七百三十二 盆の入り、子猫が二匹、仮棲まひ

平成二十七乙未
八月十四日(金) 早速起こした行方不明事件
昨日我が家に猫が二匹来た。上の子の大学の先輩が帰省のため一か月ほど預かることになつた。先輩が飼つてゐるのかと思つたら、さうではなく動物福祉サークルで薬殺処分を避けるため飼ひ主が見つかるまでの間、飼育中の猫だつた。
大きなケージとともに来て、部屋の中では放し飼ひにする。我が家では家族が帰宅した順番に部屋まで拝観(?)に行つた。全員見終つた段階で一匹が行方不明になつた。あちこち探してもゐない。私がベッドの裏だと叫び、ベッドの蒲団をどけて床板を開けると中ですやすや寝てゐる。床板の下に引き出しがある。その中に裏側から入り込んだのだつた。

八月十五日(土) 獣医学科六年生
このサークルは月に一回駅前広場で展示コーナーを行ふ。我が家でも一匹引き取るかと私が云つたことがある。その代はり病気になつたときは六年生に無料で診察して貰はうと云ふと六年生はまだ診察できるほどではないらしい。

八月十六日(日) キャッツフードと肉
昔は猫の餌といへばご飯に何かかけたものだつた。猫まんまといふ言葉もある。私の感覚ではご飯に味噌汁を掛けたものだが、インターネットで調べると、ご飯に鰹節を掛けて汁を掛けたり掛けなかつたりするのが東日本、ご飯に味噌汁など汁を掛けるのが西日本で、犬飯とも呼ばれるさうだ。今ではほとんどキャッツフードを使用する。
我が家に仮棲まひの二匹も常時キャッツフードがお皿に満載してあるが、あまり食べない。定時に別のキャッツフードを与へるがそのときは二匹が競つて食べる。それなら定時に前者を与へれば間違へて食べるのではないか。そんなことを考へてしまふ。

八月十八日(火) 昨夜の話
昨夜は帰宅したあと、暫くして下の子が帰つて階段の下で何か云ふから上から答へたところ、部屋の中からニャー、暫くしてまたニャーと鳴き声が聞こえた。外で人間の声がするといふことは中で鳴いても外に聞こえる。子猫にも判るのである。部屋の中に入ると、二匹が寄つてきた。指に傷はないが少し痛いからどさくさに紛れて噛まれたのかも知れない。あの美味しい餌が欲しいのだらう。しかし私は担当ではないからどの袋か判らない。
といふことで二つの皿にある固形飼料の皿を目の前に移動させたところ、むしやむしや食べ始めた。そもそもキャッツフードである。美味しく出来てゐるのである。

八月十九日(水) 美味しい餌を始めて見た
昨夜は部屋の電気が消えてゐる。扉を開けると一匹が外に出て捕獲するのに時間が掛かつた。上の子が帰つて来たので美味しい餌を与えるところを見学した。一匹が私の靴下に爪を立てた。昨日かまれたと思つたのは爪を立てたのだつた。昨日は始めての試みでキャッツフードに美味しい餌を練った。これだと両方を食べる。

八月二十日(木) 始めての餌やり
黒白のぶちがオス、真つ白がメス。勝手にさう決めつけて、ネコ吉、ネコ子と名前まで付けてゐた。しかし本当は二匹ともメスだつた。昨日は私が始めて餌当番になつた。部屋に入らうと少し扉を開けるとあつといふ間にブチが外に出た。我が家は二階に三部屋ある。残りの二部屋を8の字状に走りまくつた。同じ経路で追いかけ何とか捕まへて昨日と同じ方法で餌を与へたのに食べない。そればかりかブチが階段を勝手に降りた。下でつかまへて部屋に戻した。扉を開けたとき再び今度は二匹逃げ出し、ブチは一階に始めて降りた。何とか戻してまた飛び出して今回は二匹とも一階に降りた。8の字を走るので今回は8の左上の部分に先回りしたら8の中心線を縦に南下したりといろいろあつて、やつと部屋に戻した。そのうち上の子と妻が別々に帰宅した。下の子は合宿で一週間ゐない。ブチ高原、ではなかつた。斑尾高原に行つた。

