三百七十九、子供の卒業式


平成25年
三月二日(土)「五回目の卒業式」
上の子供の高校の卒業式があつた。今までに上と下の子供の小学校、中学校の卒業式があつたから、これで五回目である。学校長の話は、原子炉の事故や原爆など科学の発展とともに危機も増へたといふ内容で、まつたく同感である。卒業生に地球の危機を救ふように託したように思へた。

今回を除いた過去の四回の中で一番印象に残つてゐるのは小学校の卒業式である。学校長は伊能忠敬の話をした。婿養子に入つた商家を立て直し、五十歳で長男に経営を譲り日本を測量して地図を作つた。佐原といふ農村地帯、水郷地帯の光景とともに今でも脳裏に焼きついてゐる。

三月三日(日)「四回目の卒業式」
昨年は下の子供の中学の卒業式があつた。担任が生徒一人ひとりの名前を読み上げ壇上に上がる。或る担任はマイクなしで読み上げ体育館中に響いてよかつた。このように少し他と異なつたことをするのはよいことである。
或る生徒が表彰状を受け取つた後、戻るときに観客席側に向かひ大声で挨拶した。これも珍しい行為でよかつたと言ひたいが、担任の読み上げる次の生徒の名前が目立たなくなつた。昨年はさう思つた。
今回の高校の卒業式は、担任が一人ひとりの名前を読み上げた後、代表が一人壇上に上がる。このとき半分くらいのクラスが大声で観客席側に挨拶して戻つた。式の厳粛さを損なはないならそれもよいことだと思ふ。しかし各クラスが同じことを繰り返すと独自性はまつたくない。壇上に上がるのは各クラス一名だから昨年の中学のときみたいに次の生徒の名前と重ならないからそれはよい。それより昨年中学の卒業式のとき一人だけさういふ生徒がゐたがあれは高校の真似で独創性があつた訳ではなかつたと気がついた。

三月五日(火)「同じことの繰り返しを避ける」
多数の人が同じことの繰り返しのときに多少変化をさせるのは、全体の雰囲気を損なはない範囲であれば悪くはない。しかしその内容を考へるのは難しいから他と同じにするのが一番無難ではある。
私が最近やつたのは、昨年五月のPTAの各委員会の全委員七十人くらいが出席する新旧連絡会で、全員が自己紹介のとき名前だけ順番に言ふので、私の番のときに、授業の効率を二倍にする方法があり1分間で説明します、と言つて話した。
この話のどこが面白いかといふと、学校長が説明をしたなら普通である。PTA各委員は「あ、こんどの校長先生はすごい」と思ふだらう。新たに赴任しPTA担当になつた先生が言つても「お、今度来た先生はすごい」となるだらう。保護者側が学校長、副校長、教頭、PTA担当教師のゐるところでいふから面白さがある。因みに私の話した内容は
授業の最初に前回の授業の復習を2分で話し、授業の終はりに今日やつた内容を2分で話す。教科書は階層的、ハイアラーキーに作られてゐるが1時限の授業は必ずしも階層にはならない。前回の復習と今回の復習を前後に入れることで階層になるし、授業の最後に復習にまとめられる内容にしようとすることで内容自体も階層になる。
このような内容であつた。

三月七日(木)「国歌斉唱」
入学式も卒業式と同じく五回出席した。或いは一回くらい出ることができなかつたかも知れない。入学式で一番驚いたことは、下の子供の中学の入学式だと思ふが、国歌斉唱のとき或る父親が「ええ?、君が代を歌ふのかよ」と独り言を言つた。その人はその後も貧乏ゆすりをしたりきよろきよろしたりしてゐた。
もちろん君が代は明治維新ののちに作られた歴史の浅いものだから、歌はなくても問題はない。しかし歌ひたくない人は別の理由による。かつての米ソ冷戦時代に米軍存在下の日本は独立国ではないといふのであれば、私もその意見に反対ではない。しかし冷戦終結後に反対する人は、日本が過去に侵略戦争を起こしたから歌はないといふものでそれ自体は正しいが、歌はない代はりに拝米や拝英になることに反対である。野田のチヤーチル猿真似ネバー、ネバー、ネバー、ネバー、ギブアツプと同じである。
日本を含め列強が植民地の獲得や現状維持を狙つて醜い帝国主義戦争をした。しかも戦後はアメリカ文化の押し付けで日本社会は不安定が続いた。そのことを理解すれば、歌つたほうがよい。

三月八日(金)「伊能忠敬」
かつて多くの小学校に二宮金治郎の銅像があつたが、今はほとんど撤去されてしまつた。歩きながら本を読むと危ないからださうだ。
日本の過去の偉人で、地位のある人ではなく、江戸時代またはそれ以前の人で社会に貢献した。そのような人を取り上げるといつまでも参列者の印象に残る。伊能忠敬はその代表例である。
外国人を取り上げたのでは駄目である。聴くほうも外国人だから自分にはできないと話半分に聞いてしまふ。
道徳の授業を復活させるときは、過去の偉人を次々に取り上げるとよい。国語や社会の教科書に取り入れれば、一石二鳥で授業時間数の節約にもなる。(完)


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