三百八十三、JR東海会長葛西の暴論を許すな


平成25年
三月十四日(木)「葛西の暴論は日本を亡国に導く」
これまで何回も述べてきたが、日米安保条約が防衛問題に留まる限り反対はしない。しかし十数年前に朝日新聞論説委員の船橋洋一が突然「英語公用語」といふ本を出した。それまで私はNHKラヂオの「やさしいビジネス英会話」などを毎週聞いていた。これ以降も英語の学習は続けたが英語に対して厳しい目を向け始めた。そんなとき小渕政権の首相私的懇談会が英語第二公用語を打ち出した。その後、船橋はアメリカの大学教授か朝日新聞幹部の道が用意されるだらうと予想する人がゐて、事実、朝日新聞は主筆といふ社長に並ぶ役職を何十年かぶりに復活させ船橋を任命した。
その朝日新聞や船橋と同等の暴論を吐く人がゐる。JR東海会長葛西氏である。

三月十八日(月)「アジア、欧州といふ地理を破壊する葛西氏」
「ああ、東は東、西は西、このふたつ相会うことのなかるまじ」。高校の倫理社会の教科書の章の冒頭にキップリングの詩が書かれてゐた。確かに欧州とアジアでは大きく異なる。もちろん欧州でもイギリスとドイツとフランスでは違ふし、アジアでも日本と中国と韓国とタイでは異なる。しかし東と西の相違はそれらとは桁違ひに大きい。そして欧州やアジアと大きく異なるのがアメリカである。欧州とアメリカは似てゐると思はれがちだが実際はまつたく異なる。私はアメリカに十ヶ月、ドイツに一ヶ月出張で滞在してそのことがよく判つた。ドイツに滞在中オランダにも一泊したが、ドイツとオランダはどちらも低地ドイツ語圏なのにやはり国柄はまつたく異なつてゐた。しかし欧州内がどれほど違つてゐても、欧州は人間が昔から住んできた土地、アメリカは先住民と野生生物から奪った土地。今でも性質がまつたく異なる。
その大昔から続く国どうしの交流を経て作られた文化を無視するのが葛西である。
かつての大西洋を挟んでの米・英対、欧州プレイヤーである仏・独・ロシアという図式から、21世紀の世界は、太平洋を挟んでの海洋同盟(TPP)対、大陸プレイヤーである中国・ロシア・インドという図式になると思っています。
TPPは、太平洋における民主主義・自由主義・海洋国家連携への動きだと見ていいでしょう。


だとすれば日本は絶対にTPPに加盟してはいけない。癌細胞国家である米国を英国と同じ陣営に入れることは間違ひだし、英国をフランス、ドイツを分断することも間違ひである。TPPも同じである。悪性腫瘍の米国を良性腫瘍のオーストラリア、ニユージーランドと同じ陣営に入れるのは間違ひだし、これら腫瘍国家を正常細胞国家のベトナム、マレーシアなどと同等に扱ふことは間違ひである。

三月二十一日(木)「リニア新幹線を作つてはいけない」
葛西氏はリニア新幹線について次のように語つた。
我々のプロジェクトは、東海道新幹線のバイパスを作ることです。一元経営し、初年度から黒字を出すという前提です。民営企業ですから、完成後、一時的にでも赤字になることは許されませんからね。


民営企業は一時的にでも赤字になつてはいけないのか。そんな新規事業はない。最初は赤字、だんだん単年度黒字になり、累積赤字を一掃する。葛西のいふことは要するに現状の東海道新幹線の厖大な黒字を流用しようとするだけだ。
平成三十九年に東京から名古屋まで建設するが、東京と名古屋は今でもシェアが100%である。つまり建設してもシェアは増へない。JR東海は名古屋以西のシェアも向上すると皮算用を弾くが、リニアから新幹線への乗り換へは不便だからシエアは増へないだらう。JR東海はエスカレータ等の動線を工夫することにより、負担感のない円滑な乗り継ぎの確保に努めるといふが、リニアと新幹線がホームの対面に乗り入れるようにしない限り無理である。
葛西氏の発言で問題なのはそのことより
東京~大阪間が1時間、東京~名古屋間が40分で移動できるようになるわけですから、当然、日本人の生活スタイルを変える契機になる。沿線地域の人々の生活に留まらず、接続する山陽地域にまでその効果は敷衍されるでしょう。地域のポテンシャルが上がり、開発可能性も高まる。


