八百六十九 リオデジャネイロ・オリンピック
平成二十八年丙申
八月七日(日)
開会式
昨日はテレビで開会式を観た。正しくは一部を観た。まづ余興が始まり暫く観たがあまり面白くないのでスヰッチを切った。三十分後に再びスヰッチを入れると余興最後の地球環境問題が始まるところだった。これは興味深く観た。オリンピックが終了の後は森林にするといふ話もあった。
各国の入場が始まった。ラオスは女性が肩に布を巻いてゐた。在日ミャンマー人向けの止観(瞑想)会でも女性で肩に布を巻く人が何人もゐた(写真へ)。あのときは比丘尼が肩に巻く袈裟と同じ色なので袈裟だと思ったが、ラオスでは女性の正装なのかも知れない。ちなみにミャンマーの入場行進は民族服を着てゐたが、肩に布は巻かなかった。ミャンマーでは袈裟なのだらう。タイ、カンボジア、スリランカも上座部仏教国だが布は巻かなかった。
日本は各選手が日章旗とブラジルの国旗を持った。各選手がブラジルの国旗も持つのは日本だけで、良いアイディアだが次回が日本開催だからかな、とも思った。
NHKの実況中継が終了の後に、民放でも録画で放送した。こちらで入場のところを再度観ると、中国と韓国も各選手が自国とブラジルの両方の国旗を持ってゐた。日本は偏向マスコミのせいで中国や韓国に反感を持つ人が多い。そのやうななかで当ホームページは文化共通面から中国、韓国との交流の必要性を主張してきた。しかしその割にはきちんと両国の入場を見てゐなかった。再度入場を見たのはラオスの入場で女性が肩に巻く布を確認のためだった。
八月十日(水)
開会式の挨拶に思ふ
開会式ではリオデジャネイロ側の責任者とIOC会長が挨拶したが、ずいぶん冗長だった。関係者を種類別に呼びかけるからだが、内容も乏しかった。リオデジャネイロ側の責任者はこれまでの準備とこれからの運営で手一杯だから仕方がないにしても、IOCは競合団体が無いからこうなるのか、と聴いてゐて思った。別の国際団体が同じく四年ごとに別のオリンピックを開催し、つまり二年ごとに交互に開いたらどうか。
誘致のためIOC委員を接待など悪いニュースが最近は多い。かつてのブランデージ会長のやうにプロ選手を排除するなど何か目的がないと、オリンピックはカネと権力の動く暗黒組織になってしまふ。
八月十一日(木)
感動の物語とともに
実際に競技をテレビで観てゐると、そこには感動の物語がある。柔道で負けても周囲の応援があったので腐らず銅メダルを取れたと涙ながらに話す選手、水泳リレーの勝利、個人戦で金と銅を同時、日本人どうしが予選で同タイムになり決勝戦出場の決定戦かといふときに中国選手が辞退、体操個人の逆転劇等々。
気になるのはNHKのアナウンサーがでしゃばることだ。民放は元選手が出演するなどまだよい。NHKみたいにできの悪い番組を作れば提供企業がでないからだ。NHKはいよいよ廃止したほうがよい。開会式の前に女性のアナウンサーがすっかり有頂天になって上ずった声で話すのであきれたが、その後も試合前や試合後にNHKだけ出来が悪い。
八月十一日(木)その二
二時間天下
福原愛が銅メダルを逃した。相手は北朝鮮のキムソンイといふカット主戦型で、石川も初戦で対戦し敗退した。カット主戦型は珍しいから、私は北朝鮮を応援した。北朝鮮は日本人誘拐事件やミサイル実験を行ったから応援してはいけない、と云ふ人は多いことだらう。しかし政治とスポーツは別だ。もしこのような主張を許せば、アメリカは人類史上初めて原爆を使用したから応援してはいけないことになるし、イギリスは世界で最も植民地をたくさん持ち、二枚舌外交をインドやパレスチナで用ゐたから応援してはいけないことになる。北朝鮮では選手もコーチも質素に生活してゐることだらう。余計応援しようといふ気持ちになる。
日本以外を応援してみるとスポーツ放送の解説が偏向してゐることがよくわかり苦笑した。第一ゲームをキムが勝ったあと、キムは持っているすべての技を出し切りましたから福原の反撃はこれからですね、と解説者が云った。しかし第2ゲーム、第3ゲームもキムが連勝した。その間、流れが福原に変はりましたね、とも解説したが実際にはキムが連勝した。
