千四百六十九(モリカケ疑獄百九十七の五) 大前研一さんの著作紹介(1.やってる感出していただけ、2.経済×、憲法×、外交×)
庚子(仏歴2563/64年、西暦2020、ヒジュラ歴1441/42年)
第一部「やってる感出していただけ」
十月十六日(金)
週間ポスト10月9日号に大前研一さんの
やってる感出していただけの安倍政権 コロナで負の遺産噴出

が載った。Newsポストセブンから引用すると
最近『同調圧力』(鴻上尚史・佐藤直樹著/講談社現代新書)という本が話題だが、今は安倍前首相を批判するのはおかしいと決めつけるような風潮=同調圧力もある。(中略)通算8年8か月の歴代最長政権が終わった今、安倍政治の問題点と、今後それが引き起こす後遺症をきちんと検証する必要がある。

これは頼もしいことだ。
安倍政権が残した「負の遺産」のうちの一つは、これまでも指摘したアベノミクスの失敗だ。アベノミクスの成果は400万人超の雇用創出と歴史的な低失業率、株高、景気拡大などと言われているが、雇用の増加と低失業率は団塊の世代が大量リタイアした後の人手不足と非正規雇用の拡大によるもので、正規の日本型安定雇用が大きく増えたわけではない。


十月十七日(土)
株高は日本銀行やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による「PKO(買い支え)」と、安倍前首相と黒田東彦日銀総裁のアベクロバズーカで国債を乱発する一方で、日銀が金融機関や生命保険会社などが保有していた国債を450兆円も買い上げ、そのカネが株に回っていたからだ。

株価が急落したら国家財政は大変なことになる。安倍の責任だ。
景気回復も(中略)事実上のMMT(*現代貨幣理論。ある条件下で政府は国債をいくらでも発行してよいという考え方)政策による見せかけであり、実際、景気拡大局面が5年11か月続いたといっても、それはほとんど横ばいの地を這うような「ミミズ景気」でしかなかった。

そして
そうした負の遺産が、新型コロナ禍を機に一気に噴き出してくる。

安倍が政権を投げ出したかったのは、これが理由かも知れない。

十月十八日(日)
大前さんは、ホテル旅館飲食店の廃業と、テレワークや業務の電子化で正規従業員の仕事が大幅に削減されることを指摘したあと
株高も砂上の楼閣だ。大半の日本企業は業績が上がっていないが、にもかかわらず株高になっているということは、要するに株バブルだ。これがはじけたら、日銀とGPIFが保有しているETF(上場投資信託)や株が内部爆発してしまう。本来、株が危なくなったら投資資金は不動産にシフトするが、すでにオフィスビルの空室率は全国的に上昇中で、東京都心の中古マンション価格も下落している。だから、REIT(不動産投資信託)もテレワーク時代に需要が拡大する物流センター以外は暴落している。

結論として
つまり、アベノミクスは副作用が強いカンフル剤や鎮痛剤のようなものであり、効き目が切れたら、激しい後遺症に見舞われるのだ。
振り返ってみれば、安倍政権は次々と看板を掛け替えて国民の目先を変えながら「やってる感」を出していただけで、結局、何もできなかった。


十月十九日(月)
大前さんの以上の指摘で、重要な部分をまとめると
1.団塊の世代が大量リタイアした後の人手不足と非正規雇用の拡大によるもので、正規の日本型安定雇用が大きく増えたわけではない。
2.株高は日本銀行やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による「PKO(買い支え)」と、(中略)国債を450兆円も買い上げ、そのカネが株に回っていたからだ。
3.大半の日本企業は業績が上がっていないが、にもかかわらず株高になっているということは、要するに株バブルだ。
結論として
4.アベノミクスは副作用が強いカンフル剤や鎮痛剤のようなものであり、効き目が切れたら、激しい後遺症に見舞われるのだ。
そして安倍は政権を放り出し、逃げた。

第二部「経済×、憲法×、外交×」
十月二十日(火)
大前さんがプレジデント10月30日号に
「長かっただけの安倍政権、経済×、憲法×、外交×」長期政権"功"を探すのが難しいワケ

