百九十九、経済の平衡過程を考へると企業は海外に移転してはいけない


平成二十三年
九月四日(日)「海外移転」
円高を理由とする海外移転は本来はしてはいけない行為だ。日本の輸出超過だから円高になる。国内の競争力が下がり輸出は減る。海外に移転するとこの平衡作用が働かない。

九月五日(月)「カローシの原因を探る」
日本の大企業は仕事をがんばれば年功で部長、取締役と昇進する。昇進すると給料が段違いに上がる。これが長時間残業やサービス残業を行ふ理由だ。がんばることにより将来取締役にまでなれる確率が上がるとなると、その利益期待値とサービス残業の損失分を天秤に掛けサービス残業を選ぶ。
欧米から、日本の労働者はなぜ長時間残業やサービス残業をするのか不思議がられたことがあつたが、そういふ仕組みである。だから昭和五十年あたりから政府のすべきはバブルへの誘導ではなく長時間残業とサービス残業の禁止であつた。

九月七日(水)「外資浪人のいふことを聴いてはいけない」
戦前の日本は大陸浪人といふ連中がゐて千金を狙つて大陸に進出し日本の評判を悪くした。平成年間には同じような人種で外資浪人といふのが出現した。十年ほど前までの外資系企業は優秀な人が多かつたが最近はよくない連中が多い。そういふ外資浪人がおもしろいことを言つた。海外に進出したときは、まづその企業の黒字を確保するためにその国のやり方で運営し、黒字を達成した後はワールドワイドのグループ戦略の一環としてその企業を使ふといふのだ。
それでは黒字化のためにがんばつた現地採用の人たちが使ひ捨てになる。図らずも外資浪人どもが勤める米系企業の汚いやり方が明らかになつた。海外に進出したらその国に合わせて経営すべきだ。黒字になつたらその状態が長く続くよう努力すべきだ。日系企業は米系ハゲタカグループのように現地進出企業をカネの奪取の手段にしてはいけない。

九月十日(土)「近年悪くなった外資系のプレゼンテーシヨン」
ワールドワイドといふ言葉は外資の人間がよく用ひる。なぜ「世界規模」ではいけないのか。安直にカタカナ語を使ふ人間は無教養だ。
十五年くらい前までは外資の展示会やセミナーでの発表は日本系と比べて劣ることはなかつた。ところが最近は、やたらとジエスチヤー交じりに話す人がゐる。ああいふ話し方はアメリカ人には受けても日本の聴衆には合わない。
プレゼン用ソフトも使用をやめるべきだ。講演が下手になる。使はざるを得ないときは、最初に概要、途中で参考資料、最後にまとめとして表示するとよい。話す内容をいちいち表示させてはいけない。

九月十七日(土)「昭和五十年」
日本の貿易黒字が拡大し大変なことになることは、昭和五十年に既に判つた筈だ。ところが無策を続けたためにプラザ合意に至つた。

九月十八日(日)「プラザ合意後の日本」
プラザ合意は日本の国内を一変させた。貿易黒字を減らすために無駄遣ひを推奨するようになつた。夜間の照明はまぶしいばかりだし、それまで3ナンバーの自動車は税金が高かつたが消費税導入とともになくなつた。
一方で団体の一員としての意識を無くそうとするようになつた。戦後まもなくの外貨稼ぎの時代には日本全体チームのために構成員は給料は低くても一丸とする政策を企業も政府も取つた。しかし外貨は稼がないほうがよいことになるとチームの構成員は大切に扱はなくなる。

九月十九日(月)「企業別組合の解体を」
日本の労組は企業別組合といふ世界でも珍妙な形態である。そのため下請け企業との労働条件に大きな格差がある。しかも景気のよいときは協力会社会などを組織して一体意識を植え付けておきながら、景気が悪くなると切り捨てる。このような不公正な経営をすれば海外に競争力があるに決まつてゐる。
貿易黒字を解消するには企業別組合を禁止し、解体再編させることである。

