百六十七、福島第一原発は百%人災だ


平成二十三年
四月二十四日(日)「緊急処置を取らなかった」
原子炉は核分裂を停止すれば安全だ。国民は皆そう思ひ込まされてされてきた。ところが停止後も冷却を続けないと炉心溶融することを原発関係者だけは知つてゐた。だから緊急発電装置が停止したときは関係者は真つ青になつたはずだ。原子炉内の水を排出させてでも冷水を入れなくてはいけなかつた。真水でも海水でもよいからとにかく入れなくてはいけなかつた。
しかし現場はできない。もしうまく行つたら後が大変である。原子炉内の水を外に出すなんて何といふ事をしたのか。関係者は全員解雇であろう。
炉心が溶融した訳ではない。建屋が崩壊したのでもない。水を海に捨てる訳でもない。万一水を海に捨てることになつても量は少ないし放射能もはるかに少ない。それでも大変な非難となろう。

四月二十六日(火)「マニユアルの不備」
実際にはベントで済みそうだつた。緊急だからすぐに実施すべきだつた。ところが東電はいつまでもやらなかつた。
一つにはマニユアルの不備である。緊急時はベントとそれで足りなければ外から水で冷却。外から冷却に使つた水をどう処理するかは後で考へる。それで駄目なら排水と注水。そこまでマニユアルに書かなくてはいけない。

四月二十七日(水)「ベントの遅れ」
ベントが遅れたことは今後の争点となろう。菅直人と東電のどちらかは業務上過失傷害で逮捕すべきだ。今の段階ではベントを指示したのに東電が従はなかつたとする政府側に一理がある。

昨日は「外から水で冷却」と書いたが圧力容器と格納容器があるのに外から水を掛けて効果があるのか。原子力安全保安院と東電の発表によれば容器は破損してゐないが外から放水して沈静化したのだから効果があるのだろう。

四月二十八日(木)「菅直人は嘘つきだ」
自衛隊機が東電の社長を運ぶため離陸し、防衛相の指示で引返した。この事実を菅直人は今まで隠した。記者会見を多発させた首相官邸である。なぜ今まで発表しなかつたのか。事実を発表しないのは嘘をついたに等しい。菅直人は退陣すべきだ。

四月二十九日(金)「国民に隠してゐた崩壊熱」
原子炉を止めても崩壊熱で危険なことは専門家でさへ一部の人しか知らなかつた。その例を紹介しよう。
大地震の日はJRが終日止まつた。だから夜は会社で皆でテレビニユースを観た。 なぜ核分裂を止めても熱が出るのだろうか。崩壊熱しかあり得ない。ちようど東北大学の原子力専攻の修士を出た人が隣にゐたので質問した。すると「自動車と同じで急には止まらない」と答へた。私が「しかし核分裂は止まつてゐるのですよ」と言つても自説を繰り返した。
それから三週間してニユースでも再三報道されたから今度は大丈夫だろうと思つて話したがやはり「核分裂は急には止まらない」と自説を繰り返した。この人が修士を出たのは昭和五十年頃で今の博士より希少価値がある。それでもこの程度である。東北大の原子力の卒業生は東北電力や東京電力に就職し福島原発にも勤務するのだろう。電力会社といふ官僚組織にゐたら就職後もますます頭の働きが悪くなる。今回の事故はまさに人災である。

四月三十日(土)「核分裂と核崩壊」
核崩壊と核分裂を逆の立場から間違へる例も紹介しよう。一週間前に東京大学の原子核科学研究センターの人に質問する機会があり「ウラン235とプルトニウム239のほかに核分裂する原子核はどのくらいありますか」と聞いた。 すると壁に貼つてある各原子の陽子と中性子の数で分類した核種表を指差して「中心線から外れた灰色の核種は分裂します」といふので「それは核分裂ではなくて崩壊でしょ」と言ふと、その人も判らなかつた。
これは質問するほうも悪い。昔から核分裂はウラン235とプルトニウム239と決まつてゐる。それなのに質問した理由は厖大な核種のなかで連鎖反応の核分裂を起こすのは数種だけである。といふことは核分裂を人為的に起こしてはいけないのではないか。 そう考へたからである。なお原子核科学研究センターの人は自発核分裂のことを言つたのかも知れない。重い元素はごくわずかだが自然に核分裂を起こす。

