二百八十二、お役所仕事批判(東京メトロに見るお役所仕事)

平成二十四年
六月十五日(金)「新宿三丁目駅」
役所といふのはけしからぬ組織である。倒産の心配がないから非効率に仕事をする。消費税に反対する一つの理由はここにある。役所ばかりではない。東京メトロといふかつての営団、今は株式会社となつた組織も同じである。その典型が新宿三丁目駅の設計である。
四年前に地下鉄副都心線が開通した。開通日に乗つてみようと新宿三丁目駅の連絡通路を見て驚いた。階段が狭い上にロート型にすぼんでゐる。通路は同じ幅に作るのが常識だ。地下鉄のトンネルが広くなつたり狭くなつたりする訳がない。人間の通路も同じである。ピサの斜塔ではあるまいしこんなに斜めのものを作つたら混雑時には大変なことになる。
それから四年間混雑時は警備員や駅員が整理に立つて大変な騒ぎとなつた。ロート型の一番狭い部分には手すりを一部に付けてエスカレータの利用者が階段に流れないやうにもした。一度改札を出て副都心線の改札に改めて入る方法も始めた。これなど私が池袋に行くときに前から用いてゐた方法である。
つひに先日工事が始まつた。連絡通路の手前に新たにエスカレータを設置し、通路とエスカレータを併用することになつた。そのための工事が始まつたが、通路の手前をフエンスで囲つたから余計混むようになつた。
私が開通日に見た瞬間予想したことを東京メトロはなぜ設計段階で気が付かないのか。そして四年間なぜ放置するのか。私が前から実行してゐる一度改札を出て入り直すことをなぜ一昨年あたりから始めるのか。ここに役所と役所の保護下にある産業のお役所仕事を見ることができる。

六月十六日(土)「営団地下鉄から株式会社へ」
かつての帝都高速度交通営団はお役所離れをした立派な経営だつた。赤に白い帯の丸ノ内線は外観だけではなくブレーキを掛ける時は車輪に鉄片を押し付けるのが当り前だつた時代にモーターで発電して抵抗器で熱に変へて減速するといふ画期的な方法を採用した。突然モーターのスヰツチを入れてもブレーキが掛かるのに遅れを生じるから走行時にブレーキが掛からない程度に通電させる工夫も為された。
日比谷線では前面に曲線のガラスを採用した。千代田線ではサイリスタで制御する方法を世界で始めて採用した。採用はされなかつたが昼間時は椅子が後に傾いて座り易くする方法も検討された。何より今までの鉄道と異なる前面のデザインは斬新だつた。

役所は時間の経過とともに活気を失ふ。早ければ二年である。交通営団もその後はお役所的になり、東京地下鉄株式会社法が成立してから更に悪くなつた。

六月十八日(月)「改札を出る乗換へ法」
一旦改札を出て再び入る方法は、混雑緩和に一番有効である。その方法を採らないのはきつと改札を出て伊勢丹あたりで買い物をして再び入る人を防ぐためだらうと開通当日に私は想像した。情報開示の時代である。東京メトロは東京地下鉄株式会社法といふ法律に基づいて設立された。理由と設計の過程を開示してもらひたいものである。
東京メトロはあまりの混雑に慌ててまづ、定期券利用者は一度改札を出て入り直すよう数年前にポスターで呼びかけた。それでも混雑が続くので今回、切符でも一度出ることができるようになつた。これは大手町や飯田橋など改札内の乗り換へ通路のない多くの駅で昔から採用してゐる。なぜ今頃採用するのか。

