千三百五十七 ヤオハン元会長亡くなる
己亥、西暦2019、ヒジュラ歴1440/41年、紀元2679年、仏歴2562/63年
八月二十九日(木)
ヤオハン元会長の和田一夫さんが亡くなった。九十歳だから、男の平均寿命八十一歳よりかなり長い。ヤオハンが倒産したことを考へれば、気落ちして平均寿命より短いのが普通だ。和田さんは、倒産後も心が豊かだったのだらう。
私か妻と上の子を連れてアメリカのサンフランシスコ郊外に九か月滞在したとき、日本食材の買ひ物は、サンマテオのスルキか、サンノゼのヤオハンに行った。
だから帰国した翌年に、ヤオハンが倒産したと聞いたときは、本当に驚いた。サンノゼのヤオハンによく行ったことと、和田さんの長寿に敬意を表し、この特集を作った。
八月三十日(金)
ヤオハンが倒産した理由については、多くの人が書いたから、別の角度から見たい。テレビドラマ「おしん」のモデルは和田さんのお母さんと云はれた。これが倒産の原因と見た。
国内はおろかアジア各国でも有名になった「おしん」。そのモデルの息子と云はれれば、さすがの和田さんも有頂天になる。そして借金を重ねて、事業を拡大した。事業が順調に回るうちは、いくら借金しても大丈夫だ。しかし不景気や、同業者の動向、消費者の嗜好の変化。これらにきちんと対応しないと大変なことになる。
ヤオハンの倒産で連想するのがダイエー、セゾン、サトームセンの経営危機だ。このうちダイエーとセゾンについては、経営者の悪い話も流れた。中内さんが息子に継がせるため幹部を追ひ出しただとか、倒産後にダイエーホークスの株を息子に継がせたなど。セゾンについては西武鉄道の弟とそろってスキャンダルを聞いた。
私にとりサトームセンが一番懐かしい。勤務先が鶴見の時に、近くへサトームセンが出店した。店員のやる気が高いのには感心した。伸びる会社は違ふと思った。パソコン関係の書籍売り場も広かった。実家の近くにも出店した。ここにも買ひに行った。
その後、まさか経営危機で買収されるとは思はなかった。鶴見はヤマダ電機になり暫くはそのままだったが、そののち店舗の面積が激減した。実家の近くは閉店しダイソーになった。
八月三十一日(土)
ヤオハンは或る時から、国際流通グループヤオハン(本部香港)と新聞に書かれるやうになった。ニュースで「国際流通グループヤオハン(本部香港)は31日新しい食料品を販売すると発表した」と云った具合だ。
これは嫌な印象を持った。「おしん」のモデルの息子に次ぐ慢心かと思った。それから転換社債とワラント債を大量に発行し、世界各地に進出した。国際流通グループヤオハン(本部香港)になってから経営危機が表面化するまで、わずか六年だった。
和田さんに関しては、悪い話を聞かない。写真を見ても善人の顔だ。(終)
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