二百八十八、オルグ塾

平成二十四年
七月一日(日)「かつての地区労」
総評が解散したときに多くの地区労が解散を与儀なくされた。中には地域労組として再編されたところもあつた。再編された地域労組と元からあつた地域労組が集まり全国連絡組織を作つた。だから全国連絡組織に所属する労組は無所属または連合である。うちの労組はこれらとは別に元は全労協だつた。後にトラブルがあつて全労協を脱退しこの組織に加はつた。
昨日と今日この連絡組織のオルグ塾があつた。講師はかつて地区労の専従だつた人など経験豊かな人達である。総評の息吹が残つてゐて有意義な2日間だつた。

七月二日(月)「連合にもゐる良心的な人達」
私は連合といふとこれまで悪い印象しか持たない。電機連合(当時は電機労連)の隠しベアや沖電気争議を見てきたからである。或いは自動車総連の銀座で豪遊などその労働貴族ぶりを見聞してきたからである。
しかし今回、国労出身の地区労専従だつた方の講演を聞いて、連合にも良心的な人はゐるのだと判つた。この良心は違法な雇用や不当労働行為や、大産別のエゴから今では合法となつてしまつた派遣や有期雇用の労働者と日常接することにより保たれるのだと思ふ。

七月六日(金)「地区労交流会」
総評が解散するときに地区労は地域労組になりその連絡会が我々の組織だといふ言ひ方がよくなされるが、地区労は(1)解散したところ、(2)存続したところ、(3)平和センターになつたところ、(4)地域労組になつたところにそれぞれ分かれた。
このうち地域労組の交流会が我々だが、地区労として存続したところを中心に「全国地区労交流会」といふものもある。今回2011年報告といふ小冊子が配られた。1980年に北関東地区労交流会として発足し、1998年の第19回集会から全国交流会となつた。このときは13県20地区労48人、その後は毎年増減し平均では18県35地区労170人である。
発言内容を幾つか紹介すると或る平和センターの「地区労を母体としながらも地域ユニオンを結成してがんばっている」「小さい職場が抜けている現状もあり苦しい」、東京の或る地区労の「会費を納めず頼みごとのときだけ動くのが多くて困っている。何かやるときは持ち出しが多い」など財政の苦しいなかで頑張つてゐる。

七月八日(日)「若い人へのはなむけの言葉」
我々の全国連絡組織は無所属と連合系の組織が混在してゐる。そこへ数年前に東京東部労組といふ全労協系が加盟した。そればかりか、うちの組合も2年前に分裂して以来、我々は連合を自然脱退の形になつた。その代はり中小政策ネツトといふ加盟団体はほとんど全労協系の任意団体に復帰したから無所属ではあるが全労協に近い組合といふことになつた。
だから東部労組副委員長の話は元国労の方の話に次いで共感をもつた。 今は30代の若い人達に委員長と書記長をまかせ、自身は副委員長として大局的に見られてゐる。若い人達が就任するときはなむけに贈つた言葉は「1、カネを使ひ込まない。2、酒で失敗しない。3、男女問題を起こさない」で、優秀なのに組合を去つた人を多数見てきたといふ話があつた。
これは重要である。今回特に挙げたいのは「2、酒で失敗しない」である。酒を飲むと急に反労働者的な言動をするなど普段と言ふことが異なる人はよくゐる。分裂後のうちの組合でも飲み会で、私はたまたまゐなかつたが左翼的な人と右翼的な人が言ひ合ひになり気まずい雰囲気になつたことがあつた。労働組合だからいろいろな主張の人がゐて構はない。酒を飲んでも他人への配慮を忘れないといふか、心の中に別なものがあると酒を飲んだときに口に出る。常に正直であることが酒を飲んで失敗しない方法である。
私は、右翼や左翼といふ分類自体が間違つてゐるといふ立場だから誰とでも話は合ふ。しかし合はない人がゐる。それは私利私欲の人と外国の猿真似の人である。だから朝日新聞や読売新聞や野田とは絶対に合はない。これらはまづ自分たち、つまり中の上および上の下に有利なように消費税を主張するから絶対に合はない。次にアメリカの猿真似だから私が話を合はせるためには、まづアメリカ大統領に日本にも合つたやり方をするよう要求するしかない。しかしアメリカは日本に真似をしてもらふために国内政治をする訳ではないからそれは不可能である。つまり朝日新聞や読売新聞や野田とは絶対に合はない。

七月十四日(土)「毛沢東派+京都仏教会=現世利益」
東部労組は今は判らないがかつて毛沢東派だつた。これはごく普通である。昭和四〇年代に旧ソ連が世界から失望の目で見られてゐたときに、毛沢東が違ふことを始めたから地理的文化的に近い日本で多くの人が注目したのは当然であつた。社会党の国会議員団が「文化大革命万歳」と中国で叫んだこともあつた。
グループ討議で加盟した組合員が脱退しないにはだうしたらよいかを話し合つたときに、私は「先ほど東部労組の言はれたように総資本対総労働の意識を持つことがいいと思ひます」と発言した。それに対して京都の参加者が「現世利益がないと難しい」と発言し東部労組を含めて他の参加者もその方向だつたので、私もそれ以上は言はなかつた。

北海道から労組作りの実例の報告があつた。消防車を製造する男ばかりの職場の労組結成大会に、介護職場で女性ばかりの労組に声をかけて多数が参加した話があつた。日本の社会、特に首都圏では大手でなければ人間ではないような風潮になり、それが中小企業労働者の結婚率の低下に繋がつてゐる。
このような中で、マスコミが作つた世間の基準とは別の基準を我々が作り、労組活動に参加して相手を見つけようといふような試みが必要だと感じた。社会党総評ブロツクが健在だつたころは国民の意識が二重だつた。今こそそれを復活させるべきだ。

七月十六日(月)「オルグが労組を作る」
今の職場を退職したいといふ人がゐた。或る労組が、あの会社に労組を作らうといふところにさういふ人を就職させることがあるから、労組を作りたい会社に就職するとよいと答へた。これはよい話である。
日本の組織率が低い理由は、職場に労組を作りたいといふ人がゐると、仲間をつれてこいといふ。日本は終身雇用志向が強い。一時は弱まつたのに不景気で転職先がないからまた強まつた。終身雇用だと会社内で上層部に気に入られたいからなかなか組合に入る決意ができない。だから仲間が集まらない。そしてうやむやになる。これの繰り返しである。
労組は社内の人間ではなくオルグが作る。かう持つていけないだらうかと前から考へてゐた。例へば生命保険に入るには保険外交員に申し込む。決して、人数を集めて生命保険相互会社を結成しなさい、とはならない。オルグは保険外交員と同じことをしないと日本の組織率は高くはならない。そのためにはまづ労組どうしの連携を深めるべきだ。
なぜ企業が労組より優秀化といふと配置転換がある。企業の部署は企業内だから可能である。労組は単組だからこれができない。総評が解体したのも、単産が弱体なのもこれが原因である。四年ほど前にも一回提案したことがあるが、労組どうしで幹部の一時出向をする。その成功例を大々的に発表し、大労組にもやらせる。これで企業別嘘の垣根を壊すべきだ。(完)


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