五百三、東京媽祖廟參拜記


平成25年
十一月十四日(木)「大久保の新名所」
先日大久保驛の近くで偶然媽祖の庭園を見つけた。隣にはビルがあり一階は媽祖廟の樣相である。早速入つて受附でお話を伺ひ二階、三階、四階を參拜した。先日の上海旅行のときに始めて見た小さな坐布團の附いた三拜用の椅子が各階にもあつた。二階は臺灣北港朝天宮の分靈の媽祖樣、三階は中國泉州天后宮の分靈の媽祖樣と關帝、四階は觀音樣と準提菩薩と孔雀明王菩薩が祭られてゐる。
ここは在日臺灣系の人たちが建立した。昭和二十年代の日本人の傾向は中共と國府についてはやや中共支持が多かつた。狹量蒋介石の腐敗國民黨よりは三大紀律八項注意の共産黨のはうがよい。しかしこれは昔の話である。その後の文化大革命の失敗と資本経済化で評判を下げた。私は中國政府と台灣政府に就いては中立である。少數なのに頑張る臺灣は偉いが中國と對抗するため親米になつてはいけない。

十一月十七日(日)「台湾新聞」
東京媽祖廟の落慶式典の記事が載つてゐる台灣新聞十一月四日號を戴いた。一面の先頭は
留日華僑の悲願であった東京媽祖廟が新宿区大久保駅前に完成し、10月13日、安座式典&祝賀会が盛大に開催された。
で始まり、
媽祖は航海や漁業の守護神として中国沿海部福建省や潮州を中心に、台湾ではとくに篤く信仰されている道教の女神。
と解説も載つてゐる。式典の出席者は東京媽祖廟會長、台北駐日經濟文化代表、五名の立法委員などである。建設には五億圓の費用を要し既存のビルを改築して作られた。
祝賀會には日本側からは日華議員懇談會平沼赳夫會長、西田順三參議院議員が參加とある。西田順三といふ參議院議員はゐないから西田昌司氏か山本順三氏、あるいは兩方の間違ひかも知れない。かつて日本の保守派は親台灣だつた。ところが平成年間に入る邊りから拜米が多くなつた。親台灣はよいが拜米は駄目である。それは文化を破壞するからである。

十一月十七日(日)その二「中國の宗教」
受附の女性は日本人で青森縣大間町の媽祖を祭つた神社を參詣したお話を伺つた。そのとき私は大間といふ知名を知らなかつた。調べると下北半島の尖端で本州最北端である。三百十七年前に水戸藩から媽祖を遷坐したさうだ。
私が媽祖を道教の神と表現したところ逆に質問されたので、中國の宗教は儒教、道教、佛教で、道教は日本の神道に當ると説明した。この説明は書籍で讀んだものではない。私が中國に滯在(といつても今までに香港三囘、臺灣一囘、北京一囘、大連一囘、上海一囘の計二十五日程度)して直に感じたことである。日本の神道は上坐部佛教國の神にも似てゐる。これは今囘は關係しないので言はなかつたが。
道教と神道が似るだけではない。中國の儒教、道教、佛教の關係は、日本の儒教、道教、佛教の關係とそつくりである。

十一月十八日(月)「旅劵の入出國印」
私の旅劵は三年間に四囘出國した。一囘目はタイ、二囘目は大連、三囘目はベトナム、四囘目は上海である。ところが中華民國の入出印が一組押されてゐる。臺灣に行かないのに印があるのはなぜかといふとタイに旅行のとき中華航空を利用した。歸路は航空會社の都合で臺北に一泊となつた。夕方着いて朝二時くらゐに起床である。ホテルは空港のすぐ隣で中華航空の乘務員宿泊所の向ひ、その隣には中華航空の事務所もある。この區劃からは車がないと外に出られない。廻りは航空會社だらけである。臺北市内までの無料バスや路線バスもあつたが朝が早いので行かなかつた。

十一月二十日(水)「台北空港」
台北空港では此の便の乘客以外は居ないし殆どの人が登場口近くに椅子で待つたから私一人だけで廣い空港内を貸し切り状態で見學した。台北空港は世界でも有數の評判の高い空港である。確かに原住民の紹介三つの宗教の祈祷室展示販賣コーナー體驗コーナーと充實してゐた。

中國と台灣に分かれてゐることは中國に取り大きな利點となる。互ひに相手の優れた點を取り込むことができるからだ。しかし中國は台灣からあまり學ばないやうに思へる。それが空港の差になつた。
台灣にも問題點はある。中華航空は日本ではチャイナエアラインを自稱する。かつては中華航空を名乘つてゐた。十九年前に日本で航空事故を起こしてそれ以降名稱を變へたのかも知れない。しかし日本、台灣、中國の共通點はまづ漢字である。中華航空のはうがよい。
チャイナエアラインに見られるやうに台灣で心配なのは、中國に對抗するあまり親米になることである。日本では拜米の連中がさかんに自由と民主主義といふ價値觀と愚かな主張をすることがある。しかしこれは正しくない。台灣は蒋介石とその息子の時代は獨裁だつたからだ。日本と台灣と中國はアジアの文化に基づいて共通の價値觀を持つことで親善を深めるべきだ。(完)


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