二千九百六十八(うた)短編物語「江戸時代人材循環復活」
乙巳(西洋地球破壊人歴2025)年
十月二十九日(水)
第一章 末期養子禁止
江戸時代初期は、末期養子禁止だった。これはよく考へると、嫡子がゐるときは世襲を特例で認めるものだ。しかしその結果、浪人が大量に発生した。戦国時代なら、いくらでも仕事はある。しかし江戸時代に入ると新規募集はない。そこで幕府は、末期養子禁止を緩めた。
ここに或る将軍が、上野寛永寺の高僧に訊いたところ、このままだと変化が起きたときに、対応できなくなる。例へば、飢饉や、外国からの大きな軍艦が来た時だと云ふ。まづ、末期養子禁止を復活する。次に普通の相続のときも、引き継ぐのは禄高の半分がよいと云ふ。そして返納された分は、幕府が抱へ込んではいけない。
早速これを実行した。
人材を循環すると その制度合ふ人たちや更にまた学習塾や進学校現れ元の木阿弥も 世襲貴族や武士よりはよし
反歌
人材が真に循環世の中へ戻し黒船心配要らず
第二章 合同藩の誕生
すると、大名やその重臣は、禄高がどんどん減る一方で、旗本や御家人ばかりが多くなった。そして大名、旗本、御家人の差が消滅した。しかし幕府で抱へてはいけないので、旗本御家人は大名として独立させなくてはいけない。そこで、合同藩を奨励した。旗本御家人が集まり藩を作る。殿様は輪番や話し合ひで決める。
次に、農魚民や町民と、武士との差も消滅した。刀は、治安関係者のみが持つことになった。苗字は廃止した。不公平の原因である。同名者を区別する時は、町人なら屋号、農漁村なら地名を使ふことにした。
変化する世の中につき皆努力黒船が来て誰も騒がず
第三章 国司の復活
藩内はうまく行っても、飢饉や火山の噴火に対応できない。次に、合同藩の話し合ひで国司が復活した。名誉職の守や介を廃止し、責任を伴ふ役職である。
さて、合同藩は将軍にあまり敬意を持たない。将軍だけ安泰なのは不公平だと、意見が相次いだ。そこで、将軍は軍事の責任者に特化した。朝廷は、儀式に特化した。
国司会議が国内のすべてを決めるやうになり、これでうまく行くと思はれたが、弊害が現れた。多数派工作や既得権である。まづ多数派工作が禁止された。それを裏付けるものとして、多数決や、さいころや、長老が決めたり、天候で決めるなど、決め方を不確定にした。
第四章 将来
次に、国司と合同藩の殿様は、待遇を責任に釣り合ふ程度とした。これで、上昇志向の人間は出なくなった。上野寛永寺の高僧に訊くと、将来は議会と云ふものが出来て、皆で投票し、そして議員が国司を選ぶ。しかし議員は給金が高い上に、家来が三人付くので、なりたい人が裏金を使ったり政治資金と云ふ名の賄賂を取るさうだ。
さう語った後に、未来を予想してくれる高僧が、残念さうに追加した。将来は妻帯になり、神通力を失ふ。(終)
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