千七百五十一(和語の歌) ツバメかムクドリか
壬寅(西洋野蛮歴2022)年
六月四日(土)
昨日まで、巣立ったのはツバメだとばかり思った。雛の餌を獲りに飛び立つところは黒く細長い鳥で、高速で飛ぶからだ。それに対して、飛びながらや電線に止まって、ギーギー鳴く鳥がゐる。あれはムクドリだ。
今朝、巣立った跡の近くに茶色の鳥が二羽ゐた。つばめより短く太いし、ギーギー鳴く鳥よりも小さい。この時点で、昨日巣立ったのはつばめ、本日来たのはつばめとは別の鳥と思った。
インターネットで調べると、この鳥こそムクドリだ。思へば餌を獲って戻って来たときは巣に入る前に少し止まる。そのとき色が茶色なので、つばめは季節で色が変化するのかと思ったことがあった。飛び立つときは早いので、黒で細長いと思っただけだったかも知れない。
もう一つ決定的な事実がある。ギーギー鳴く鳥がゐなくなった。棲み分けしたのではなく、ムクドリしかゐなかったのだ。鳥は飛ぶから人間の眼は当てにならない。動体視力と云ふやつだ。
あと一つ、つばめの巣をムクドリに乗っ取られたのではないか、とも一時は考へた。しかし雛の鳴き声から、そんな形跡はなかったし、ムクドリの餌は虫か果実で、他の鳥を襲ったりはしない。
雛の声初めつばめと思ひたが 巣立ちの次の日の朝に見た親鳥はムクドリらしい

(反歌) ムクドリの鳴く声今日は聞こえずにだんだん事が明らかとなる

六月五日(日)
ムクドリは、虫を食べるためかつては益鳥だった。ところが農業に農薬を使はれるやうになると、虫を食べても農家は喜ばなくなった。それどころか、虫が少なくなって果実を食べるやうになった。都会化で家の近所で繁殖し、巣立ちすると集団で生活するため鳴き声や糞で嫌はれるやうになった。我が家でも今思へば、雛が餌をねだる声が、つばめにしてはずいぶん大きかった。餌がほしくて大きな声を出すのだらうと思ってきた。実は、大きな声の鳥だった。
鳥の雛餌を求めて大声で鳴くと思へばムクドリだった
(終)

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