六月二十三日(土)「日本の役所はけしからぬ組織だ」
大学のAO入試や推薦入試に、文科省から高校のときの留学、英語を見るように通達があつたさうだ。或る大学関係者が言つてゐた。文科省は時代遅れの役所である。今から25年前は英語の堪能な人が少なく、英語ができる人を増やすことは重要だつた。今は英語のできる人が街に溢れてゐる。英語をやる時間があつたらもつと有益なことに有効活用すべきだ。
国交省から各私鉄にも通達があつたのだらう。ここ10年ほど英語放送を始める私鉄が相次いだ。営団地下鉄も株式会社になると同時に英語放送を始めた。地下鉄の英語放送はまつたく無駄である。電光掲示板が車内に設置されてゐるからだ。
最近駅員への暴力が新聞で報道された。車掌が話し方は下手でも一所懸命に放送すれば乗客と一体感が生まれる。録音で英語付きの放送ではいかにも上からエリート意識丸出し、役所の保護のおかげで不景気でも高給をもらつてゐますと言つてゐるようで、乗客と一体感は生まれない。英語放送をやめれば駅員への暴力は激減する。関係者は判つてゐるから録音が流れた後に肉声で放送する。かうなると日本語の録音、英語の録音、日本語の肉声と同じことを三回聴かされる。
地方の私鉄は英語放送などやらない。乗客減でその余裕がない。国交省の無策のせいで人口が大都市に集まり、その上前をはねて天下り先を確保し、英語放送を行つてアメリカにもいい顔をする。日本の役所はけしからぬ組織である。消費税増税は絶対阻止しよう。

六月二十四日(日)「東京地下鉄と東京メトロと都営地下鉄」
東京には、東京地下鉄、東京メトロ、都営地下鉄と三つの地下鉄名がある。東京地下鉄は営団地下鉄の後身の株式会社組織である。東京メトロは東京地下鉄の別名である。都営地下鉄は東京都交通局が経営する地下鉄である。まづ旅行者は東京地下鉄と東京メトロが同じだといふことが判らない。都営地下鉄と間違へる人もゐよう。株式会社化するときに正式名は東京地下鉄、通称は東京メトロと分けた。なぜこんな判り難いことをするのか。否、理由は判つてゐる。東京地下鉄株式会社法といふ法律があるからだ。いかにも役所の論理である。
東京地下鉄と東京メトロは運賃を統合すべきだ。そもそも都営地下鉄を建設するときに営団と統合しておくべきだつた。営団は国鉄(当時)と東京都の出資なのだから。これも役所の論理である。

六月二十六日(火)「国土交通省」
国土交通省(及び合併前の運輸省)はけしからぬ役所である。国鉄が存在した時代に赤字をどうするかは国全体の問題だつた。国鉄最後の総裁杉浦が就任するとき、後にJR東海社長になる葛西が次のように書いている。
今、最も緊急を要するのは秘書役を旧体制派に採られないことだ。運輸事務次官経験者とはいえ、新総裁には国鉄内部の生きた情報は皆無と言ってよく、誰がそばにいて解説し、取り次ぎ、日程やスケジュール管理をするかによって、仕事の進め方は大幅に変わる。
日産や日本航空など企業再建のため会長や社長に就任する人はその会社のことを知つてゐる訳ではない。しかし短期間のうちに部下や関係者から聴取し資料を読み、的確に再建を果たす。それに比べて運輸事務次官だつた杉浦はいつたい何だ。あの当時交通問題で一番重要なのは国鉄再建だつた。運輸事務次官は国鉄問題に熟知すべきだ。それなのに秘書次第で大幅に変はるといふのはつまりは周りの言ひなり、無能といふことだ。
そんな役所だから営団地下鉄と都営地下鉄を放置し今になつても何もしない。車内の英語放送は駅の表示を見れば済むから無駄だし、電光掲示板のある路線では更に無駄である。

六月二十九日(金)「合同庁舎2号館と3号館」
国土交通省は、合同庁舎2号館(高層ビル)とその奥の3号館(普通のビル)に分散して入居してゐる。両方は通路でつながり途中に郵便局、喫茶店などがある。2号館は総務省、警察庁とともに入り、3号館は国土交通省専用である。3号館はエレベータが低層用と高層用に分かれてゐる。ところが1階のフロアで両方のボタンを押して先に来たほうに乗る官僚がゐる。電気の無駄である。2号館も3号館も東北大地震の前から廊下の電気をかなり消して節約のふりをしてゐた。ふりといふのは夏にけつこう冷房が強い。蛍光灯は消費電力が少ないが冷房は多い。どちらも人件費や建設会社に支払ふ金額に比べれば桁違ひに少ない。これは東北大震災の前の話で、今と違つて暗いのに慣れてゐないから廊下が暗いとかなり印象に残る。菅や野田は一つはこれで騙されたのだらう。元事務次官の杉浦の体たらくと、秘書に改革派を付けて自分側に巻き込んだ国鉄の課長(当時)だつた葛西といひ、役所とその類似組織はとんでもない連中が多い。なぜこんな連中を養ふために消費税を増税しなくてはいけないのか。

