三百七、10.13さようなら原発集會

平成24年
10月13日(土)「労組が集結した市民の原発集会」
日比谷野外音楽堂で10.13さようなら原発集会が開催された。主催は「さようなら原発」1千万署名市民の会といふ団体である。呼びかけ人にも登壇者にも労組関係者の名前はなかつた。唯一、鎌田慧氏が労組側言論人として呼びかけ人と登壇者に含まれてゐた。鎌田氏は五年ほど前に参議院議員会館で派遣法改定要求集会で発言された。他の参加者が派遣法改正を主張する中で唯一派遣禁止を主張された。私も派遣禁止が持論だから鎌田氏は今でも印象に残つてゐる。
市民団体が主催ではあるが事務局が連合会館にあるなど労働組合の影が背後に大きい。会場は座席の入口に「労働組合」「平和フォーラム」「市民」と貼り紙があつて三等分されてゐた。しかし参加者のほとんどは労働組合だつた。連合に行つた旧総評系の自治労、日教組がほとんどで、JR総連、私鉄総連の一部単組も参加した。全労協では都労連、全労協全国一般、郵政ユニオンが参加した。
宗教団体では、キリスト者平和ネツト、金光教反戦平和ネツト、日本山妙法寺が参加した。キリスト者平和ネツトでは「キリスト者平和ネツト」といふ旗のすぐ隣に「原発の廃止を カトリック教会」といふ旗もあつた。日本山妙法寺は坊主3名信徒10名くらいが題目を書いた旗や題目を書いたうちわ太鼓を持つた。私は日本山妙法寺は嫌いである。金光教は中立である。カトリツクは好きである。プロテスタントは中立である。宗教は時代を経なくてはいけない。しかし時間とともに堕落する。両面を見る必要がある。

参加団体についてなぜ詳しいかといふと私は組合旗を持つて来なかつたからデモには参加しなかつた。日比谷公園出口でデモ参加全団体を見守つた。組合旗がなくてもデモに参加してもよいが、本来入るべき全労協全国一般と同じ隊列に、一昨年分裂したときの単産がゐる。互いに無視するだけだがせつかくのデモだから向かう側も心置きなく参加してほしいと思ひ遠慮した。下町ユニオンがずつと前の隊列だからそこに入れてもらふ方法もあるが既に出発してしまつた。たまにはデモを外から観察するのもよい経験である。

10月14日(日)「国会デモとの相違」
国会デモは国民感覚に合つたからあれだけ参加者が増へた。国会デモに参加しようとして主催者側に断られた人のブログを前に読んだ。「君が代、日の丸反対」といふ旗を持つて参加しようとして「原発に関係のない旗は掲げないでください」と言はれ、近くの人がこれを付けたらと原発反対のリボンを渡されそれを旗に付けて参加した。日章旗を掲げた団体もゐるのになぜ駄目なのか、とその人は不満を書いてゐた。
これは主催者側が正しい。「君が代、日の丸反対」は朝日新聞のような偽善の臭いが漂ふ。平和は尊い。平和を壊す連中がゐるとすればそれは朝日新聞のような偽善の連中である。狼少年と同じで国民は「またか」とうんざりする。そこを拝米派に狙われ米軍の戦争に加担する。
呼びかけ人に落合恵子、大江建三郎の名があり偽善の臭ひがするが、鎌田慧氏と城南信金理事長吉原毅氏が登壇するので参加することにした。このことは重要である。落合恵子、大江建三郎は国民派ではない。鎌田慧氏は左翼、吉原毅氏は財界といふのがこれまでの朝日新聞の植へつけた感覚だが、鎌田慧氏や吉原毅氏こそ国民派である。

10月14日(日)その二「IMF反対デモに少しだけ参加」
開会直前に外でお祭り騒ぎの音がした。野外音楽堂を出て急ぐとドラムや笛など鳴り物入りのIMF・世銀東京総会反対のデモ隊だつた。国会デモのときも来てゐて鳴り物入りなので警察がトラツク付きで周りを固めた。
日比谷公園での解散のところだけ私も参加した。これから原発反対デモに参加するが、野外音楽堂には入らず外で待機するといふ挨拶があつた。急いで野外音楽堂に戻り鎌田氏の挨拶の最後の部分だけ聴いた。政治にたよつてはいけないといふ熱のこもつた挨拶だつた。
落合恵子は欠席でメッセージが代読された。大江建三郎の挨拶もさうだが中身のないきれいな言葉を並べただけだつた。城南信金理事長吉原毅氏の閉会の挨拶は中身が充実してゐてよかつた。信金は中小企業の味方だといふことと、商工会議所の会頭が経団連、経済同友会の会長とともに原発賛成を発言したが会員に意見を聞かず事務局が勝手に作つた、日商会頭は東芝会長だから中小企業代表ではないといふ内容が印象に残つた。
鎌田慧氏と吉原毅氏の発言が優れて、落合恵子と大江建三郎が駄目なのかその理由が判つた。鎌田慧氏と吉原毅氏は熱意があるし詳しく勉強してゐる。落合恵子と大江建三郎は熱意がなく何も知らずきれいごとを並べるだけである。日本の平和運動を偽善にしたのはかういふ連中である。
福島からの市民の挨拶はよかつた。特に毎年家に来る昆虫や鳥が激減したといふ話には同感である。私も八月に広野町と楢葉町を訪問して心配になつたことがある。人間は立ち入り禁止区域や除染をして守られる。しかし双葉町、大熊町の野生の動植物は死滅するか突然変異を起こすものが多発するだらう。

