八百八十六(その二) 日本産業パートナーズ、VAIO、富士通

平成二十八年丙申
十月十六日(日) 三社合併が不調に終った理由
富士通パソコン事業のレノボ売却発表の前に、VAIO、東芝、富士通のパソコン事業統合交渉があった。その破綻した理由が報道された。富士通は赤字のPC事業を日本産業パートナーズ株式会社(JIP)に押し付けようとした。別の報道では価格で折り合はなかった。更に別の報道では人減らし条件で合はなかった。

人減らし条件で合はないなら、富士通は人減らしをしない良い会社だ。今回島根富士通の雇用を守ったのは偉い。しかし過去に長野工場、須坂工場で大規模な人減らしを行った。だからまったく喜べない。

十月十六日(日)その二 日本産業パートナーズ
VAIOはソニーから分割されたPC部門に日本産業パートナーズが投資し設立された。同社のホームページを見ると
本邦企業の中には、潜在的に発展性の高い事業・技術・人材等の資産を持ちながら、さまざまな理由から既存の資源・組織体制下ではこの可能性を十分に活用できない事例が見られます。(中略)日本産業パートナーズでは、日本の企業風土を尊重しつつ、企業社会での幅広いネットワークを活用し、このような既存事業・産業を変革する意志をもった企業家・経営陣と協力して、時代の要請に合致した新たな事業・産業を構築することにより、本来その事業・産業が有していた潜在的な力を十分に引き出すよう支援することを事業目的としております。
これは立派だ。このやうな会社にはぜひ活躍してほしい。その一方で
主として大企業における事業再編に伴う事業カーブアウト(分社化)や独立中堅企業の事業再構築において、資本のご提供や経営支援を行ってまいりました。
最初、特に前半が目に入り、大企業から分社化させて人減らしさせて利益を上げるのかな、と少し引いた気持ちになった。その一方で、VAIOを二年目で黒字化させたのだから、やはりすごいと云ふ気持ちに戻りつつある。他に株式会社すかいらーく、ビッグローブ株式会社など幾つも再生中若しくは再生完了させた。

事業再生ファンドでは政府系の株式会社地域経済活性化支援機構が有名だ。これは株式会社地域経済活性化支援機構法により設立された。再生中または再生完了企業で有名なところでは、熊本バス株式会社、大井川鐡道株式会社、勝浦漁業協同組合がある。

十月十八日(火) 須坂工場、長野工場
VAIOの本社は信州南安曇郡豊科(現安曇野市)なので、須坂工場、長野工場と合はせて長野県内を話題にしたみたいだが、これは偶然だ。富士通の須坂工場で昔、リストラがあったことを思ひ出した。「富士通 須坂工場」で検索すると、共産党の
無法リストラ
富士通は社会的責任果たせ
長野の2工場
日本共産党のビラを回し読み
といふ十四年前の記事が出てくる。本来、プラザ合意の後の円高で、富士通は技能職が大量に余った。そのときは訓練を施してCEへの職種転換を行った。富士通は利益を上げてゐたからそれが可能だった。その後も何とか製造部門を持ち続けたが、業績が悪くなるとリストラの話が出てくる。
今回、島根富士通の雇用を守れたのは業績が悪くないためと、プラザ合意の後に創業した高い生産性の工場が理由だらう。私は富士通労組の時代に、終身雇用は労働者が人質に取られたやうなものだと発言した。雇用が流動化した社会なら人減らししても許される。雇用が流動化しない社会では人減らしは許されない。しかし業績が悪くなれば人減らしの話が出てくるから、つまり労働者は人質と同じだ。今同じことを主張すれば、中小企業に勤めてゐるからだらうと云はれさうだが、大企業労組でも主張してゐた。しかし誰も私の主張は理解できなかった。そのつけが須坂、長野の両工場で現れた。島根では回避できた。(完)


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