六月三十日(土)「東京新名所、新宿三丁目連絡通路」
新宿三丁目駅の連絡通路を見に行かう。副都心線側から見ると目立たないから丸の内線側から見よう。通路が極端に狭くなるのが判る。混乱を見るには朝のラツシユ時がお勧めである。ただでさへ混んだところに工事用のフエンスを副都心線と丸ノ内線のホームにそれぞれ作つたから大混乱である。もう一つ見どころがある。改札を出た乗り換へ通路の丸ノ内線改札手前である。混んでゐるのでこの先(1編成分だからかなり先)から入つてください、と警備員が叫んでゐる。
地下鉄だけではない。他の鉄道会社も同じである。JR東日本で数年前に中央線の甲府から新宿に向ふ普通列車に乗つたとき、途中の駅で「特急通過待ちのためしばらく停車します」と車内放送があつた。私はホームに降りた。しばらくしてレピーター(ホームの屋根の下に設置された直径10cmくらいの表示灯)が点灯してゐることに気付きあわてて電車に飛び乗つた。発車ベルも放送もなく扉が閉まり電車は動き出した。ホームの喫煙場所でたばこを吸つてゐた人が何人か乗り遅れた。この日は特急は運休だつたのだらう。だつたら通過待ちなんて放送してはいけない。

七月四日(水)「丸ノ内線改札前の誘導がなくなつた」
新宿三丁目の名所が一つ廃止された。丸ノ内線改札前である。副都心線から改札外に出た乗客が丸ノ内線に入るための改札に「混雑」といふ板を持つた警備員が「この先の改札から入つてください」と叫んでゐた。しかし「この先の改札」は1編成(6両)先から入りホームをこちらに戻る形になる。幾らお役所仕事でも不便だ。だから今週から廃止された。

七月五日(木)「猪瀬副知事」
猪瀬東京都副知事はよいことをいふ。四十三県二府一都一道のなかで最も優秀な副知事であらう。四十三県二府一都一道のなかで最も大嘘つきの野田やそれに賛成したゴミ議員どもとは大違ひである。以下は日経BPの二年前の九段下駅の記事である。
ホームの幅は10メートル。それを東京メトロと都営地下鉄で使っているから、もっとも狭いところでは1.5メートルの幅しかない。安全性に問題あり、だ。東京メトロと都営地下鉄が一元化され、階段やエスカレータが共用されれば、その分だけホームは広くなる。
 ホームを分断する仕切壁には、小さな木戸口がある。非常口だから普段はカギがかかっている。開けようとすると、ブザーが鳴り響いた。あくまでも非常用なのだ。都営地下鉄の職員に、カギを使って開けてもらう。
 鉄扉1枚を隔てて、すぐ隣には東京メトロのホームが広がる。東京メトロのホームに電車が入ってきたとき、ほぼ同じタイミングで都営地下鉄のホームにも電車が入ってきた。しかし、乗客は仕切壁に阻まれているため、階段を昇り降りして乗り換えなければならない。


そして今回、同じく日経BPに投稿した。
一元化を阻むものは、既得権益の壁である。国交省や東京メトロは、旧営団時代からの既得権益を手放したくない。大臣が代われば代わるほど、既得権益は現状維持ができるから、役人天国(メトロにとっては社員天国)となる。
 営団地下鉄が民営化されて東京メトロになった、という表層的なことに騙されてはいけない。実態は、税金を投入して地下鉄をつくった特殊法人が株式会社の名称になっただけなのだ。その結果、利用者の利便性そっちのけで、東京メトロは儲けに儲けて内部留保が積み上がっている。
 東京メトロは、利益を利用者に還元することなく、自分たちのために使ってきた。たとえば東京メトロは東京都大田区中馬込の1.3ヘクタールの広大な敷地に新しく社宅を建てようとしている。余った資産を利用者に返すのでなくて、自分たちの職員のために使おうとしている。利用者の利益ではなく、社員の利益のために既得権益を貪るという経営体質は東電と同じなのである。