10月14日(日)その三「皆が参加できる原発反対運動に、その一」
平和運動は一歩間違へると有害である。一つ目の理由は先日述べたように狼少年になる。二つ目は先の戦争は帝国主義どうしの醜い争ひなのに日本を非難し拝米に加担することである。国粋主義が出てきたときはこれを批判すべきだ。しかし今は拝米が過ぎる。ここで日本を批判すれば拝米が加速する。菅、野田、前原といふ醜い政治屋が出てきたのもアメリカ猿真似が原因である。
そこへ行くと原発反対運動は大変によい。世の中の役に立つからだ。原発を廃止して火力発電所を作れといふ動きになつたときは、地球温暖化を防止するために省エネにすべきだと正しい方向に導くことができる。

10月15日(月)「皆が参加できる原発反対運動に、その二」
デモ隊をすべて見終つて、消費税増税反対と書いたプラカードは1枚だけだつた。見落としがあるかも知れぬ。それを考慮しても数枚だつた。今回の集会は原水禁が主催なので、加盟各単産に連合の意向が働いたのだらう。せつかく主催が市民の会で労組関係者は登壇しないのだからプラカードは単産の意向ではなく労組員の自主性に任せるべきだ。
9条の会の隊列に「売国奴野田、アメリカの言いなり」といふプラカードがあつた。これは優秀作である。別の隊列に「右翼でも左翼でもなく仲翼」といふのもあつた。これも優秀作である。右翼、左翼といふのはフランス議会の話であり、戦後の米ソ対立の話でもある。今は関係がない。
といふことで全デモ隊のなかで感心したプラカードは三枚だつた。

10月16日(火)「日本山妙法寺批判」
日本山妙法寺の坊主3人と信徒約十名がデモに参加してゐた。どんな宗教団体でも反原発を掲げる団体は偉い。だから金光教が来てくれたのには感激した。しかし日本山妙法寺は許せない。この教団は大正六年日本の南満洲鉄道の付属地だつた瀋陽に建立された。
日華事変では南京入城式のときに最前列で入城した。そのくせ戦後は平和運動に参加してきた。朝日新聞と同じで狡い連中である。朝日新聞も戦前はさんざん戦争を煽つた。戦後は平和運動のふりをしながら社会党の骨抜きをはかり、米ソ冷戦終結の後は拝米と新自由主義を進めた。
戦前に戦争に反対したら偉い。戦後にアメリカが日本を破壊するために仕組んだ洗脳を批判したら偉い。日本山妙法寺と朝日新聞は、戦前も戦後も逆をやつた。今もやつてゐる。

10月17日(水)「IMF反対デモ」
IMF・世銀東京総会反対のデモ隊は、集会が終るまで外で待機した。デモが始まると出口の所で鳴り物を鳴らし出発するデモ隊を次々と見送つた。丁度真ん中あたりでデモ隊の一つとして出発した。その後は急に静かになつた。見物の通行人もほとんどゐなくなつた。
日本の社会が不安定なのはアメリカの押し付けたグローバルのせいだ。IMFに反対するのは時機に適つてゐる。

10月20日(土)「偽善者は怠慢なだけだつた」
私は落合恵子と大江建三郎の講演や書籍は読んだ事がない。だから出演すると聞いて嫌な感情を持つたのは、いはば食はず嫌いではある。だが参加してみてやはり落合恵子と大江建三郎の講演は中身がなく退屈なものだつた。つまり食はず嫌ひではあつたが予想通りだつた。
労働組合の集会はいつもさうなのだが雑談が実に多い。何とかしなくてはいけない。私は昔、富士通労組だつたからよく内情を知つてゐるが、大企業労組はユニオンシヨツプでカネの使ひ道に困る。だから集会にでると日当をもらへる。カネ目当てのやる気のない人間がたくさん参加する。
今回は原水禁の主催だから、旧総評官公労系が多く大企業労組は来なかつた。しかし連合は、電機や電力が会長や事務局長を占め消費税増税で自分たちに都合のいいようにシロアリ民主党に圧力を掛けた。そんな連合に所属して改善しようともしない。総評の五項目補強見解はどうなつたのか。
  1. 国民春闘路線の継承
  2. 「反自民」「全野党の協力、共同闘争」
  3. 選別方式は絶対にとらない
  4. 中小企業労組・未組織労働者の援助
  5. 企業主義の克服と社会的責任の重視
このうち2は時代の推移とともに総評自身が取り下げた。残りはなぜ連合に実施させないのか。実施しないなら連合を脱退すべきだ。労働組合は既得権勢力になつてはいけない。労働組合のあり方が問はれてゐる。(完)


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