試合が終はり昼食を食べたあと、キムソンイを気に入ったのでYouTubeで2016世界卓球を観た。マレーシアで伊藤が対戦し負けた。キムは相手の打った球が入らなかったときに叫ぶ。今回のオリンピックでも十回くらいあったが、大舞台で気持ちが高揚したのだらうと、気にしなかった。しかし別の大会でも叫ぶとなると話は別だ。もしすべての選手が相手の動揺を狙って相手がミスする度に叫んだら収拾がつかなくなる。ルールを改正せざるを得なくなるに違ひない。今は人数が少ないから大目に見られてゐる。
といふことで私がキムソンイのファンだったのは二時間に留まった。
八月十三日(土)
どの選手にもある秘れた努力の話
つぶやきをみると、北朝鮮は嫌ひだがファンになった、日本の二人のエースを倒したのに恨まれない、など好意的な書き込みがほとんど(といふか全部)だ。福原がネックレス、イヤリング、髪の飾りをたくさん付け後ろで結うのに対し、キムソンイは短髪で装飾品は一つも付けてゐない。その質素な身なりに多くの人が好感を持ったのかも知れない。因みに福原に限らず一部を除くすべての国の選手が装飾品を付け髪を結ったりしてゐる。女子団体戦で対戦したポーランドの中国系帰化選手は髪を染めてゐた。
福原は一日十二時間練習をしてきたといふ秘話がある。柔道も水泳もどの競技も皆、努力の秘話がある。今回はさういふ話もテレビなどで紹介されるので、オリンピック嫌ひにならず、楽しく観させていただいてゐる。
八月十四日(日)
負けた相手への礼儀を欠いてはいけない
男子個人で水谷も叫ぶ。しかし声が小さいからあの程度ならいいのか、と思ひ直した。2016世界卓球はマイクの位置の関係でキムソンイの叫び声が大きく入ったのかも知れない。
今朝は女子団体を観た。石川がオーストリア戦の最後のほうになって大声で叫ぶので不愉快になった。自分が負けてゐるときに叫ぶなら、気合ひを入れるためだと許される。しかし石川はリードしてから相手のミスのときに叫ぶ。これは負けてゐる側への礼儀にかけるから、私はテレビのチャンネルを変へて陸上を観た。
私と同じやうに日本チームの礼儀に苦言を呈した人がゐる。元プロ野球の張本勲氏だ。サンケイスポーツによるとTBSの「サンデーモーニング」に出演し
水谷の個人戦、団体戦での勝利後の態度を映像でみると、「あんなガッツポーズはダメ。手は肩より上げちゃダメ。礼に始まり礼に終わる、ですから」とコメント。
3位決定戦に勝ち、卓球の個人種目では男女を通じて日本勢初のメダルを獲得した水谷は、仰向けになって派手なガッツポーズをみせていたが、これにダメ出しした。
負けた相手への敬意も必要という持論を持つ張本氏は、「ひとつ注意しておきます、以上」と厳しかった。
張本氏と云へば、私が中学生のときに父が後楽園球場の入場券を二枚もらってきて南海ホークス戦だったか西鉄ライオンズ戦だったか見に行ったことがある。三塁側だから東映フライヤーズのときはヤジを飛ばす。当時は汚いヤジが多かった。例へば東映の選手が守備でエラーをした。その選手に向かい「キャー、xxさん(選手名は覚へてゐない)、すてきー。バカ、お前のことぢゃないよ」と云ふヤジを今でも覚えてゐる。張本に向かひ「はーりーもーとー、はーりもと、悔しかったら日本人になってみろ」と云ふヤジもあった。人を差別するヤジはよくない。中学生ながら思った。
その懐かしい張本氏が今回よいことを云った。
八月十六日(火)
一昨日まで熱心に観た理由
一昨日でオリンピックへの関心が冷めた。しかし昨日は石川が選手席で福原が対戦のときに大声を出し退場になる事件があったので、昨夜と今朝、テレビを点けてみた。その場面はやらなかったが、この場合はそれほど悪質ではない。負けさうな場面だからだ。勝ってゐる側が大声を出したり派手な演技をするのは失礼だ。
今回のオリンピックにこれまで関心を持てたのは、出場選手の努力や周囲の支へが報道されたからだ。大勢のなかには競技に極めて合った体の人がゐる。さういふ人はそれほど努力しなくてもメダルを取れることがある。これまではさういふ人が登場するから関心がなかった。今回は違った。だから一週間関心を持てた。柔道と体操が一週間続いたのも大きい。あの二つは努力の競技だ。勿論過去にさうではない人もゐて、事件を起こしたこともあったが。
八月十八日(木)
レスリング女子
