五百七十一、管理部門は収益部門の妨害をしてはいけない

平成二十六甲午
五月十四日(水)「収益に貢献する管理部門」
管理部門は収益部門の生産性向上に役立たなくてはいけない。ところがとかく収益部門で役立たなくなつた人を管理部門に回し、それでゐてその人はプライドが高いから権威的に収益部門を管理するようになる。昨年そのような記事が日経BPか何かに載つてゐた。これはいけない。生産性向上に役立つ管理をすべきだ。
私がプロジェクト管理部門に配属されたのは三年ほど前だらうか。我々が口を出すことで収益部門はプロジェクト管理の書類作成など手間が掛かるからその時間分、私が仕事を手伝ふ、例へばバッチ(自働一括)処理システムの作成だとかどこかのモジュール作成だとか文書作成だとかである。そんな提案を部内でしたものの採用されなかつた。
私が八年ほど前に総務部に配属されたときは、収益に貢献する事務部門を提案したが同じく提案は採用されることはなかつた。

五月十七日(土)「管理部門の生産性」
管理部門が生産性を上げると人が余る。会社が不景気になつたときリストラを誘発する。だから管理部門は生産性向上に無関心である。私が今までで一番高速に仕事をしたのは今年三月でXPが期限切れになつたときである。まづ所属部署別に技術者と使用PC、OSの一覧表が必要である。或る部長が一覧表を作るには手間が掛かるから他の人は手伝つてほしいといふから、表なら既に完成させましたと答へた。これから作りますが一人で大丈夫ですと答へても大したものである。しかしさうではなく既に完成してゐた。その秘訣は次の手順である。
まづ百五十人ほどにメールで使用機種とOSを尋ねた。メールの回答と送信者の名前をExcelに貼り付けた。名前は姓と名の間に空白が入つたり入らなかつたり姓だけだつたり書式がばらばらである。しかし気にせずそのまま貼り付けて最初の二文字で従業員一覧表と対応させた。同姓の人や姓が一文字でエラーを起こす人が一割出ても手入力で直せばよい。次に従業員一覧表から自働引用する所属部署で並び替える。一時間で表は完成してゐた。

だから管理部門は工夫すれば生産性を向上できる。しかしそれでは自分の時間が余つてしまひリストラ対象になる。だから余つた時間で収益向上もやらう。これが収益に貢献する管理部門の骨子である。

五月二十一日(水)「完全を求めてはいけない」
私がこれほど高い生産性で仕事を出来た理由は完全を求めなかつたからである。もし完全自働で社員テーブルと照合するとなると、空白、苗字のみ、後方に読み仮名やローマ字、エラー対応などをすべてプログラムで対処するのでプログラム作成に他の仕事の合間に行なふから二週間は掛かつたであらう。逆にすべて手入力でやると同じく二か月は掛かる。全自動と全手入力の中間でやれば九割は自働、一割は手動で作業したから一時間で終了した。

五月二十五日(日)「官僚主義の人間が出てくる理由」
役所は融通が利かない代はりに規則をきちんと守る。世間ではさう信じられてゐるが実態は異なる。規則が自分に都合のよい場合は規則を声高に叫ぶが、自分に都合が悪い場合は抜け穴を活用する。
このような官僚主義を生む理由は役所には目的がない。企業は収益を上げないと倒産するし、倒産しなくても給料が上がらなかつたりボーナスが少なくなる。だから全ての従業員は無意識のうちに収益を上げる努力をする。これは人間に本来備わる感性と一致する。だから企業は上層部がよほど悪くない限り存続できる。
役所はどうか。倒産の心配がないから目的がない。今から三年前にうちの子の県立高校で校長が進学校を目指すといふような挨拶をPTAの運営委員会で話した。なかにはそんなことしなくてよいみたいな委員もゐた。私はこのときホームページ委員会の委員長だつたので「先ほどの校長先生のお話は賛成です」と発言したことがある。
進学校を目指すことは子供にとつてよいことだが私の発言の目的はそこではない。目的のない組織は駄目になるからである。日本航空で似た話がある。安全だのサービスだのといふのは目的に見えるが口先だけである。再建のため稲盛氏が来て収益のためといふ目的を従業員に教へた。或る従業員の、仕事がこんなに面白いとは知らなかつたといふ感想を何かで読んだことがある。

五月二十八日(水)「取締役会は管理部門になつてはいけない」
成果主義のよくない理由は責任を下に丸投げすることだ。下手に上から指示を出すと成果が上がらなかつたときに指示の適正さが問題になるからますます何も言はず丸投げするようになる。
或る食品メーカーは利益率が1%だつた。地域ごとに権限を移譲し成績を上げれば厚遇するし、成績を出さなければそれ相応の待遇にする。それで利益率が10%になつた。そのような記事を読んだことがある。初めて一族以外から社長に就任し収益率を上げるために工場の稼働率を上げる、じゃがいもを仕入れるとき安ければどんどん購入するなど他にも改革をしたのだが記事だと権限委譲が強調されてゐた。もし権限委譲が改革の中心だとすると社長はやることがなくなる。
社長或いは取締役会は下部丸投げ機関になつてはいけない。それでは取締役会の管理部門化である。適切な指示を出して下部組織が成績を出す。すべての結果に責任を持つ。さういふ取締役会にならなくてはいけない。(完)


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