千三百八十五 コンサルタントは役に立たない
己亥、西暦2019、ヒジュラ歴1440/41年、紀元2679年、仏歴2562/63年
十一月二日(土)
今から二十三年前でアメリカ長期出張のときに、アメリカ永住権を持つ日本人と、MBA(経営学修士)なんて役に立たないですよね、と話したことがある。向かうが言ったのではなく、私が言った。まだMBAが日本には無く、アメリカでもそれほど広まってゐない時期だった。
同じ頃、NHKラヂオ第二放送の「やさしいビジネス英語」を聴いてゐたら、番組の最後に行ふ英語の名言とその日本語訳で、コンサルタントは仕事をせずお金だけ持って行くと云ふものがあり、同感だった。
現場のことが判らずにコンサルタントはできない。現場のことがよく判る人こそ、その分野のコンサルタントだ。日経新聞電子版に
コンサル人気のなぜ 「とりあえず銀行」組が流入?
と云ふ記事が載った。それによると
学生の間でコンサル人気が止まらない。以前から就活生の憧れといわれてきた外資系戦略コンサルの一つ(中略)では「ここ2年で応募数は1.5倍に増加。
別の戦略コンサルは
5人の採用枠に4000人近くが応募し、(以下略)
有名なコンサルタント会社が数名を募集し数千名が応募すれば、それは優秀な人を採用できるだらう。コンサルタントと云ふ職種自体が優れてゐるからではない。
戦略コンサルは、営業戦略やブランド戦略、新規事業立案、中長期経営戦略などの提案が中心。一方、総合コンサルは、戦略を立てるだけでなく、人事やIT(情報技術)システムなどを含めた実行支援までするのが特徴だ。クライアントに常駐することも多い。その総合コンサルが躍進した理由の一つが、採用枠の拡大だ。
今回この記事が目に留まったのは「クライアントに常駐」の部分だ。かつてプログラマーは花形の職種だった。ところが客先常駐が多くなり、新たにシステムエンジニアができた。そのうちシステムエンジニアも客先常駐が多くなり、スペシャリストやプロジェクトマネージャーやストラテジストや監査技術者が上位になった。
客先に常駐すると、プログラマーと同じ道をたどる。その理由は、会社の能力と個人の能力の違ひだ。例へばトヨタ自動車に発注することは、トヨタ自動車を信用してのことだ。この車を製造したのは誰々さんと誰々さんです、では信用できないし、それぞれの従業員も能力を発揮できない。
客先常駐について云ふと、個人ではなく会社の組織として仕事をしなくてはいけない。完全に常駐でもいけない。毎週、会社に戻らなくてはいけない。
十一月三日(日)
需要が増えているのは戦略コンサルも同様だが、もともとが少数精鋭。(会社名略)も新卒採用を増やしたとはいえ、20~30人程度にとどまる。一方、総合コンサルの新卒採用枠はこのところ急激に増え、(会社名略)や(会社名略)に至っては300人規模と桁違いだ。
会社名を挙げないのは、私はコンサルタント会社を信用してゐないからだ。さて学生の側も変化し
「少し前なら『とりあえず銀行』とメガバンクを受けていたような安定志向の学生も、リストラや採用枠の減少などのニュースで銀行の将来に不安を感じています。彼らは、どこの会社でもやっていける基礎能力をつけることで安心を得たい。そう考えたときにコンサルが魅力的な選択肢として浮上してきているのではないでしょうか」
つまり、学生はコンサルタント会社を踏み台としか見てゐない。
十一月四日(月)
こんな話も載ってゐる。
「実はコンサル業界のトップとされてきた(数社の会社名略)といえども、会社として採るべくして採った人材だけでなく、クライアント先への常駐ニーズの増加に伴い、採用枠を広げた結果採られた人材がいるというのは、人材業界ではよく知られた話です。経営人材を探している事業会社のトップからも『◯◯(社名)の2軍は勘弁して』と言われることもあります。(以下略)
つまりコンサルタント会社は組織で仕事をしてゐない。自動車を購入するときに、2軍作業員が設計したり製造した車は勘弁して、なんて云ふか。
プロの経営者は偉い。カルビー前社長の松本さんは大したものだ。Lixilの瀬戸さんは、まだ判らない。プロの経営者と比べて、コンサルタント会社が信用できないのは、組織で仕事をしないからだ。プロの経営者は組織を動かす。(終)
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