レスリング女子の三階級を観た。三人とも最後に逆転した。二番目の伊調選手は場内に入るとき一礼した。これはよいことだ。レスリングのルールや慣習になくても日本選手なのだから。今まで三回の金メダルにより、気の付かないことが見えるのかも知れない。銀メダルに終はった外国人選手が表彰式のあと一人だけメダルを持たず不満さうにして、途中から横を向いてしまった。銀メダルで不満を持つのは贅沢だ。さうならないためにも、各国はメダリストを優遇してはいけない。IOCは規制すべきだ。国によっては金メダルを取ると一生優遇されるといふ噂をよく聴く。メダルで優遇した場合は剥奪すべきだ。
昨日までオリンピックについて冷めた気持ちになったが、今朝の三つの試合を観て再び応援するやうになった。国民全体が経済力や武力ではなく一つにまとまれるオリンピックはすばらしい。国民を連帯させようとするオリンピックと、国民を分裂させようとする社会破壊西洋猿真似新自由主義反日パンフレット(自称朝日新聞)は正反対だ。
八月二十日(土)
レスリング女子がメダルラッシュの理由
川井が優勝し駆け付けた栄監督を二回投げた。試合後のインタビューで「『投げさせて下さい』って決勝前に言っていて、それができたので良かったです」と語る。この雰囲気が女子チームの強い理由だらう。前回は栄監督が優勝した選手を肩車してマットを一周した。今回は選手が監督を肩車する。そのアイディアも素晴らしいし、『投げさせて下さい』と発言できる雰囲気も素晴らしい。
八月二十一日(日)
シンクロと競歩
シンクロが銅メダルを取った。練習の厳しいことが紹介された。銅メダルが決まったとき井村監督の「むちゃくちゃ強引にした責任の取り方はメダルを獲らせてやることだから、責任を果たしたなという気持ち」はリオデジャネイロオリンピックで日本の選手、監督全体で最高の名言となるに違ひない。
競歩は三位で到着したものの失格となり、日本陸連の抗議で失格取り消しになった。競歩はその過酷さが知られるやうになった。走るのと同じ速度で歩く。シンクロと競歩の厳しさはメダルを取ったことで知れ渡った。オリンピックはメダルを取らないと注目されない。
八月二十四日(水)
閉会式
アトラクションは嫌ひだから閉会式は見なかった。しかしニュースで小池都知事が和服姿で五輪旗を受け取ったところと、東京の紹介で安倍首相がマリオに扮装するところがよかった。和服姿はよいことだ。日本の特長を出した。アニメとマリオと安倍首相も良かった。これも日本の特長を出した。海外の反応も極めて好評だった。日本国内も良い反応だった。ところが日刊ゲンダイによると
「一国の総理大臣のやることか?」「国辱ものだ」――リオ五輪の閉会式にサプライズ登場した安倍首相に国内外から非難と嘲笑が巻き起こっている。(中略)公用車の後部座席でふんぞり返る安倍首相の姿も。これだけでも顰蹙ものだが、映像の後、会場中央に置かれた円筒の中から赤いボールを持ったスーパーマリオの着ぐるみが登場。その中から出てきたのが、なんと満面の笑みを浮かべた安倍首相本人だったのだ。
早速、ネットでは「アニメを使って楽しかったが、最後に“汚物”が出てきて絶望」「世界に日本の恥をさらした」「安倍は土管から出てくるためにわざわざ税金を使ってリオまで行ったのか」といった声があふれ返った。
私がインターネットで見る限り、賞賛の声ばかりだった。私は検索エンジンで調べたが、個々のつぶやきサイトを探せばこのやうな声もあるだらう。それは個々のつぶやきサイト内の話であって、「ネットでは(中略)あふれ返った」とはほど遠い。
日本では組織の長は目立つことをすべきではないといふ風習がある。これは日本の欠点でもあるし、菅直人のやうな人間を出さないための長所でもある。安倍首相も基本は目立つことをしないタイプで、これが自民党の安定した議席数につながる。しかし隠し味として少し目立つことを入れる。これが世界と日本で評判の良かった理由だ。
八月二十五日(木)
オリンピックの真の勝者と敗者
閉会式から三日が過ぎた。冷めた目でオリンピックを振り返ると、真の勝者はIOC委員だ。開催場所を決めるために世界の各国各都市から接待されるのだから。真の敗者は地球だ。無駄なイベントで自然環境を破壊するのだから。人類は日常活動で化石燃料を消費し、自然を破壊してゐますと世界にアピールしたのであれば立派だが。(完)
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