六百三十(乙)、熱帯雨林の消失(野生動物を守る)
平成二十六甲午
十一月十六日(日)
二十年間で熱帯雨林が消失
熱帯雨林の小冊子が手元にある。ここに衝撃的な図が載つてゐる。二十年前は一面が熱帯雨林だつた。今は川に沿つて僅かな
熱帯雨林しかない。パーム油を採取するためアブラヤシの植林に変つてしまつた。ボルネオ島のキナバタンガン川の流域である。
パンフレットによると
熱帯雨林は地表の4%を占めるだけなのに、地球上の50〜90%の生物が生息するといわれるほど、豊かな生物多様性を保持
しています。
ボルネオゾウが植林に入り込みアブラヤシを食べるので害獣扱ひされ、ワナにかかつて怪我をする子ゾウも増えてゐる。森林が
伐採され一本だけ残つた樹木に親とはぐれたオランウータンの子がしがみつく写真もある。オランウータンは川に沿つた十二の
地域に分断された。8、11、55、128、213などの個体数である。狭い地域で繁殖すると遺伝子の多様性が失はれ、20~30
年後にこの流域からオランウータンが絶滅のおそれがある。保護区どうしを回廊で結んで多様性を守らう。これがボルネオ保全
トラスト・ジャパン(BCTジャパン)の小冊子である。
十一月十六日(日)その二
案内パンフレット
ボルネオ保全トラスト・ジャパン(ホームページへ)を紹介するA4版二十ページの立派
なパンフレットもある。これによると理事長は坪内俊憲氏。「アフリカに行きたい」一心で獣医になり、ザンビアに赴任。一時企業にも
勤務したがフィリピン、キューバなどで活動ののち2003年にボルネオへ。しかしこの活動では収入が少ないから肩書きは星槎大学
准教授である。59歳で准教授だと肩書きが低いが野生生物と同じで人間も多様性がよい。かう云ふ人は貴重である。
活動は個人の寄付、会費のほか法人の寄付、会費も大きく、法人正
会員名も載つてゐる。ボルネオ支援自販機もある。
十一月十六日(日)その三
長期の問題点
「ボルネオの生物多様性に関わるシンポジウム 登壇者一覧」といふ一枚の紙は、表側が外国人、裏側は日本の関係者である。
ボルネオ保全トラストの活動には短期では心から敬意を表するものである。しかし長期には問題がある。表側のボルネオ参加者を
見て行かう。
最初が保全トラスト議長でサバ州生まれ。イーストロンドン大学(イギリス)卒業後にサバ州土地調査局を経て
政治家。マレーシアにも大学はあるがイギリスに留学したところが気に掛かる。
二番目の登壇者は名前から欧米人かも知れ
ない。シドニー大学(オーストラリア)卒業後、スイス企業のアジア太平洋部門でM&Aなどに従事、その後マレーシアを拠点に世界
規模でパーム油、ゴムなどの企業の経営に参画。
三番目は保全トラスト理事でマレーシアパーム油評議会副CEO。
四番目はサバ州生まれ、南イリノイ大学で博士号取得。サバ州野生生物局などに勤務。
サバ州生まれは二人だけでどちらも欧米の大学卒。残りの二人は経営側。勿論欧米の大学を卒業することが欧米かぶれの人を
除けば悪いとは言へない。経営側の人間でも一人は保全トラスト理事だから環境保全に熱心である。
短期にはこの構成でよいが、長期には西洋近代文明への批判が必要である。トラストの活躍で回廊が完成したとする。しかし地球
温暖化はますます進む。気候が大きく変動し熱帯雨が降らなくなるかも知れない。新たな障碍も次々に起こるだらう。長期には化石
燃料の使用を停止し、パーム油の使用も停止し、人類は循環社会に戻るしかない。これはそれほど大変なことではない。昭和三十年
代の日本はまだ循環社会だつた。発電はほとんど水力に依存し、暖房は炭を利用し炊飯や風呂は薪を用いた。このシンポジウムの
人員だとそこまで帰れない。(完)
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