八月二十三日(日) 飼ひ主が決まる
斑尾高原のほうは飼ひ主が決まつた。今週引き取りに来る。真つ白のほうも飼ふかどうか今週見にくることになつた。よかつた。猫を寝るときケージに入れると「出せー」とニャーニャー鳴くさうだ。なかなか贅沢である。といつて放し飼ひにするとベッドに上がつたり飛び降りたりして人間の睡眠の邪魔になる。誰も寝ない部屋は食器棚や電線などがあつて放し飼ひには危ない。早く飼ひ主が決まつてほしい。

八月二十五日(火) 日一日と変化
一昨日は、猫を抱き上げると逃げるようになつた。今までは部屋から外に逃げた場合は抱き上げておとなしく部屋に戻せたのに、足と体を使つてすり抜けるようになつた。昨日から上の子がつひに別の部屋で寝るようになつた。猫と同じ部屋では寝不足になる。

八月二十六日(水) 暗いところでもよく見える
昨日は部屋の扉を開けたら二匹が飛び出して和室に走つた。部屋が薄暗かつたので廊下の電気で飛び出したのかも知れない。和室も電気が消えてゐるから、それならと扉を猫が一匹通れるくらいに閉じた。暗いから猫は出てくるだらう。ところがいつまで経つても出てこない。扉を開けたが暗くて何も見えない。部屋の電燈を付けると和室テーブルの上と下に1匹づつ座つてゐた。上下二段なので寝台列車みたいだつた。猫を捕まえようと近づくと二匹とも走つて自分の部屋に戻り家具の陰に隠れた。怒られると思つたのかも知れない。或いは明るさが余りに異なるので驚いたのかも知れない。

八月二十八日(金) 日によつて変動
一昨日は部屋に戻すため捕まえてもすり抜けなくなつた。すり抜けたのは一日だけの現象だつた。昨日は二匹が同時に走り回るようになつた。今まではばらばらに行動してゐたのにいつしよに走る。半開きの引き戸の両側に分かれ、下からのぞき込んだり手を少し見せる。二匹で遊べるのはあと半日である。

八月二十九日(土) 人なつこくなつた
昨日はブチが新しい飼ひ主にもらはれて行つた。残りの一匹は人なつこくなつた。二匹だと互いに影響するが一匹だと人間を相手にする。子猫ではあるが多くの飼ひ猫と同じ立場になつた。しかし子猫だから室内に干した洗濯物の紐を引つ張つたりする。動くものに反応するようだ。

八月三十日(日) 一階に自由に出入りするようになつた
今まで階段を降りても一階に入ることはなかつた。私が一階でパソコンを使つてゐたらネコが来たので「おいで」と手招きしたのにまた階段を上がつた。ところが昨日から一階に出入りするようになつた。行方不明のときは台所の椅子の上で寝てゐることが多い。インターネットで調べると子ネコの場合は一日に二十時間寝ることもあるようだ。
座つてゐる私の足に上がらうとしてずぼんに爪を建てるので、手を持つたあと軽く体をたたいた。その日は私が手を別の用事で動かすとあわてて逃げ、それでゐて爪を立てるのは止めないので、教へることに失敗した。しかし本日は今までと同じようになつくし、爪を立てるのは止めた。昨日の教育が役立つたようだ。

九月一日(火) 食卓に上がらないよう教へる
昨日、ハムとトウモロコシを油で揚げたものが少し残り小皿に入れて冷蔵庫にあつたので食卓に置き、洗濯物を片付けに二階に行つて降りて驚いた。猫が食卓に上がり食べてゐる。人間の食べるものは塩分が多くて猫にはよくない。揚げた油だつて悪いだらう。見るとハムだけ食べてトウモロコシは残してゐる。あわてて逃げたので今回は逃がさず2分くらい追いかけて捕まへ、猫の顔を食卓に近づけて軽くたたいた。猫も痛くはないが叱られたといふことは判るだらう。
一時間ほどして食卓の脇に上がつたのでその場で軽くたたいた。猫は慌てて隣の部屋を半周してカーテンの後ろに隠れた。妻がどこに行つたのと聞くからカーテンを上げると後ろでおとなしく丸くなつてゐた。
トイレは最初から猫トイレでするよう躾けられてゐた。爪を立てて膝に上がるのもしなくなつた。あとは食卓に上がらないよう教へて新しい飼い主のところに行つてほしい。