今や電子メール、特にファイル添付の普及で出張の必要性は激減した。会議システムも同様である。東京と大阪が一時間で結ばれても運賃が安くならない限り生活スタイルは変らない。それより今でさへ東海道沿線に集中する経済がますます集中し、日本列島の大部分の地域は寂れる。

三月二十三日(土)「規制に守られた葛西が規制緩和を主張する矛盾」
規制について葛西氏は次のように主張する。
日本経済が成長するうえで、規制緩和がもう一段必要になると思います。ただ自民党内で「族議員」が復活しており、抵抗が出る部分もあるように感じられます。


東海道は江戸時代から交通の要所である。それは今でも変らない。つまり競争相手がないとどんな人間でも東京大阪間の鉄道会社社長が務まる。勿論鉄道以外の交通機関もある。かつて航空機の往復割引は新幹線より安かつた。その後、往復割引は廃止になつた。私もそれまでは往復割引をよく利用したが、その後は航空機には載らなくなつた。たとへ往復割引があつたとしても輸送可能人員の関係から航空機は必ずしも新幹線の競合ではない。
日本の産業の中で最も規制された鉄道産業の会社会長が規制緩和が必要だと主張する。実に非常識だ。しかも葛西氏は国鉄時代に貨物課長として何の役にも立たなかつたではないか。だいたいJR東日本の地域内である東京から小田原までの新幹線がJR東海なのは不自然だ。つまりJR東海は規制以外にその数倍或いは数十倍の恩恵まで受けてゐる。リニア新幹線を作つてもよい唯一の条件は新幹線とリニアは完全に別の会社に経営させ競合させることだ。それが規制緩和である。

三月二十七日(水)「二つの問題発言」
葛西氏の次の発言は絶対に許し難い。
労働基準監督署は、日本企業の生産性や競争力を全く考慮していないのではないでしょうか。もしくは、ホワイトカラーとブルーカラーの働く目的や動機の差異について理解していない。この点を直さない限り、日本企業の競争力は失われたままでしょうね。


これは重大発言である。労働基準監督署は労働基準法と労働安全衛生法を民間企業が守つてゐるかだうかを監督する重要な役所である。「日本企業の生産性や競争力」を守るために存在するのではない。
次に「ホワイトカラーとブルーカラーの働く目的や動機」といふが、葛西氏が国鉄に入社したときの目的や動機は既に明らかにされてゐる。それを蒸し返して葛西氏の国鉄入社動機について日本の労使全体を巻き込む議論にしたほうがよいのか。私はそのほうが今後の日本のためにはよいと思ふ。

三月三十日(土)「公費と怪しげな奨学金の留学は中止しろ」
葛西氏は国鉄時代にアメリカに留学した。そして帰国後は拝米言辞を繰り返すことになる。国民の税金で留学しながら拝米とは許し難い。葛西氏は帰国後に静岡鉄道管理局の貨物課長や労務課長をやるが、そのとき留学経験は何か生かしたのか。留学とは日本が劣つて海外は優れてゐる或る分野を学ぶことだ。帰国後に何の役にも立たず政治発言をするだけなら掛かつた費用を国に返還してからにすべきだ。
公費の留学やアメリカの怪しげな奨学金の留学は、帰国後に拝米反日になるだけだ。反日とは反社会である。ここは日本なのだから。公費と怪しげな奨学金の留学は中止すべきだ。(完)


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