八百三十 昼休みの散歩三回目(三といふ数字でまとめた)

平成二十八年丙申
四月二十四日(日) 三人の有名人の家
先月の末に昼休みの散歩を復活させた(前回へ)。食後十五分から血糖値が上昇するといふ記事を読んだためだつた。首凝りと肩凝りが起きるようになつたが、このうち首は大切な神経が集中するため揉まないほうがよいといふ記事も読んだだめだつた。
初日は会社の近辺を歩くに留めた。二日目は先代三遊亭圓楽宅前まで行つた。ここを見つけたのはまつたくの偶然だつた。自宅を北山本門寺系の布教所(僧X宗の規則では結社)にした僧侶がゐて、そこに参拝するのに時間が早かつた。その先を歩くと三遊亭圓楽の本名と「若竹カンパニー」と書かれた表札を見つけた。
ここまで歩くと昼休みがぎりぎりになる。予め昼食を用意してあるときに食べてから散歩すれば十分間に合ふ。途中に貴乃花部屋がある。ここまでなら十分間に合ふ。会社から二往復しても大丈夫だ。
別の日に北一輝宅跡まで行つた。中野五差路を過ぎたところにあり、今はマンションと銀行の寮が建つ。銀行の寮は、会社名が無く、単に「中野寮」とだけかいてあるから、どこの会者の寮だらうと思つた。
北一輝は2・26事件で逮捕され、民間人なのに陸軍将校を煽動したとして軍事裁判で銃殺刑になつた。三十年くらい前にNHKのテレビで観たが、北一輝が反乱将校に電話で「マル(現金)は要るか?」と話すところを警察に盗聴され、共犯の決め手になつた。
北一輝宅跡は近くだから行つただけで、北一輝が正しいとはまつたく思つてゐない。北の書籍を読んでも、本質とは無縁のことを延々と書いた印象しか残らなかつた。

四月二十四日(日)その二 三つのタイ料理店
会社のすぐ裏にタイ料理店がある。十二年前事業所がここに移転したときは、良い場所に移転したものだと喜んだ。しかし三回行つただけでその後は十一年間行つてゐない。その間に経営者が二回変はつた。前の経営者のときは電光掲示板があつて、会社の裏口から開店してゐるかどうかが判つた。
本社は十四年前までは西新宿にあつた。週に一回会議に行つたあと、昼食はよく西新宿のタイ料理店に行つた。この店はテレビにもときどき出演する有名な店だつた。その後、本社にほとんど行かなくなつた後に、何と会社の入居するビルの一階にタイ料理店の閉店した後を見つけた。タイ出張のときいつしよに行つた近くの別の会社の人の話だと、最初開店したときはお客が少なく、値下げしたら繁盛するようになつたが、再値上げしたら客が来なくなり閉店したさうだ。

四月二十四日(日)その三 三つの卓球場(その一)
タイ料理店の少し先に「新中野卓球場」と書かれたビニール製の赤い屋根がある。自動販売機の上にある。コカコーラの電灯式の小看板にも「新中野卓球場」と書かれてゐる。しかし肝心の卓球場が見えない。たぶん空き地(駐車場)に前はあつたのだらうと十二年間思つてきた。今回の散歩で道端にゐた老人に、どこに卓球場があつたのですか、と尋ねるとタバコ屋だといふ。なるほどタバコ屋が前は卓球場だつたのかと、そのときは思つた。
インターネットで調べると、約50年前にタバコ屋の経営者がタバコ屋を前に移動させて裏に作つたとある。区の卓球連盟の顧問も務めるさうだ。中でプレーをした人の三年前のブログもある。「床は擦り減ってデコボコになっており、卓球台の緑色もかなり薄くなっていた。もちろん、私が子供の頃はオジさんだった店の方は爺さんになっていた。 ところどころヘコミのあるピンポン球とラバーがツルツルになったラケット」とある。別の書き込みだと、このお爺さんは入院中ださうだ。
このとき同時に日中卓球センター、本町卓球場も検索されたが散歩の範囲外なので気にしなかつた。

四月二十九日(金) 100円ローソンのある街
これは東京近郊だけに当てはまる話だが、100円ローソンのある街は、まともな街だ。100円ローソンの無い街は高層ビルが乱立したり金持ちの住む異常な街だ。
100円ローソンの一部店舗を閉鎖するといふニュースを一年ほど前に読んだ。それからはより積極的に100円ローソンを使ふようになつた。馴染みの店は、築地本願寺近く、川崎大師近く、会社から少し離れた場所の三店だ。昼休みに会社から少し離れた場所へ何回か連続して行くことになつた。事情はかうだ。都立学校で授業の後、会社に戻る途中のスーパーで魚を材料としたソーセージを安く売つてゐた。賞味期限を考慮して20本くらい購入した。そしてそれをすべて食べ終つた。
私は食事を買ふときは、たんぱく質、野菜、カロリーの三つを考慮するから、魚ソーセージがなくなるとたんぱく質が不足する。100円ローソンにたまごハムのパンがあるからあれともう一つ何かを買はうといふことで100円ローソンに何回か行つた。

四月三十日(土) 本五公園
100円ローソンに行くときに気をつけなくてはいけないことがある。昼食後に散歩する理由は、食後十五分以後血糖値が上がることを抑へるためであり、もし100円ローソンまで歩くときに血糖値が下がると大変なことになる。体が血糖値を上げる反応をしてしまふから逆効果の散歩をすることになる。それを防ぐために、予め買つてあるバナナを野菜代替物として食べて、果糖による血糖上昇と100円ローソンまで歩くときに消費する血糖(無視できるほどわずかだが)を相殺することにした。
一回目のときは100円ローソンに行かうとして、方角を90度間違へて青梅街道の中野新橋入口交差点から100m南に出てしまふといふ失敗はあつたものの、そのまま北上し中野新橋付近を右折して100円ローソンに至ることができた。このとき本五公園といふ新しくできた公園を発見した。

五月二日(火) 社会基盤維持のため公衆電話を使はう
前にも道を間違へたことがある。休暇を取つて佼成図書館に行くとき、100円ローソンで昼食を買はうと思ひ、今回と類似した間違ひをした。青梅街道と鍋屋横丁と中野通りは三角形になる。つまり道が四方に交差しないのだ。だから90度間違へる。今回帰路に間違へない方法を見つけた。中野本郷小学校の正門を真つすぐに進むと100円ローソンに至る。
ここなんかは私のよく知つた道だ。昨年まで新中野卓球場の二軒先に公衆電話があつた。これが廃止ののち、新中野駅まで行くのは大変だから探すと中野本郷小学校の正門前にある。私も携帯電話は持つてゐるが、社会基盤の維持のためできるだけ公衆電話を使ふようにしてゐる。テレホンカードを割引で買つてまだ20度数余るといふ事情もあつた。

五月四日(水) 三つの卓球場(その二)
別の日に100円ローソンに行つたあと、たまたま本五公園の横に日中卓球センターを見つけた。ホームページで調べると中国人の「中國國家級健将選手認定」といふ二人のコーチと、され以外に三人のコーチが載つてゐた。
更に別の日に、100円ローソンに行くときよく間違へる道をそのまま中野新橋通りを過ぎて直進すると、左側に本町卓球場を見つけた。ここはいつ散歩しても中から卓球の玉を打ち返す音がする。この辺りに卓球場の多い理由は、昔からの街並みだからだ。ここ二十五年ほどで日本の街は大きく変はつてしまつた。新しい町は砂上の楼閣に思へてならない。(完)


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