千三百五十四 「人手不足を理由に採用基準下げた会社の行く末」を批判
己亥、西暦2019、ヒジュラ歴1440/41年、紀元2679年、仏歴2562/63年
八月二十三日(金)
東洋経済オンラインに
人手不足を理由に採用基準下げた会社の行く末
「入社してから育てる」がNGなこれだけの理由

と云ふ記事が載った。気になるところが二つあったので指摘したい。一つ目は
人材の素質を見抜くポイントは、次の2つです。
○先天的・後天的能力
○価値観
能力が先天的なものか、後天的なものかをしっかり見極めることです。「後天的能力」は、採用してからでも教育すれば引き上げられる能力なので、採用基準から外してOKです。「先天的能力」は教育してもなかなか変化させることが難しい能力なので、採用基準に盛り込む必要があります。

最初から二行目に「○価値観」があり、これはかなり気になる。経営側の価値観と、被雇用側の価値観は正反対(180度)とまでは行かなくても、かなり(60度くらい)は異なるのが当然だ。記事は続いて
その理由と根拠を、脳の取扱説明書ともいわれる実践心理学NLP(神経言語プログラミング)を使って詳しく解説します。
NLPでは人間の意識レベルを5つの階層に分類しています(スピリチュアルも含めると6つですが、ここでは5つとします)。
①自己認識(アイデンティティー)
②信念・価値観
③能力
④行動
⑤環境

このうち
変化させるのが難しいのは、①「アイデンティティー」と②「信念・価値観」です。

アイデンティティーと信念・価値観は違ふのが当たり前だ。私が気になったのは、この二つに言及することは、労働組合などをしてほしくないためではないのか。私が見たところ、経営側と個々の労働者が対立した場合は、ほとんど経営側が悪い。わざわざ個人で会社と対立する人なんてゐないからだ。
会社から退職勧奨や嫌がらせや不当解雇を受けた。多くの人はそれを受け入れてしまふが、一部は労政事務所や労働組合に駆け込む。駆け込む人を避けるため「アイデンティティー」と「信念・価値観」を重視するのなら、それは会社側が悪い。団結権と争議権は労働者の権利だ。
権利の意味が判らない人がゐる。もし人事部長が退職勧奨を掛けてきたら「あなたは給料をもらふのを辞退しなさい」と言ひ返さう。権利の辞退とはさういふことだ。
とは云へ、経営側が追ひ出したいと思ふことに一理ある場合もある。能力が低すぎる人と、性格が悪い人だ。だから五つの階層は
①性格の善し悪し
②意欲
③能力
④行動
⑤環境

でなくてはいけない。ここで各社の人事部に厳しいことを云ふと、意欲は労務対策で変更することが可能だ。つまり階層は、意欲が一番上になり
①意欲<--労務対策
②能力
③行動
④環境


八月二十四日(土)
二番目の気になるところは
入社後の教育により、引き上げられる代表的な能力は、「コミュニケーション能力」です。ところが、多くの企業で、コミュニケーション能力の高い人材が人気を集めています。経団連の「新卒採用に関するアンケート調査」で、選考に当たってとくに重視した点の16年連続1位となっているのが、コミュニケーション能力です。面接選考が主流ですから、受け答えがしっかりし、自身の言葉で話ができる人ほど評価が高くなるのはある意味仕方がないことです。
では、コミュニケーション能力は引き上げられない能力でしょうか?
答えはNOです。

コミュニケーション能力は、引き上げることができる人を社内教育で引き上げることはできる。しかし出来ない人は出来ない。これは出来ない人が悪いのではなく、各能力の違ひだ。能力は総合点では、話について来れるか。各能力では集団作業、営業能力等々。
各能力は五年、十年と、長い年月を掛ければ、伸ばすことが可能だ。しかし会社はそんなことができない。ちなみに性格と呼ばれるものは、各能力の組み合はせだ。
被雇用者の性格の善し悪しは、先ほど述べたやうに、労務対策により意欲で修正ができる。しかし経営側の性格の善し悪しは、意欲で修正ができない。なぜなら労務対策は経営側が行ふのだから。しかし経営コンサルタントが絡めば、可能となる。
経営コンサルタントのすべきは、経営側の性格の善し悪しを、意欲段階では正しい方向に導くことだ。労働者の採用で選別をそそのかすことではない。(終)

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