と云ふ記事を書かれた。プレジデントオンラインによると
安倍首相が辞意を表明したのは、歴代最長の記録を塗り替えた4日後のこと。(中略)自分で引き延ばした自民党の総裁任期を1年残しての途中辞任は「無責任」の批判を受けたとしても仕方あるまい。(中略)安倍政権の功罪は、3つぐらいの観点で検証するとわかりやすいと思う。1つは安倍前首相が「やる」と明言していたことをやったかどうかである。安倍政権発足当初から強く発信していたメッセージの1つは「戦後レジームからの脱却」だった。


十月二十一日(水)
敗戦国となった日本は、先の戦争の総括を自国でしないまま、戦後はGHQの占領政策によって戦前を全否定するような思想教育を施され、憲法を押しつけられた。
太平洋戦争とは何だったのか。アメリカの占領政策は戦後日本の思想体系にどのような影響を与えたのか。日米安保の呪縛はなぜ生じたのか。若い世代のためにもそうしたことを総括すべきだと私は思っている。

ここまで大前さんに同感だ。そして、これと反対のことをやってきたのが安倍だ。
戦後レジームを見直す作業には占領政策や東京裁判、もっと言えば原爆投下の正当性の検証なども入ってくる。これらをアメリカに警戒されて冷遇されると、安倍前首相は手のひらを返した。アメリカ連邦議会で「日本にとってアメリカとの出会いとは、すなわち民主主義との遭遇でした」と歯の浮くような演説をするなど、180度向きを変えて対米従属に戻ってしまったのだ。


十月二十二日(木)
もしかして安倍前首相は憲法全文を読んだことがないのではないかと思う。それぐらい最初から最後まで9条のことしか言っていない。私は改憲派ではなく、(中略)白い紙の上に憲法を書き直すべしという「創憲派」である。
大前さんの立場を心から支持する。米ソ冷戦下で革新勢力が護憲を主張したのは、米軍撤退と云ふ目的があったからだ。旧革新勢力は、創憲に加はるべきだ。

十月二十三日(金)
もう1つ、安倍前首相が政権の最重要、最優先課題に掲げたのが北朝鮮による「日本人拉致問題」である。(中略)安倍前首相は拉致問題をてこに総理総裁へと駆け上がって、「安倍内閣でこの問題を解決する」としばしば強い決意を口にしてきた。
実際にやったことと云へば
拉致問題はまったく進展していない。真剣に取り組んでいるように見せていたが、実際にはトランプ米大統領に金正恩朝鮮労働党委員長への伝言を頼んだだけ。(中略)解決の糸口も見えないまま、7年8カ月を無策で過ごした罪は重い。

国民は、この件でもっと安倍を非難すべきだ。

十月二十四日(土)
総合評価は
安倍前首相が自分で「やる」と掲げた3つの政治課題、「戦後レジームからの脱却」「憲法改正」「拉致問題」については何一つ果たせなかった。総合評価は0点ではなくマイナス300点。

そのとほりだ。次に話題が変はり
アベノミクスで景気が良くなったと評価する向きもあるが、それはジャブジャブと国債を発行し、日銀が450兆円もの国債を民間の金融機関から買い取る形でマーケットに資金を垂れ流した結果にすぎない。
コロナ禍でアベノミクスが失速したというのも見立て違い。金利とマネタリーベースをいじるだけのアベノミクスは20世紀型の経済政策であって、高齢化、ボーダレス化、サイバー化などが進んだ21世紀の経済にはまったく効果がないのだ。消費税増税のタイミングも最悪で、安倍政権の経済政策に評価できるポイントはない。

450兆円は額が大き過ぎて見当もつかない。一人当りにすると450万円だ。一家四人なら1800万円だ。今は株高でごまかしてゐる。

十月二十五日(日)
このあと外交について、ASEAN、中国、韓国に対し成果がなかったことを指摘した上で
プーチン大統領は親日家だから日ロ関係がマイナスになったわけではないが、またとない大きなチャンスがあったのに実を結ぶことはなかったわけだから、外交的には失敗と言っていい。ということで、悪名高いトランプ米大統領のご機嫌取りに尽くした点を除いては、外交上のポイントも見当たらない。

安倍に対する結論として
史上最長政権とは思えないくらい“功”を探すのが難しい。そこにモリカケ問題、桜を見る会、河井夫妻の異様な資金をめぐる逮捕劇、黒川弘務検事長の処遇と検察庁法改正、といった首相として罪深い“負の遺産”を足し合わせれば、失われた時間は7年8カ月と長すぎる。
(終)

その四、(モリカケ疑獄百九十七の四)(モリカケ桜疑獄百九十八の一)

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