千三百四十九 「天才を潰し秀才を重用した」日本型組織の末路、を読んで
己亥、基督歴2019+3α年、ヒジュラ歴1440/41年、紀元2679年、仏歴2562/63年
八月十六日(金)
東洋経済オンラインに
「天才を潰し秀才を重用した」日本型組織の末路
東條英機はなぜ石原莞爾より優遇されたのか

が載ったので、紹介したい。駿台予備校世界史科講師で作家の茂木誠さんの執筆だ。冒頭に、極東軍事裁判で通訳の声を聴くためヘッドホン姿の東條英機が写る。ずいぶん温和な顔だ。権力の座から落ちたばかりか、日本は敗戦し、しかも自殺に失敗したことを考へれば、当然ではあるが。
それに対し、背後の警備兵の顔つきが悪い。この写真だけで、極東軍事裁判は日本への報復を目的としたことがよく判る。だから死刑になった戦犯に対し、国会が遺族年金の支給を共産党を含めて賛成したのは、当然のことだった。
ところが今では、米英仏蘭は民主主義だから正しく、日独伊は独裁だから間違ってゐると云ふ、奇妙な主張がほとんどだ。民主主義は余裕のあるときにしか機能しない。米英仏蘭は植民地を持つから、民主主義を養へた。日独伊は(1)植民地を持たず(2)貿易経済に組み込まれてゐたから、民主主義を養へなかった。
戦後のアメリカが、当時は独裁の南ベトナム、韓国、台湾を支持したことで明らかなやうに、民主主義かどうかは関係がない。今だってアメリカは、皇太子が殺人に関係したサウジアラビアを支持するし、叔父と兄を殺した金正恩と仲が良い。第二次世界大戦の原因は、米英仏蘭が世界大恐慌のときに植民地をブロック経済にしたことだ。こんなことは米ソ冷戦時代には、当たり前の話だった。

今回の記事は感想を投稿する欄があり、多くは賛意を示すが、反対意見もある。例へば
途中の「狩猟民と農耕民の気質」が意味不明。根拠が全くない。(中略)記事の定義に従えば、ヒトラーは明らかに「狩猟民的気質(分裂気質)」だが、完全に戦況を読み違えていた。/こういった変な言説や決めつけは、歴史を読み誤ると思う。

私は茂木さんを応援する感想を書かうとしたが、ユーザ登録(無料)するのに年収まで入力しないといけない。だからユーザ登録を止めた。
記事を読み直してみると、感想も一理ある。茂木さんは、人類が狩猟時代だったころの分裂気質、農耕時代になってからの粘着気質とした上で、石原を分裂気質、東條を粘着気質とする。それよりは、天才、秀才の分類を用ゐて、狩猟時代が天才気質で石原、農耕時代を秀才気質の東條としたほうがよくないか。その理由は、分裂気質と粘着気質の出現割合にそれほど違ひがなく、石原は分裂気質の天才、東條は粘着気質の秀才と、分類が二次元になるからだ。
とは云へ茂木さんはその後、東郷平八郎までの叩き上げ型が優れ、東條英機のやうな学校秀才型が劣ることは指摘してゐるから、全体ではほぼ正しい。

八月十七日(土)
茂木さんは、東條は権力欲が無くたまたま首相になったとする。確かに東條は陸相の地位には固執しても首相になりたかった訳ではなかった。しかし首相になってからはその地位に固執した。戦争末期には東條が首相を辞職しないので、暗殺の計画まであったが、サイパン島が陥落の後に辞職して未遂に終った。
東條は有能な官吏ではない。まづ人事がでたらめだ。東條は嫉妬深いから、優秀な人ほど中央から遠ざけたとする説さへある。或いは、わざと仲の悪い者を司令官と参謀長に任命して牽制させたとする説もある。インパール作戦は、人事の失敗と、軍上層部として作戦管理の失敗の二つで、東條に全責任がある。

天才を潰し秀才を重用するのは、役割と地位が未分化だからだ。石原のタイプは、望ましいのは参謀次長、それが無理なら顧問にするのがよい。問題は、参謀総長なり陸軍大臣に石原の云ふことの是非を判断する能力があるか。それだったら石原の云ふことはすべて実行すればよい。
東條が陸相兼参謀総長兼首相だったのは、日本にとり最悪だった。嫉妬深いから石原を顧問に任命しても、提言を聴くはずがない。役割と地位の未分化は、組織の堕落が原因とも云へる。出世の道があれば、それに殺到するからだ。一番いいのは、組織を堕落させないことだが、それが不可能なら分化させるのがよい。
分裂気質と粘着気質については、どちらにも天才と秀才がゐる。その出現割合に差があるのかと、二つの気質の天才と秀才にどのやうな差があるかを、更に考察しないと、昨日の批判的感想ももっともだ。
ヒトラーについては、粘着気質だと思ふ。演説がうまく人を魅了することと、独裁者になり易い。尤もクレッチマーの三気質自体が、今ではあまり用ゐられない。(終)

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