八百七十一(その二) 戦没者冒涜と偽善言辞の反日パンフレット「朝日新聞批判その三十七(マスコミの横暴を許すな66)」

平成二十八年丙申
九月三日(土) 三つの文章
八月十五日の朝パンフレットの一ページ目先頭には、偏向の無い良質な文章が三つ並んだ。沖縄戦を伝へてきた「青春を語る会」と、「きょう終戦71年」と、旧南満州鉄道の元従業員で作る満鉄会解散の文章だ。このうち「青春を語る会」が先頭で、三つの文章全体の総合見出しとして「老いる語り部 継承に苦悩」と書かれる。私も中学生や高校生のころ、戦争体験を何回か聞く機会があり、そのうちの一つは早乙女勝元氏で、同氏を含めていづれも事実を伝へる良質なものであった。
ところがここ十五年ほど戦争体験が極めて偏向するやうになり、それまでの語り部が偏向なく話しても、米英仏蘭が正しくて日本が間違ってゐたと連想させるやうな見出しを付けたり、そのやうな部分だけを取り出すやうになった。早乙女勝元氏の場合は話の内容自体が激変した。
この日の同じページには政府広報として「8月15日は、戦没者を追悼し平和を祈念する日です」と書かれる。これは政府が掲載料をパンフレット社に払って載せたものだから、もちろん偏向はない。同じページの下のほうに「天声人語」がある。これがひどい内容だ。私が聞いた話のなかに元航空兵がゐて「あの当時の航空兵に悪い人は一人もゐないよ」と語ってゐた。ところが天声人語だと特攻機の整備兵だったといふ人が
突然訪ねてきた彼が語ったのは、飛び立つ日の特攻隊員の姿だった。失神する、失禁する、泣きわめく。きれいなことを言って飛んでいった人もいたが、茫然自失だった。
これで絶対死ぬのだからそれは普通だ。ベトナム戦争のころは日本人もそのことは判った。戦争に行った人はもちろん理解するし、後の世代もベトナムで戦争が行はれ東京の北区王子には米軍の野戦病院もあったから実感した。時代が変はったから今では異常に聞こえる。そして偏向パンフレットがそのことを無視して掲載した。
この文章には更に悪質なところがある。「きれいなことを言って」の部分だ。失神、失禁、泣きわめいたとしても当然だ。そのやうな状況で平然と発言できる人がゐればこれも立派だ。昔、吉田松陰が処刑されるとき冷静で、普通は取り乱すので幕府の役人が感嘆した話を読んだことがある。それなのに社会破壊反日パンフレットは「きれいなこと」と歪曲する。今では「きれいなこと」と云ふと、口先だけで護憲だの平和だのを唱へる偽善者を誰もが連想する。そんな表現を戦死者に使ふとは驚く。

九月四日(日) ホロコーストは本質を批判しないといけない
この日の2ページ目には「ホロコーストをテーマにした訪問授業が千回に達した」と題する文章が載った。この文章は、当時の欧州に優性思想、特にアーリア人優秀思想が流行してゐたことと、昔から欧州には反ユダヤ人の感情があったこと、戦後はユダヤ人をパレスチナに誘導しそのため今でもアラブでは紛争が絶えないこと、アメリカ在住ユダヤ人のロビー活動でアメリカは欧州以上にイスラエル寄りの外交をすることをきちんと書かないと大変な偽善に陥る。
心配しながら文章を読むと、やはり私の心配は当たった。まづ
英国留学から帰国後、誘われてアンネ・フランクを題材とする教育活動に参加し、ホロコーストの問題にのめり込んだ。
これで心配が当たる確率は高くなる。当時の欧州の思想や戦後の欧州の政策を批判することなく、英国留学に言及するからだ。文章の最後は次で終はる。
いまの日本がホロコーストから学べることはたくさんあると思う。「差別や偏見から暴力が生まれる。どんな社会を作っていくかの選択を迫られるとき、私たちは歴史から学ぶしかない。そのことをしつこく伝え続けたい」
これで私の心配は現実になった。日本はホロコーストとは無縁だ。日独伊三国同盟を締結したときはソ連も仲間に入れて米英と対抗しようといふ意図があった。ところが翌年ドイツは独ソ条約を破棄してソ連に攻め込んだ。日本はヒトラーに騙されたと云ってもよい。ただしドイツの敗戦を予想できなかったことと、同時進行中だった日華事変は日露戦争以降傲慢になった日本人が中国人を低く見て解決できなかった、といふ反省点がある。反日パンフレットはこれらにふれず「差別や偏見から暴力が生まれる」と無関係の偽善言辞しか掲載しなかった。

九月六日(水) 戦没者追悼式
翌日の社会破壊拝米新自由主義戦没者冒涜反日パンフレットは戦没者追悼式の文章を1ページの先頭に載せた。ところが加害者言及なし 安倍カラー定着といふ見出しをつけた。戦没者の追悼に加害者言及は関係ない。例へば、反日パンフレット社の誰かが亡くなり告別式のときに、社長弔電に従軍慰安婦強制徴用捏造発言への謝罪が書いてあるか。
次にいつまでも過去のことを云ふべきではない。アメリカが広島と長崎の原爆やベトナム戦争に言及する訳がない。イギリスが過去の植民地支配に言及する訳がない。日本だけ過去のことをいつまでも話すと逆に友好を阻害する。(完)


(その一)、「朝日新聞批判、その三十六(マスコミの横暴を許すな65)」(その三)、「朝日新聞批判、その三十八(マスコミの横暴を許すな67)」

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