三百九十六、労働組合と弁護士の役割


平成25年
四月十四日(日)「労働組合と弁護士」
昨日の労働争議検討会で、労働組合と弁護士の役割についての話がでた。たまたまある組合員が弁護士に相談に行き組合は脱退すると言ひ出した。その後、考へが変つて組合に戻つてきた。その件についての討議の中でのことである。この組合員は昨年末に解雇された。労働組合より弁護士に頼んだほうが速く解決するのではないか。一時的にさう考へたとしても無理はない。
弁護士の対応は裁判である。労働組合は団体交渉、抗議行動、ストライキ、労働委員会、裁判である。たまたま私が5年以上前に別の執行委員に話したことと同じ内容が昨日出た。私は5年前「労働運動は判例と異なる要求ができるし通すこともできる」といふものである。そのとき別の執行委員が「しかし裁判になつたとき判例通りではないと負けてしまふ」と言つた。それはそのとおりである。しかし裁判以外の方法では判例とは異なる結論を出せることもある。

四月十五日(月)「異なる結論をなかなか出せない理由」
異なる結論を出せるとは言つても、実際には出せないことが多い。しかしその可能性を信じて活動するところに意義がある。国労などへの不当労働行為も、職場復帰はならなかつたが解決金を勝ち取つた。職場復帰も実際は無理だと誰もが思つたが、政府がJR各社に要請した。
裁判の場合は最高裁で判決が出たら永久に覆せない。労働運動ではその可能性があるところに特長がある。

四月十六日(火)「少数派組合の存在意義」
組合に多数が終結しなくても出来るとなると、会社の経営が正常ではなくなるほど労働運動をするか、会社の利益を増やして労働側の配分を増やすかどちらかに行き着く。かつての総評運動は前者だつたが民間が次々に脱落した。
しかし後者の運動をしてはいけない。会社の利益を増やすためには電力総連や電機連合のような非正規雇用や下請けの犠牲の上に自分たちだけいい思ひをしようといふ醜い運動になつてしまふ。
ここに少数派労組の意義がある。ユニオンシヨツプは古い。組合費天引きも古い。企業別労組は更に古い。一つの企業内で多数の少数派組合が協力し多数を目指すのがよい。中小企業はこれまでに何回も人減らしがあつた。多数派労組を結成してそれをなくすといふ考へも成り立つが実施は容易ではない。労組に言はれなくても利益を向上させる方法は会社も考へるはずだ。また労組が利益向上を目指させると電力総連や電機連合みたいになつてしまふ。一社一人でもよいからすべての企業に労組を作る。その上で全労組が終結して中小対策を立てる。少数派組合こそ中小企業には似合ふ。否、大手にも似合ふ。

四月十七日(水)「中小企業の多数派組合」
或る現業職場で会社から賃下げ提案があつた。あつといふ間に労組に多数が加入した。合同労組には珍しい多数派支部だから歓迎すべきである。賃下げを撤回させこれまでの差額も取り戻した。しかし会社から事業所閉鎖の提案があつた。
組合潰しではないか。最も疑はれるが組合潰しではなかつた。赤字で採算が合はないから閉鎖するといふ。現業職は退職金が割り増しになるなら受け入れてもよいといふ人が多数出た。
これが企業別労働組合の行き着く先である。昨日述べたように徹底的に労働運動をして会社の経営を傾けるか、或いは電力総連や電機連合のようにみにくい圧力団体になるしかない。

四月十八日(木)「第二組合」
多数になつたとき会社の対抗手段として強力なのは第二組合である。組合作りの専門家でも、第二組合を作られたらどうしようもないといふ。人間誰もが自分だけは出世したいといふ欲望がある。そこに会社推薦の組合ができた。第一組合から雪崩を打つように第二組合に移つてしまふ。
尤も第一組合にも対抗手段がある。活動を止めると第二組合は解散することが多い。中には解散のあと元役員と会社側が不仲になつたり元役員どうしが醜い争ひになることがある。

四月二十日(土)「組合の条件」
組合とは組合員を独自に集めることである。このように定義することができる。だからユニオンシヨツプは組合ではない。会社が集めた正規雇用者が自動的に組合員となるからである。いはば会社の付属物、第二人事部である。そんな連中がシロアリ民主党に圧力を掛け、ニセ経営者団体連合会と会合を持ち、挙句は自民党とまで会合を持つ。
彼らは自分たちに不利にならないよう要求するから、そのしわ寄せが中小、個人商店に来る。総評の末期からその繰り返しである。
例として労働者派遣法がある。総評末期の隠しベアが問題になつた時期に電機労連(現、電機連合)が社会党に圧力を掛けた。当時のIT業界は偽装請負だらけだつたが、この法律で派遣労働に誘導し保護するといふ名目である。しかしそれから二十年近く偽装請負はなくならなかつた。ところが製造業の偽装請負が問題になり、五年ほど前に偽装請負から派遣に変更する大手が増へた。ところが派遣従業員に秋葉原無差別殺人事件みたいなことを起こされると困る。その後は製造業では有期雇用が流行るようになつた。IT業界ではどこの下請け会社も特定派遣登録をするようになつた。しかし相変らず偽装請負は多い。

ユニオンシヨツプの禁止、組合費天引きの禁止、企業内労組の禁止。これらを実施すべきだ。これでゆがんだ日本経済を立て直すことができる。(完)


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