九月二日(水) 猫の叱り方
インターネットで調べると、猫をたたくのはよくない。なつかなくなつたり無視されることもあるらしい。私の場合は次の日も猫が寄つてきて顔や体をこすりつけるから大丈夫だつた。たたくといつても、なでるのを少し強くした程度である。誰がやつたか判らず天の声みたいな感じで水鉄砲を掛けたり音のする缶を投げるのがよいらしい。猫は濡れるのを嫌ふさうだ。大きな声で叱るのもよいさうだ。私の場合、大きな声を出したのが効いたようだ。

九月三日(木) ネコ飯で大丈夫だつた理由
かつてはネコ飯でも大丈夫だつた。インターネットでたまたまその理由を見つけた。かつては放し飼ひだつた。ネコは栄養の偏つた部分をねずみや小鳥を取って補つた。我が家の十姉妹も40年前の話だがネコにやられた。しかし今は室内飼育がほとんどである。その結果、ネコ飯では駄目である。なほネコが小動物を食べるときは肉だけではなく、内臓や軟骨も食べる。これによりビタミンやカルシウムを摂取する。だからネコは肉食だからと肉だけを与えるのは駄目ださうだ。

九月五日(土) 噛みつき癖
昨日、畳の上に置いた私のポロシャツにネコが乗つた。暫くして着ようと思つてポロシャツを引つ張つたところ、猫が怒つたように大きな口を開けた。暫くして乾いた洗濯物を折りたたんで積み上げてある上に乗つたので猫を押して山から降ろさうとした。このままだと山が崩れるからだ。このときも大きく口を開けた。ライオンや虎がさういふことをしたら怖い。猫だと怖くも何でもない。しかしこれまでさんざん猫のために時間を割いたのにこの態度はよくない。猫を部屋に入れようと抱き上げて部屋まで運んだところ指を噛んだ。部屋に放すのと同時だつたためか傷は付かないし少しチクッとしただけだつた。その後はこのような態度は取つてゐない。
ゴキブリ事件といふのもある。猫のゐる部屋が隣のためか、私の部屋にゴキブリが出た。私は猫に食べてもらはうと、猫を連れて来たが妻が一足早く洗剤を掛けた。ゴキブリに洗剤を掛けると死ぬといふ噂を信じたのだが、その後ゴキブリが遅くなつて少し動いた。猫が近づかうとする。洗剤が付いてゐるから有害である。猫に待つたを掛けた。その後ごきぶりが別の部屋に行つたり廊下に出たところを私がスリツパで叩き潰して一件落着した。

九月七日(月) その後は噛まず
その後、二日間は噛んだり口を大きく開けることはなかつた。外出のときは猫を部屋に入れる。ケージではなく一部屋だから豪華である。しかし退屈するのか帰宅すると「ニャー、ニャー」と哀れな声で鳴く。人間の気持ちをひくのが得意である。

九月八日(火) 猫の作戦
今日になつて猫の取る作戦を発見した。今まで気づかなかつたといふより昨日あたりから始めたのだらう。まづ「ニャー、ニャー」と哀れな声で鳴く。暫く無視されると今度は部屋の中でどたばた暴れる。二階で暴れると一階まで響く。猫は賢い。日一日と新しいことを始める。

九月十日(木) 後を付いて来る
昨日は一人で一日家にゐた。猫の部屋を開けて遊ばせるよう妻に云はれたので一日中開けておいた。パソコンを操作してゐると寄つてきて頭や体を擦り付け、しばらくすると服の上で昼寝をする。一階に降りると付いて来る。一階でもふとんの上で昼寝をする。起きてはゐるが別の場所にゐるときそつとトイレに行きまさか付いては来なかつただらうと扉を開けると入れ違ひに入る。猫は狭いところが好きだ。一昨日はトイレ前に足跡があつた。便器の中に入つたな。流した後だから汚くはない。
突然高速で走り回ることがある。子猫だから活発である。階段を降りるときも走る。走つて降りられる理由を見つけた。斜めに一段づつジグザグに走る。なるほど猫も賢い。

