九百六 アメリカ人がトランプ支持を云ひにくかったのと同じ心理状態に、二冊の本で私もなった

平成二十八年丙申
十一月十九日(土)
会社の移転が二か月後に迫った。そのため一昨日から、廃却予定の書籍の持ち帰りが始まった。コンピュータ関係の書籍を中心に、それ以外もある。私は小宮清さんといふデザイナーだと思はれる方の著書「満州メモリー・マップ」と、中里介山の「親鸞」を取り、自分の席に戻った。その際に、何となく署名をあまり周囲に見えないやうに持った。
「満州メモリー・マップ」は何となく帝国主義みたいだし、「親鸞」は宗教に偏ると見做されさうだ。満州メモリアルマップは、四歳で満州に移住し十歳で引き揚げた。満州で見た物を記録する貴重な資料だし、「あとがき」では日本の帝国主義に批判的な目を向ける。それではなぜ小宮清さんは良くて、社会破壊拝西洋新自由主義反日パンフレットが駄目かと云へば、パンフレットの場合は社会を破壊することと西洋を美化することを編集方針としてゐる。社会を良くしようとする小宮清さんとは異なる。
小宮さんをデザイナーと推定した根拠は、東京芸大を卒業後に本田技研に入社し、四十歳でフリーになった。

十一月二十日(日)
「満州メモリー・マップ」の本を持ち帰ったのは事実を事実として知ることが大切だからだ。親鸞の本も、親鸞は師匠の法然がしなかった僧侶妻帯や、妻の死後に廟所を巡る一族の争ひが起きたり、戦国時代には大名並みの権力を持ったりと、批判の対象になり易いが本当はどうだったのか。小説家の書いた本だから事実とはかなり異なるだらうが、中里介山の解釈を知りたいものだ。

そもそも私のホームページは、宗教を取り上げたり、左翼を取り上げたり、右翼を取り上げたり、ホームページ自身が活用語は正仮名遣ひ、メニューは正字体と、およそ世間からタブーと思はれることにも取り組んで来た。
世間からタブーとされることが日本にもアメリカにもある。その中には本当はタブーではないものも多い。

十一月二十二日(火)
今回この特集を組んだ理由は或る評論家が、アメリカには輿論調査でトランプ支持を言ひにくい雰囲気は無いと主張したことだ。その根拠として、マスコミの中にはトランプ支持のものもあったと云ふ。これは日本でも事情は同じだ。雑誌や新聞(日刊、週刊、月2回など)の中には、大手マスコミの偏向から外れるものも存在する。だからと云って、これらの主張を輿論調査で発言しない人が多い。
特に電話や対面による輿論調査はマスコミによる世論工作の可能性が高い。

十一月二十七日(日)
大手マスコミの偏向とは、民主主義と自由を叫ぶ事だ。これらは米ソ冷戦時代の遺物だ。今でも中国や北朝鮮を批判するときには有効だが、国内向けに叫ぶことは害のほうが大きい。まづ民主主義とは人数の多いほうが勝ちと云ふことでつまりは勢力のあるほうが勝つ。こんなものは自然界の原理であって主義では無い。自由は相対的なものだ。自由が行き過ぎれば統制が必要だし、自由が不足すれば風通しを良くすることが必要だ。
ところが大手偏向マスコミは国内に向けてさかんに書く。これは既得権を維持したいのと、更に西洋化を進めたいのだが、そのまま云ふ訳に行かないから民主主義と自由で誤魔化しただけだ。ところが国内ではこれがタブーになってしまふ。異なることを言ってはいけない、民主主義と自由の原理主義国或いは過激派とも云ふべきアメリカの真似をしなくてはいけないと多くの国民が思ひ込んでしまった。勿論日本が欧米と交流を深めるために、民主主義や自由に言及することは構はない。外交言辞だからだ。

十一月二十七日(日)その二
会社になぜコンピュータ以外の書籍があったかについて説明すると、福利厚生の一環として教養のために書籍を購入したやうだ。私が入社したとき横浜事業所にも図書コーナーがあり、コンピュータの書籍と並んでこれらの本があった。会社によっては休憩室にテレビがあったり、新聞があったりする。図書コーナーについては、インターネットの普及で専門書籍は少数で済むやうになった。事務室は狭いほうが賃料が安いと云ふ事情もあり、本棚二つ分になってしまった。コンピュータの価格が大幅に安くなりソフトウェアの価格も安くなった。かつては事業税は利益の半分だった。それだけ払ふなら減価償却ではなく経費扱ひの図書を福利厚生のため購入したほうがよいと云ふ事情もあった。(完)


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