前の日本は貧乏だったため経済を優先させるべきであった。現在のように世界でも有数の金持国がなぜ経済だけに関心を払うのだろうか。
アメリカの占領政策は意図して日本人の価値観を喪失させるものであったが、エコノミックアニマルという珍妙な動物を発生させてしまった。 アメリカのイラク占領は失敗に終わったが過去にもっと失敗した占領例がある。それが日本である。

5 親米派から見た日米
ここ15年ほどのアメリカの政策は、日本文化を破壊しようとするものであった。これは先住民虐殺に匹敵する許し難いものであるが、アメリカの言い分は理解できる。
日本は貿易黒字を放置し、圧力があると小手先の政策を繰り返してきた。そのうえカネにものを言わせてアメリカの象徴というべき建物やら何やらを買収してきたのである。日本が行った政策のうち記憶に残っているのは、アメリカの口車に乗ってバブルを発生させたことと、宮沢元首相が貿易赤字に同情して顰蹙を買ったことぐらいである。

6 有り余る英語堪能者
15年前には、日本人の英語がひどいことはアメリカ人に有名であった。その後急速に向上し今では英語堪能者が日本中有り余っている。私の周囲でさえ、カナダのソフト会社で働いていた、カナダに留学した、アメリカに留学した、など多数いる。或る英語圏に留学した若い技術者は社員10人くらいのソフト会社に務めているがよくあんなところに務めているなとこちらが心配になるくらいである。先日行った日本料理屋の女中さんは高校のときアメリカに留学し卒業後20年くらいアメリカで働いていて帰国したとのことであった。
今や日本は英語堪能者が有り余っている。かつてのように高給で外資に雇われることもなくなった。逆に外資に以前務めていたという人が街角に溢れている。
なぜ今だに「小学生に英語を」と主張する時代遅れの人がいるのか理解できない。 平衡感覚に乏しいか、自分が苦手なのを教育のせいにしたいのか、売国奴なのか、英語教室から政治献金を貰っているのか・・・。

7 世代を超えて
平衡感覚とは世代を超えて考えることでもある。両親、祖父母、曾祖父母の時代を考え、子、孫の世代のことを考えることである。
日本が為すべき事は独立である。20年か30年かけ日米安保条約を破棄または修正すべきである。欧米関係のように修正することでもいい。私が防衛問題を論じるときは、長期属国による文化破壊を防ぐのが目的である。

8 資本の自由化
船が右に傾けば左への復元力が働き、左に傾けば右への復元力が働く。経済も同じで或る会社が儲かれば賃金が高くなり復元力で利益は減速する。ところが資本の自由化は海外に進出することにより益々利益を上げるようになる。会社でも国でも同様である。 資本の自由化は復元力を破壊し、世界中の国柄を破壊する。資本は規制すべきである。

9 国柄を守るには
私はビルトッテン氏と主張の99%は同一である。異なる1%は、私は円安が必要と考えトッテン氏は円高が必要と考えることである。この相違は私が文化の観点から見るのに対しトッテン氏は経済学の立場から見るためである。
円高は日本人の勤労意欲を削ぎ人減らしが進み自然資源を浪費し安価に行く海外旅行で外国かぶれの軽薄人間を育成している。
円安にしなくても方法は或る。資源税と海外旅行税を作ることである。円高が雇用に与える影響は、自然資源に相対して人件費が高くなることと、海外労働力に相対して国内人件費が高くなることであるが、資源税を新設することにより、前者は相殺される。資本を規制することにより後者も統制できる。

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