五月一日(日)「GEを抗議退職した原子炉技術者」
GEの原子炉技術者が三五年前にGEを退職した。マーク1の設計では危険だと主張したが受け入れられなかつた。福島原発の原子炉は一号機から五号機までがマーク1だ。アメリカでは福島原発の事故が起きると三五年前の退職騒ぎをいち早く報道した。日本ではなかなか報道されなかつた。一部の新聞が遅れて紹介した。
GEの設計も問題だが、そのまま採用した日本は更に問題だ。アメリカは地震や津波がほとんどない。そのまま採用するからこういふことになる。

五月三日(火)「津波の後の対応」
今回の事故は津波の後の対応の悪さが引き起こした。対応が悪い原因はマニユアルや訓練など日頃の準備不足が原因である。マニユアルの不備はアメリカのやり方をそのまま真似したからだし、訓練の不備は社内の官僚主義が原因ではないのか。

早速政府側に東電の裏工作と内通した動きが出てきた。まず電力各社に負担させようと言ひ出した。今回の事故は東電が原因である。なぜ他の電力会社が負担しなくてはならないのか。無関係の電力各社が負担すればその次は政府が、となる。
今回の事故は東電の事故後の対応の悪さが引き起こした。東電がすべて責任を取るべきだ。政府の負担は許さない。電気料金の値上げも許さない。 地震で倒産した会社や職を失った人は多い。東電だけがしかも人災なのに優遇されることは絶対に許されない。

五月五日(木)「電気料金の値上げを許すな」
東電の裏工作がまた現れた。電気料金値上げを管直人が考へてゐるといふ報道が新聞やテレビで相次いだ。国民と管直人を離反させて自民党長期政権時代の政財界癒着に戻そうといふ高度なやり方である。
とは言へ管直人が値上げを考へてゐるのなら言語同断だ。管直人は許し難いが国民と管直人を離反させて政財官ゴキブリ連合に戻そうといふ動きは更に許し難い。
あ、ここで政財官ゴキブリ連合と表現したことは言ひすぎであつた。深くお詫びしたい、ゴキブリの皆さんに。ゴキブリだつてあんな連中といつしょにされたら不愉快であろう。

五月六日(金)「ユツケ事件との共通点」
ユツケを食べた人の食中毒が相次ぎ、死者は四名に達した。福島原発に続く大事件となつてゐる。この事件で非難されるべきは厚生労働省である。生肉用の基準に達した肉は国内では流通してゐない。それなのに国内のレストランでユツケが堂々と出されてゐる。この事実を放置し強制力の無い衛生基準や行政指導で自分たちに責任が及ばないようにしてきたのが厚生労働省である。
本場の韓国では行政によるレストランへの細菌検査が徹底してゐるそうだ。日本ではどうか。レストランの立ち入り検査では手を洗つているかだとか窓からハエが入らないかだとかを見るだけであろう。
外国の真似をすると必ず外国より大きく劣つたものになる。日本に合つてゐない上に外国の見えない部分を無視するからだ。福島原発も同じだ。マーク1をそのまま福島に建設し、おそらくマニユアルもアメリカの真似であろう。

五月九日(月)「熱効率から見た原発と火力発電」
原発は七割の熱を海に捨てる。電気になるのは三割だけだ。こんな無駄が許される訳がない。火力発電も半分の熱は海に捨てる。電気になるのは五割だけだ。これも許されない。
今後は日本が先頭に立ち、まずは原子力発電、次に火力発電の廃止を世界に訴へよう。電気は水力発電と太陽風力だけでまかなふべきだ。(完)

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