二百三十五(2) 消へた農村鉄道、鹿島参宮鉄道

平成二十四年
二月十六日(木)「鹿島参宮鉄道とJR鹿島線」
鹿島参宮鉄道には4回乗つたことがある。サーバと輸入ソフトウエアを購入してくれた顧客が沿線にゐるためである。3回は常磐線の石岡から、1回は鹿島線から第3セクターの新鉾田駅で降りて、鉾田駅から鹿島参宮鉄道で行つた。
鹿島参宮鉄道は、旧国鉄の鹿島線の開通で旅客輸送で黒字の見込みが立たなくなつた。鹿島線は建設すべきではなかつた。成田線の香取駅で分岐し利根川を渡つた先は建設前は湿地帯だつた。だから住民は田んぼの中の水郷を船で移動した。霞ヶ浦と北浦の下流に位置するこの地域を盛り土と排水施設で陸地に変へた。そして鹿島線が高架と鉄橋で開通した。普通列車に乗ると鹿島線の乗客は僅かである。民営鉄道だつたらとつくに廃業してゐる。

二月十七日(金)「鹿島臨海工業地帯」
鹿島線は、成田線の香取から常磐線の水戸までを太平洋沿いに結ぶ鉄道として計画された。しかし黒字化が見込めないため、昭和45年に北鹿島貨物駅までが国鉄として開業した。旅客は1つ手前の鹿島神宮駅までである。
北鹿島で鹿島臨海鉄道の貨物線と接続する。同臨海鉄道は旧国鉄(現、JR貨物)、茨城県、進出企業の出資で設立された。しかし後に貨物取扱量が激減し、今では1日3往復である。
北鹿島と水戸の区間も旧鉄道建設公団が落成させた。しかし旧国鉄が経営を引き受けないために、昭和60年に鹿島臨海鉄道に引き受けさせて開業した。北鹿島と鉾田の間は本数が少なく、鉾田と水戸、大洗と水戸の区間運転が多い。これは当然である。鹿島神宮と香取神宮の間は湿地帯であつた。人の流れは古来、千葉ではなく水戸に向ふ。

二月十八日(土)「水郷地帯」
鹿島線を建設するとすれば、水戸から鹿島神宮まででよかつた。首都圏への貨物と旅客は鹿島参宮鉄道経由にすれば両方の鉄道が共存できた。鹿島神宮と香取間の湿地帯の工事も必要がなかつた。
鹿島参宮鉄道は昭和40年に常総筑波鉄道と合併し関東鉄道となつた。しかし昭和54年に鹿島鉄道と筑波鉄道として子会社化、筑波鉄道は昭和62年に廃止された。鹿島参宮鉄道は航空自衛隊百里基地への燃料輸送を収入源に旅客輸送も存続したが、平成13年にパイプライン輸送に変更され貨物列車は廃止になつた。
その後は、親会社の関東鉄道と沿線自治体が5年間援助を行ふことになつた。5カ年計画で駅や駐車場が整備された。私が利用した榎本駅は寂れた駅だつたが、トイレがきれいで駅前にはタクシーの連絡先が書かれてゐた。かつては榎本駅まで貨物列車が運転され、ここで石油タンクに移して基地まで油送した。しかし私が乗降したときは無人駅で、駅の出札窓口はカーテンが降ろされ、ホームから見るとわずかに貨物積み下ろしの跡があるだけだつた。最初は砂利の積み下ろし施設かと思つたくらい小さなものだつた。

二月十八日(土)「つくばエクスプレス」
平成17年につくばエクスプレスが開業した。これで東京駅八重洲口と筑波を結ぶ関東鉄道の高速バスが減収になつた。私も日中に何回かバスに乗つたが乗客は数人だつた。そのため関東鉄道は鹿島参宮鉄道への支援を打ち切つた。
この時点で沿線自治体のすべきは、霞ヶ浦と北浦の一帯を自動車自粛地域に指定し10年かけて鉄道を利用させることと、鉾田駅と新鉾田駅を接続することだつた。私は乗り換へのため両駅を歩いたが20分掛かつた。車のほとんど通らない寂れた道路だつた。ここにまづ鉄道運賃共通のマイクロバスを運行し、将来は路面に線路を引いて鉾田まで鉄道を乗り入れるべきだつた。それらをやらないから平成19年に廃止になつた。

それにしても日本の交通行政はでたらめである。鹿島線をわざわざ建設して鹿島参宮鉄道を廃止し、筑波鉄道を廃止して後につくばエクスプレスを建設する。日本全体で見れば膨大な金が無駄になつた。つくばエクスプレスは常磐線の混雑緩和も目的にする。それなら常磐線を増強すべきだ。常磐線の各駅停車は千代田線に乗り入れる。西日暮里でJRに乗り換へる人は多いが、運賃が高くなつた。まづ西日暮里までを地下鉄とJRの共同運行にすべきだ。本当は都市部のすべての鉄道は共通運賃にすべきだが、それまでの暫定である。そもそも通勤が集中するのは異常だ。8時始業、10時始業を企業に義務化すべきだ。更に職住接近すべきだ。自由経営と政府主導経済の都合のよい部分を、官僚や大手会社上層部が取り続けた結果、膨大な歪みを生じた。
筑波研究学園都市について言へば、あれはアメリカ猿真似が醜悪になる典型である。各研究機関が広大な面積に広がりすぎてゐる。自然破壊とエネルギーの無駄遣ひである。アメリカは野生生物と先住民の土地を奪つて作られた。土地が広いから各機関は点在してゐる。日本が真似をしてはいけない。
とは言へ作つてしまつたものは仕方がない。将来はバスを充実し自動車を減少させるべきだ。電気自動車やハイブリッド車が省エネルギーなのは、ブレーキを掛けたときにエネルギーを回収できるからだ。筑波のやうに距離が離れて信号が少ないと回収できるエネルギーも少ない。(完)


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