九百八十七 『西村京太郎トラベルミステリー、寝台特急あけぼの』
平成二十九丁酉年
五月二十七日(土)
正午からテレビ朝日で『西村京太郎トラベルミステリー59・終着駅殺人事件 愛と死の寝台特急あけぼの 暗闇に消えた女』を見た。原作は昭和五十五年(1980)。このときは寝台特急「ゆうづる」だった。テレビの第一作は『西村京太郎トラベルミステリー1・終着駅殺人事件 上野~青森ミステリー特急「ゆうづる」』で昭和五十六年(1981)。第二作は『十津川警部シリーズ23・終着駅殺人事件 寝台特急「はくつる」に仕掛けられた卑劣なワナ!』で、TBSから平成十三年(2001)。第三作が今回で、平成二十五年(2013)に、第一作と同じ原作を新たに制作したものだ。
列車名と途中の機関車付け替へ駅と配役が異なるところに、ここ三十五年間の国内の変化が判る。配役は第一作が三橋達也、第三作は高橋英樹。第二作は俳優の名を知らないし作品を見たこともないので書かなかっただけで、その俳優が嫌ひな訳ではない。亀井刑事の役は第一作が 愛川欽也、第二作が 伊東四朗、第三作は俳優の名を知らなかった。今回作品を見たので載せようと思ったが、Wikipediaに
・下ネタが大好きで、(中略)かなり露骨なことを男女問わず共演者に言ったり、ナンパの際にもダンディな口調で暗にアタックする。また、自らも体を張って奇抜な格好をしたり、下着を脱ぐなどその年齢と芸歴をものともしない大胆な行動も得意とする。
・過去にたまたまナンパした相手が娘の同級生だったことがある
とあるのでやめた。

五月二十八日(日)
原作とは三十三年の相違がある。そのため随所に原作と違ひがある。まづ「ゆうづる」が廃止になり、「はくつる」も廃止されたため「あけぼの」になった。今は「あけぼの」も廃止されたと思ふ。私は今の鉄道は好きではないから判らない。
上野駅を発車するとき機関車に長岡の札が入ってゐるので、なぜ東北本線なのに長岡なのかと思ったが、なるほど奥羽本線経由の「あけぼの」が上越線、羽越本線経由の「出羽」と統合された後だった。
まづ上野駅で殺人事件が起きた。次に利根川で水死体が発見され、被害者は高崎で寝台特急を降りた。第一作では水戸駅で9分間停車しEF80からED75に機関車を交換する光景が映るさうだ。ここに時代の違ひを見ることができる。
EF80は交直両用で、電圧変化は抵抗器を使ふから、熱として逃げる。ED75は交流専用で変圧器のタップで制御するから電力の無駄が生じない。もう一つ、直流機はモーターを直列に繋ぐから、車輪の空転防止に動輪が六つある。交流専用機は並列だから空転しても再粘着して動輪は四つで済む。プラザ合意以前の、電力費や車両費が人件費より高い時代の話だった。
今回は高崎の事件のあと、犯人が乗車可能な駅は村上と長岡になる。犯人内部説を可能にしておいて、最後で逆転させるのは刑事小説の定石だが、今回はこの一回だけだった。長岡では機関車の交換は映らなかった。Wikipediaで調べると上野から長岡までEF64、長岡から青森までEF81とある。EF81は交直両用だから交流専用機の特長が生きない。

五月二十八日(日)その二
六人のうち二人が派遣社員と臨時建設作業員なのは、時代を表はす。これもプラザ合意が原因だ。原作では六人は新聞部だつたが、今回は野球部員とマネージャーになった。新聞はどの社も偏向がひどく、地盤沈下か。或いはテレビ朝日なのでこれ以上、新聞の印象が悪くなるのを避けたか。
六人が花火をやり、その火の不始末が原因で十年後に事件が起きた。火事の原因が判ったのだから早い時点で警察に相談すべきだった。六つの殺人事件を起こす今回の話は少し無理がある。十津川警部の話はたくさんあるので、一作一作では問題点が出て来るのかとも一瞬思ったが面白い作品であることに間違ひない。(完)

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