これも100%同感である。

七月八日(日)「役所の談合を許すな」
東京メトロと都営地下鉄の壁がなくなるといふことは、片方の切符でもう一方に間違へて行く人が出てくる。例へば巣鴨から新宿三丁目までの都営地下鉄の切符を持つた人が九段下駅で間違へて東京メトロに入り込み新宿三丁目に行つたとすると、新宿三丁目までの切符を持つにも係はらず九段下から新宿三丁目までの料金を請求される。それを防ぐにはすべての東京メトロと都営地下鉄との壁を撤去すべきだ。つまり途中の経由は改札外乗換へを除き自由とする。
その次の段階として、東京メトロと都営地下鉄を乗り継いだ場合の割引額を130円にすべきだ。今は70円である。最低運賃がメトロは160円、都営は170円だから乗り換へ時に1区間通過した扱ひとなり、利用者は便利である。その分の減収はJRから客を奪ふことで対処すべきだ。JRは最低運賃が130円と安い。しかしだまされてはいけない。JRは距離と料金が比例する。地下鉄を含む私鉄は基本料金に加算する。つまりJRは近距離客に異常に有利にして地下鉄や私鉄の客を奪つてゐる。これは公共交通にあるまじき態度だ。東京メトロ、東京都交通局、その他私鉄各社は国土交通省に働きかけ、JRの不当運賃を改定させJRから乗客を取り返し、その分で減収を補へばよい。
それにしても国土交通省と旧国鉄と鉄道各社は不公正な制度を長く放置したものである。役所およびそれに類似する組織(公営交通と鉄道会社)の談合と言へる。国土交通省は政治家など国会、地方議会の責任だと責任転嫁するに違ひない。ならば国土交通省と政治家(自民党長期政権と民主党大嘘派)の談合である。

七月十一日(水)「回数券に見る国土交通省の怠慢」
鉄道の回数券は乗車区間指定式と額面式がある。前者は新宿<->池袋のように区間を指定し、額面式は例へば160円のように任意の区間に乗れる。鉄道会社がどちらを選ぶかはどちらが増収に繋がるかによる。具体的には競合路線の有無による。だからそれは構はないのだが乗り越した場合に前者は新たに乗り越し区間の料金を請求されるのに対して後者は差額で済む。これは利用者に間違ひやすい。
国土交通省は両者の名称を回数券からそれぞれ別のものに変へるようすべきだ。帝国主義時代の被植民地根性丸出しで英語放送を強制する暇があつたらこちらをすべきだ。

七月十二日(木)「国土交通省は英語放送の経緯を明らかにしろ」
日本は長いこと日本語放送のみで何ら問題はなかつた。プラザ合意の急激な円高で海外からの旅行者が来難い国となつたが、なぜそれ以降に急に英語放送を始めるのか。プラザ合意以降の円高の原因は輸出超過だ。だつたら国交省が海外旅行客の獲得に血まなこになる必要はない。終戦直後から昭和四五年くらいまでの輸入超過だつたら海外旅行客の獲得も意味がある。そのとき英語放送をやらずに何の問題もなかつたのに、なぜ十五年くらい前から急に始めるのか。
国土交通省は売国奴、アメリカのスパイ、国民の敵といつてもよい。こんな連中を養ふために消費税を上げる必要はない。

七月十四日(土)「倒産と直面しない組織は頭が悪くなる」
役所、鉄道会社、電力会社、大手マスコミは倒産と直面しない。だから長くゐると頭が悪くなる。なぜそんな連中に税金を投入したり、消費税を上げなくてはいけないのか。消費税増税は絶対に阻止しよう。そのためにはかういふ組織の失態を次々に暴く必要がある。(完)


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