二百二十三、民間天下りが日本経済の基底部を駄目にした

平成二十三年
十二月二十日(火)「民間天下り」
取引先から不要になつた人間を押し付けられる。その結果、社内の人間関係が破壊され、玉突きリストラも起きる。大企業は廃人を放出して帳尻を合わせたが、中小は受け入れたから大変である。このようにして日本経済の基底部は破壊された。

十二月二一日(水)「銀行からの押し付け」
これは或る会社の例である。社長が借金した銀行から、社長の大学時代の友人を押し付けられた。噂では引き取らないと借金をすぐ返せと銀行から言はれたさうだ。
まづ社長の大学後輩の営業部長が退職した。営業部長にとつては先輩だからうまく行くと誰もが思つたが、さうではなかつた。次にこの人は業界のことは判らないから、インセンテイブだ、成果主義だと叫び、社内の人間関係を破壊した。
かつては社内に「家族会」があり毎年行事を行つてゐたが、常にリストラと直面した冷たい雰囲気だけの会社になつた。

十二月二十二日(木)「労働者派遣法違反」
労働者派遣を行ふ事業所は職業安定所に届け出る必要がある(後に会社ごとに地方労働局に届け出ることになるがそれははるか後のことである)。労働者を派遣として雇用するか派遣だと通知する必要もある。ところが二つに違反する派遣をやつた。しかも二回目は週五日の派遣なのに週二日コンサルタントに行くだけだと嘘をつき、たまたま行く前に客先からの電話で嘘がばれたから大変な騒ぎになつた。この件もこの人が関係した。
派遣や偽装請負を禁止しなくてはいけない理由がここにもある。技術や業界の知識のない人間が出鱈目なことをする。

十二月二十四日(土)「表計算ソフトと同じことをする高給取り」
この人のやつた事と云へば、売り上げと粗利を月ごとに並べて、今月は多いだとか少ないだとか云ふだけだ。そんなことは表計算ソフトに値を入れれば三十秒で判る。技術も営業知識もないのだから仕方がないが、これで高級を取り、別の人間が玉突きリストラされたり昇格の機会を失ふ。社内の人間関係が壊れないはずがない。
大切なのは今月は多いとか少ないと云ふのではなく、その原因と対策を指示することだ。高給取りなのだから。

十二月二十六日(月)「取引先からの天下り、例一」
或る会社では取引先から天下りを受け入れた。技術職なので最初は技術の仕事をしたが、すぐに事務の責任者になつた。事務は社内の中高年の受け入れ先である。技術の仕事は四十歳を過ぎれば若い人にはかなわない。なのに取引先からこういふ人を受け入れて社内の中高年はリストラにする。ずいぶん労働者を馬鹿にしたやり方だ。
しかも前任者は団体交渉をきちんとやつたのにこの人は拒否した。だから中労委まで話が進んだ。こういふ人を受け入れると厚生労働省にまで迷惑を及ぼす。会社側は弁護士が都労委、中労委と出席するから、この者のせいで莫大な弁護士費用が無駄になつた。

一月一日(日)「取引先からの天下り、例二」
或る会社では同じく取引先から天下りを受け入れた。その取引先は外資系コンピユータ会社で「そこでは仕事がなくなるとリストラされるから皆必死だ」と、天下り先で大声で笑ひ声を立てた。外資系も日本では日本の労働法規を守る必要があることを知らないのだらうか。
それより同じ事を日本企業でもできると思つてゐるらしい。中労委まで進んだ事件の最中なのに、今年四月に100%あつた仕事量を五月は50%に減らした。7月には25%に減らした。自分が元の会社に戻つてその分の仕事を返還すればリストラしなくても済むことに気がつかないらしい。

一月四日(水)「得意先開拓課に」
こういふ人は得意先開拓課の課長となるべきだ。しかし得てしてこういふ人を事業所長や執行役員に任命するから大変なことになる。役職者の第一の任務は組織をまとめることである。二番目に皆にやる気を出させることである。しかしかういふ人は人間関係を破壊するし、皆のやる気をなくす。つまり第一と第二の任務を果たさない。それでゐて金を消費することや制度をこね回すことや前の会社の自慢話ばかりが好きである。

一月六日(金)「日本の中小企業が天下りで壊された」
以上の三つの例は、どの業界でもある。中小企業は廃人回収業ではない。民間天下りで日本経済の基本部分が破壊された。景気が好転しないのは当然である。

一月八日(日)「派遣と偽装請負と下請けは受注にはならない」
ソフト会社では事情は更に複雑である。天下つた連中が一人月70万円の仕事をもらつてきたとしよう。これで給料40万円程度(ボーナス、社会保険など込み)の技術者を一人客先に放り込む。年齢が上がるに連れて給料も上がるから、70万円と40万円の差はその積み立て分である。ところが悪質なソフト会社は年齢が上がると嫌がらせ退職をするから差額が丸々儲かる。
かういふのは仕事をもらつてきたとは言へない。嫌がらせ退職の結果は、1万円札を9000円で売るやうなことになる。1万円札を9000円で販売し、売上高が幾らだと言つても偉くも何でもない。天下りはもつとまともな仕事をもらつてくるか、それができないなら下の会社に戻るか自分がリストラされるべきだ。
そもそも派遣と偽装請負と下請けは禁止すべきだ。これらを禁止すれば日本の国際黒字が減少し、円安になりプラザ合意以前の元気な日本を取り戻せる。(完)


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