三百十、日本弁護士連合会のシンポジウム「改正労働契約法を考える-有期労働契約の行方-」

平成24年
10月25日(木)「シンポジウム」
昨夜、日比谷コンベンションホール(旧日比谷図書館地下)で、日弁連主催の「改正労働契約法を考える-有期労働契約の行方」があり参加した。小さなホールなので参加は200名。たぶん弁護士、企業の労務、労働組合が1/3づつではなかつたかと思ふ。
司会は日弁連の労働法制委員会副委員長、開会の辞は日弁連の副会長、第一部の講演は我々の組合とも馴染みの深い棗弁護士だつた。

10月27日(土)「パネルデイスカツシヨン」
第一部が終了の後にアンケートを回収した。提出したのは15人ほどだらうか。私は、連合は大企業の正社員ばかりで有期雇用者が少ないのだから、審議会は全労連、全労協も参加させるべきだつたと書いた。
第二部はパネルデイスカツシヨンで、コーデイネータが東洋大教授、パネリストは労働側が労働弁護団幹事長の水口洋介氏と新谷連合総合労働局長、経営側は第一東京弁護士会副会長の木下潮音氏と田中経団連労働法制本部長であつた。
私のアンケートが効いたのか連合総合労働局長の話は、入口規制を主張したが労政審で押し切られたと連合はいふべきことは言つたといふ内容だつた。

10月28日(日)「総労働対総資本」
今回のシンポジウムでよかつたのは、総労働対総資本の形になつたことだ。それもそのはずで、労働弁護団は昭和32年に総評弁護団として結成された。平成元年に総評が解散したため日本労働弁護団と改称し現在に至る。

一方の経営側木下弁護士の発言で一番問題なのは、労働条件は職務内容だけではなく、勤続、家族構成なども影響する、解雇の容易さは日立メディコ事件にあるように採用手続きの複雑さに関係するといふ部分である。
まづ給料が勤続年数に影響するといふことになると、労働側は絶対に会社都合による解雇は認めてはいけないことになる。なぜなら労働側が不利になるからである。今後日本では整理解雇は認めず倒産が続出することになるがそれでよいのか。
家族構成が影響するのはよいことだ。独身者と子どものゐる家庭では掛かる費用が大きく異なるからだ。しかし成果主義などと称して家族手当の相対比率を低下させてきたのが経営側ではないか。経団連は家族手当の重要性を今後国内に広めるつもりなのか。さうではないのなら木下弁護士とはきつぱり手を切るべきだ。
採用手続きが複雑かどうかは経営側の一方的な都合だ。そもそも今の法律体系は労働の対価としての賃金しか保障してゐない。労災や妊婦などを除けば、唯一あるのは解雇の場合は30日前に予告しなくてはいけないといふことだけだつた。その後、被解雇者と総評弁護団の尽力で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」を勝ち取つた。これが10年ほど前に労働基準法に追加され、後に労働契約法に移された。
しかしこの規定は判例そのものだから法制化で進歩した訳ではない。だから労働基準監督署や職業安定所の行政は従来のままである。つまり解雇による不利益はまつたく考慮されてゐない。

11月2日(金)「弁護士は弱者の味方に」
日立メデイコ事件について言へば、期間2ケ月の労働契約を5回更新ののち不況に伴ふ業務上の都合を理由に更新を拒絶された。臨時員90名のうち解雇の直前まで雇用が継続した者は本人を含む14名だつた。柏工場は臨時員は比較的簡単な業務をさせ本人も例外ではなかつた。木下弁護士は日立メディコ事件を錦の御旗のように掲げるが、これら特殊な事情を踏まへて言つてゐるのか。

閉会の辞は日弁連労働法制委員会委員長の林紀子氏であつた。弁護士は社会をよくしようとする職業だといふことが判る内容であつた。弱者の味方が弁護士である。強者の味方は弁護士になつてはいけない。或いは会社の顧問弁護士は正しく法を守るよう指導すべきだ。今は弁護士が特権資格になつてゐる。弁護士は社会経験、正義感などによつて選抜し、あとの法律知識はその後の経験で1級から10級くらいまで分類し昇進させるべきだ。海外の猿真似で資格を作つてはいけない。(完)


メニューへ戻る 前へ 次へ