九月十一日(金) ディスプレイの後に回る
同じ日にパソコンのディスプレイの後ろ側を一周することを始めた。我が家には和室用のパソコン机がある。キーボード置きより一段高い位置にディスプレイ台がある。ディスプレイの手前は狭いからさすがに猫でも通らない。ディスプレイの奥は余裕があるから二回通つた。たまたまインターネットで別のことを調べてゐると猫対策のキーボードといふものがあるらしい。猫が乗つても大丈夫なように透明なカバーが付いてその下で操作する。猫は飼い主の気を引かうとキーボードに乗ることがよくあるらしい。私はまだやられたことはない。
しかしゐないときにキーボードに乗つたかも知れない。設定が変はつてゐた。

九月十二日(土) 猫の爪
昨日は妻が猫の爪で指からわずかだが血が出た。本日は猫が網戸を爪で上がらうとして網戸の格子が少し大きくなつた。私も指に爪が当たり、血は出ないが皮膚の下の血が見えるので消毒した。上の子は猫に触ると手を洗ふ。大学で習つたのだらう。私は我が家に来て長いから猫に触つても気にしなかつた。既に家の中を自由に行き来し顔や体を擦りつけ洗濯物の上に座るからである。たたんだ蒲団の上で昼寝をするので携帯で写真を撮らうとしたところ目が覚めて蒲団から落ちさうになつた。爪で蒲団につかまりよじ登つた。猫の爪は便利だ。

九月十五日(火) 鼠の死骸
昨日妻が十軒くらい先の路上に鼠の死骸を見つけ、解剖に使ふか上の子に訊いたところ使ふといふ。ビニール袋を持つて拾いに行つた。猫が食べたら大変である。猫いらずを食べて死んだのかも知れない。そんな鼠を食べたら猫が猫いらずになつてしまふ。「シロアリ民主党いらず」ならよいが「猫いらず」は駄目である。猫や犬は人類とともに昔から共存してきた歴史がある。シロアリ政治屋と偽労組シロアリ連合にはそのような歴史はない。

九月十六日(水) 鼠の死骸が行方不明
昨日の朝、大変な事件が起きた。ネズミの死骸が無くなつた。すは盗難か、と慌てる必要はない。ネズミの死骸を盗む人はゐない。一番心配なのは猫が食べることである。二番目に心配なのは家の中で腐ることである。昨日会社から戻つたあと猫を見ると横に倒れた。単に引き戸の裏側を下から覗かうとしただけだつたが最初は慌てた。部屋の中でやたらと走り回るのにも慌てた。猫いらず含有の鼠を食べて半狂乱になつたかと心配した。鼠の死骸は新聞紙に包んでビニール袋で密封したことを後で聞いた。もし食べたならビニールや新聞紙の残骸がある筈だが無い。だから慌てる必要はなかつた。
本日も帰宅の後に押入れにビニール袋がないか調べた。一昨日猫が押入れに入つたからである。しかしなかつた。本日も猫がやたらと走り回るので、子猫だから単に遊んでゐるだけだつた。上の子が猫ケースを持つて来た。明後日出発する。

九月十七日(木) 噛み砕かれた新聞紙
ねずみを拾つた日の夜は、私が餌をやつた。餌と水の皿は新聞紙の上に置く。その新聞紙がこの日に限つて細かく食ひちぎられてゐた。全く気にせず新聞を捨てて新しい新聞紙を敷いた。朝日新聞が唯一役立つときである。そのときは気付かなかつたが翌朝、鼠の死骸が行方不明になつた。そしてその翌日だつたかネズミは新聞に包んでビニール袋に入れたことを聞いた。更にその翌日あたりに新聞の食ひちぎられた破片の話を突如思ひ出した。何となくネコが食べてしまつたような気がする。
ネコとも明日お別れである。一か月間あつといふ間だつた。