九月二十一日(水)「貿易黒字解消の方法」
高度経済成長時代はインフレだから、公務員の給料は民間より低かつた。そして高度経済成長時代は人手不足だから、中小の給料は大手より高かつた。大手組合出身のオルグが中小のパートのおばさんたちに給料を幾らに上げるよう団結しませうと言つたら、私達はもつと多く貰つているよ、とあしらわれたといふ話もある。給料と雇用安定度が逆の関係だから世の中が安定してゐた。
今は給料と雇用安定度が比例するから世の中が不安定だ。プラザ合意の効果が現れず貿易黒字が続く原因だ。
それでも以前は請負だから勤務場所が違ふし勤務内容も違つた。今は派遣や偽装請負で勤務内容が同じだ。すべての派遣労働者と偽装請負労働者は同一業務の本工の給料と比べ同一若しくは低かつたら、雇用不安定分を上乗せした額を要求しよう。支給しないときは労組に加入しストライキをしよう。
これが貿易黒字解消の方法である。円高も解消する。ストライキ参加者は経済産業省と日本銀行と経団連とJETROから表彰されてもよいくらいである。

九月二十三日(金)「失業者対策」
失業者対策も重用だ。ヨーロツパのようにワークシエアの発想が必要だ。日本の失業者はおとなし過ぎる。デモでも座り込みでもどんどんやるべきだ。失業者の活動が円高を解消する、といふくらいの気持ちを持つて活動すべきだ。

九月二十五日(日)「転職の自由」
私のホームページを読むと判るように意見が相当柔軟である。柔軟な理由は私は何回か転職を経験したためだ。最初は化学分析の会社だつた。そこでFM8といふパソコンを使つた。私の作つたプログラムで印刷をすると最初に変な文字が出てくるので富士通マイコンスカイラブ秋葉原に電話をして親切に教へてもらつた。全国のマイコンスカイラブを運営する富士通の子会社が求人をしたのでそこに転職した。富士通のパソコンが半導体部門から電算部門に移り、大組織の下請けでつまらなくなつた。そこでコンピユータ専門学校の教師に転職した。経営母体は東京池袋では有名な予備校だつたが後に倒産した。新聞にも専門学校の倒産といふことで大きく報道された。その前に理事長の脱税騒ぎでも大きく報道されたが。
コンピユータ製品を輸入する会社に転職したが内紛が多く今の会社に転属させられ十八年を経過した。
普通の会社はマニユアルの翻訳は外注に出す。しかしうちは外注の予算がないから私がこれまで千ページくらい翻訳した。アメリカに一年弱出張した。タイとドイツにも数カ月出張した。社内教育や人事採用も経験した。だから柔軟な発想ができる。
日本には転職の自由がない。もちろん見かけはあるが転職すると条件が悪くなる。つまり奴隷と同じである。奴隷制を廃止しないと円高は解消されない。

九月二十六日(月)「四十歳以上も転職の自由を」
私もここ十八年は転職してゐない。かつては転職は三十歳までと言はれたが三五歳になり四十歳になつた。しかしそれ以上は進まないからである。
転職の自由を広めるべきで、そうしないから奴隷状態の日本は貿易黒字になる。しかし労働者が不利益を受ける自由化は阻止しなくてはいけない。解雇の自由と成果主義に名を借りた賃金差別である。

九月三十日(金)「出向の禁止と半分雇用不安定の解消を」
雇用は流動化すべきだ。そうしないと柔軟な発想が出来ない。しかし出向は禁止すべきだ。そうしないと雇用が身分になる。
出向と共に悪いのが流動化が半分行われた状態である。そしてそれが今の日本だ。もともとは高度経済成長と人手不足で安定雇用が確立した。その後、経営の弱いところから解雇や嫌がらせ退職が始まつた。流動化が国全体に広まれば次の仕事も簡単に見つかる。中途半端に安定雇用が崩れるから失業者の仕事が決まらない。現時点では解雇や退職を受け入れたら労働側は極めて損をする。会社を倒産させるか解雇を撤回するかの激しい争議を行ひ、経営団体側に流動を促すべきだ。

十月一日(土)「海外進出の問題点」
海外に進出した企業が制度や習慣の違ひで苦労したといふ話は経済誌などに山ほどある。そのため損害を蒙つただとか赤字で撤退したといふ話も多い。
企業は国内で自社の得意分野の事業を営む経験は持つ。しかし海外で経営するノウハウは持たない。海外進出とは北極グマを赤道に住まわせることである。プラザ合意以降は異常状態である。
海外に進出するのはその国に商品を売る場合に限るべきだ。それ以外は海外に進出しなくても正常な事業活動ができる水準にすべきだ。そのためには企業別労組の禁止しかない。(完)


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