千四百四十二 1.優れた記事「8割の社員が辞めても貫いた後継者の覚悟」、2.悪い記事「顧問」
庚子(仏歴2563/64年、西暦2020、ヒジュラ歴1441/42年)
六月十九日(金)
GoogleだったかYahooだったか、検索サイトに「8割の社員が辞めても貫いた後継者の覚悟」と云ふ記事が載った。最初は題だけを見て、従業員を大量解雇させたい経営者が真似をして、事業内容をわざと変更し八割を辞めさせることがあっては困る、と食はず嫌ひの判断をしてしまった。
それから数ヶ月が経過し、この記事と別の記事で特集を組まうと読んでみると、実に優れた内容だった。BizHintに載った「8割の社員が辞めても貫いた後継者の覚悟 〜創業200年の老舗が起こした改革20年史〜」と云ふ記事である。
江戸時代から200年以上続くくず餅の老舗、「船橋屋」。同社が製造・販売を手がけるくず餅は、かつて芥川龍之介や吉川英治など、日本を代表する文豪達も愛した逸品です。(中略)450日にわたる乳酸発酵を必要とする一方、消費期限はわずか2日というデリケートな和菓子です。
で始まる。
25年前、船橋屋は現在の姿からは想像もつかない「老舗病」を抱えていました。(中略)私が 入社当時の社内を見渡すと、職人達が夕方4時頃から宴会を始め、酔った挙げ句に取っ組み合いの喧嘩を始める。仕事中に競馬に行くのも当たり前。店頭では深酒した当社の社員が居眠りしていたという、惨憺たる状況でした。
改革したことは
まず、「ルールと仕組み」を作りました。(中略)その一つの例が、品質マネジメントシステムに関する国際規格である「ISO9001」の取得です。ISO9001の取得基準を満たすことを錦の御旗とし、社内のルール改革の徹底を進めました。もちろん、社内では猛反発が起こりました。これまで楽しくやってきたところに突然、社長の息子がやってきて、自分達に不都合なことを次々にやりだすわけですから、面白くなくて当然です。
その結果
社員の8割が辞めていきましたが、全員、自主退職 です。当社は200年もの間、一度も解雇はしておらず、社内改革に際してもリストラは行いませんでした。
これは賞賛されるべきことだ。社長はまづ、今の人数でできる経営方針を立て、次に将来の計画で不足する人材があれば採用なり従業員への教育をすべきだ。ところが社長のなかには、何をやってもよいのだ、嫌ひな人間は追ひ出してよいのだ、と勘違ひする人がゐる。部長や課長にはそれぞれ業務の範囲があり、それは社長も同じだ。嫌ひな人間を追ひ出すことは、社長の業務範囲ではない。
今の状態からは想像できないかもしれませんが、ここまでの改革を成し遂げるまでに、20年もの歳月がかかりました。
その辛抱強さに敬服する。
年に2回、社内アンケートを実施しています。全員を匿名とし、社員に本音をぶつけてもらう。次の改善策を考えるために非常に重要な取り組みです。経営者として耳の痛い話も容赦なく出てきます。しかし、風通し良く、(以下略)
また、 職人のための「マイスター制度」もつくりました。 (中略)見習いから巨匠まで、レベルごとに点数が決まっており、レベルが上がれば手当も増える。この制度をきっかけに、職人の意識が大きく変わりました。自分達の仕事が見える化し、きちんと評価される手応えを得られたからだと思います。しかも、この マイスター制度ではマイナス評価を一切しません。 各自が頑張ったら、その頑張った分を加点するため、(以下略)
さらに言うと、船橋屋では、 給料が成果ではなく行動で決まります。 (以下略)
うちは会社幹部を決める時にも総選挙を行います。全ての正社員と5年以上勤めるパート社員を合わせると150名ほどになりますが、(中略)2015年に第1回総選挙を実施したところ、当時34歳だった女性社員が過半数の票を集め、執行役員に抜擢されました。 (以下略)
世の中には、優れた経営者がゐるものだ。
社長も含めて組織全体がワクワクし続けること ではないでしょうか。多くの社長が数値目標だけを社員に示し、成果を出せというけれど、(中略)社長が追求すべきは売上や利益、時価総額だけではありません。もっと大事なことは、社員にワクワクする目標を示すことです。
具体的には
船橋屋では「くず餅という発酵食品を日本全体に広めること」「くず餅乳酸菌を世界に広めること」という挑戦が、その「ワクワク」に当たります。(中略)調査したところ、くず餅が発酵食品だとご存じの方は全体の20%に過ぎませんでした。つまり、80%は新規開拓できるマーケットがある、というわけです。ワクワクしますよね。
これほど優れた記事は、十年に一度しか現れない。貴重な記事だ。
六月二十日(土)
昨日の優れた記事とは逆に、題と内容の両方が悪い記事(人材紹介会社の広告?)が数ヶ月前にあった。顧問として働く内容で、しかし該当する記事が見つからないので、題は判らない。
この記事を悪いとする理由は、今から二十年ほど前に、或る外資系コンピュータ(ハート、ソフトともに)会社を定年になったマーケティング関係者が「顧問」の肩書で入社した。そして私と同じ部署に所属した。その数ヶ月後に社内の売り上げ速報システム構築の会議に出席したらしく、「皆が売り上げについて勝手なことを云ふので切れさうになった」と発言したので、この人は勘違ひしてゐることがすぐ判った。
顧問に期待することは、前職の人脈で仕事を取ってくることだ。この人は、ミドルレンジコンピュータでは世界的に有名な会社の日本法人にゐたから、中堅ソフトウェア会社に行けば自分ほど優秀な人間はゐないと勘違ひした。
売り上げ速報システムができないのは、社内の事情がある。そんなことは社内に長くゐる人間のほうが詳しい。この人は次に、私を派遣に出さうとした。派遣については、過去にひどい扱ひを受けたため、派遣は違法だからやらないと宣言してある。それなのに派遣を伏せて派遣に行かせようとした。前にも似た事件があり、これで二回目だ(この数年後に更にもう一回似た事件が発生する)。
このときの派遣先は外資系コンピュータ会社のOS部門だから、本来は魅力的だ。しかしWindowsサーバ(当時はWindowsNT)とLinuxの出現で、ミドルレンジの独自OSは消滅寸前だった。そんなところに行く訳がない。
この顧問は一年ほど在席しただけで退職し(させられ?)た。顧問は古巣から仕事を取って来ることが仕事だ。それを勘違ひすると、かう云ふ結果になる。この男は取引先を定年後に顧問として雇用された第一号だ。この事件の後は、仕事を取って来る、或いは受け入れることで仕事を回してくれる人が来るやうになった。(終)
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