九月十八日(金) 帰宅延期、外の景色
ネコの帰宅が二十一日に延びた。ここ一週間ほど猫がガラス越し或いは網戸越しにベランダの外をじつと眺めるようになつた。最初、物干しの洗濯物を片付けるときに猫が室内に見えた。ガラス越しにトントンと叩くと猫も内側から手を伸ばした。次の日は隣の部屋から網戸越しに行儀よく座り、網戸越しにいつまでも外を眺めてゐた。
猫にとり外は天国だらう。しかし病気に感染したり不潔なものを食べたり、危険がいつぱいである。猫エイズといふ怖い名前の病気もある。幸い人間には感染しない。微熱やリンパ節の腫れが半年前後続く。数年間症状がなくなり回復したようにみえるが、その後免疫力が弱まり平均年齢六歳で死に至る。野良猫の平均寿命は六歳ださうだ。或いは外の猫はほとんどがエイズに感染してゐるのかも知れない。

九月十九日(土) 洗濯機に上がる
今日は猫が洗濯機に上がつた。蓋の開いたときだからよく縁から落ちないものである。この高さを登つたのは初めてだ。食卓にも上がらうとした。使はない椅子を完全に入れないでおくと、猫が椅子を踏み台にして食卓に上がる。完全に入れると猫は上がれないことを十日くらい前に発見した。ところが今日は飛び上がつて背もたれの最上部に前足を両方掛けて、よじ登らうとした。途中で失敗したがおそらく数日のうちに成功させるだらう。

九月二十日(日) 椅子の背もたれに上がれない
椅子の背もたれに上がれない理由を発見した。まづ猫は飛び上がつて背もたれの最上部に前足を掛ける。次に後足でガリガリ背もたれの棒を駆け上がらうとするがつるつるでニスを塗つてあるから、爪が引つかからない。暫くして諦めて前足を離す。
夜になつて食卓に直接飛び上がつたさうだ。今日も新しいことを一つ覚えたようだ。

九月二十一日(月) 出発
朝、歯を磨いてゐたら猫が洗面台に飛び乗つた。高さは食卓と同じだから、なるほど昨夜食卓に飛び乗つたことが理解できた。歯を磨いた水が洗面台に溜まり、猫がそれを飲まうとしたので慌てて注意した。猫は床に飛び降りた。三十秒ほどして猫がまた飛び乗つた。今回は排水口から流れたあとだつたので洗面台を眺めただけですぐ降りた。三十分ほど準備の後、八時二十分に猫は出発した。八時四十分に時計を見て、出発から二十分経つたのかと思つた。(完)


追記九月二十五日(金)
十八日頃に、下の子のゐる居間から猫が走つて出てきて、私は廊下を居間に向かつたのだが私を見ると足で床を蹴りながらU字型に折り返して居間に戻つた。十九日だらうか、座布団の上で寝たあと、座布団に座ることを覚えた。その前に一階の部屋に入らないよう扉を閉めに行かうとすると、私を追ひ抜いて一階に入る。二階で座布団に座らうと歩くと追ひ抜いて座布団に座る。追ひ抜くことを覚えた。座布団からどかさうとすると怒り出す。猫はふかふかの場所から追ひ出されるのが嫌ひのようだ。あと私が家の中ではくずぼんは紐が付いてゐる。これを引つ張るのが好きで、しかし煩はしいから紐を取り上げると怒り出す。
猫が階段を折り返して降りたのは一回だけで、あとは直線で降りることを覚えた。高速で階段を降りるから驚くばかりである。あと歩くときに尻尾をピンと立てる。飼ひ主から可愛がられることは間違ひない。あと左右で目の色が違ふ。真つ白で目の色が違ふ猫は、インターネットによると片耳が聞こえない猫が多いらしい。しかし寝てゐるとき、50cmくらい離れた位置で指をパチンと小さい音を立てると、左も右も耳を動かしそのまま寝てゐる。両耳とも大丈夫である。

追記十月二十三日(金)
白い猫の特長は真白のほかに、尻尾が長くてしかも歩くときに上に立てるから立派に見える。インターネットで調べると、尻尾の短い猫と長い猫がゐるが、日本では迷信で短い猫が可愛がられたため、短いほうが多くなつたらしい。白い猫は既に新しい飼ひ主に引き取られたさうだ。よかつた。


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