千三百二十七 営業職は経済活動の中心
己亥、基督歴2019+3α年、ヒジュラ歴1440/41年、紀元2679年、仏歴2562/63年
六月二十一日(金)
営業職は経済活動の中心だ。それなのにリストラ対象者を営業職に回して自主退職させることが、これまで多くの企業で行はれて来た。最近もある大手企業で、5000人の間接部門を営業職に回して、そのうち2850人が早期退職した。日刊ゲンダイ電子版によると
早期退職者募集に踏み切った背景を幹部社員が語る。
「うちは昨秋に事務部門社員の3割に相当する5000人の配置転換を実施しました。(中略)子会社3社を吸収合併したことで、もともと多かった間接部門の社員がさらに浮いたためです。配置転換先はほとんど営業部門への異動でした」

元々の事務部門に活を入れるため営業部門に回したのなら賛成だ。だからニュースが流れても、私は特に感想を持たなかった。しかし子会社3社を吸収合併したことによる余剰人員対策となると、話は逆だ。元々の事務部門は安泰で、元SEや子会社の事務職だけが対象になる。これでは雇用時の身分による身分差別だ。しかも
「間接部門の社員はSE関係の会社、及びSE担当から総務、経理に回されたケースが圧倒的に多く、『技術者が総務で何の仕事をしろというのか』『ソフトの開発をやらせないから稼げないんだ』といった不満を仲間同士でまき散らす者が増えてきた。こんな社員でも辞めろとは言えません。文句を言うなら稼いでこいと、ほぼ全員を営業に配置転換したんです」

全員が不満をまき散らす訳ではない。一部がまき散らしたのに、全員を営業に配置転換したのなら、大多数の人たちは被害者だ。
45歳以上の社員を対象に早期退職者の募集を実施。同時に配置転換の対象者全員に面談を行い「応じない場合は人員削減する」(副社長名略)と迫ったのだ。

これでは早期退職者の募集ではない。嫌がらせ退職だ。事実
実は、本来会社が辞めさせたい人員は5600人でした。そのうち面接でまだやる気があると見て、残した社員は2750人でした」

これだと悪質だが、この会社の場合、さきほどの発言の前に
65歳まで(会社名略)で働いた金額を退職金とは別に支払う優遇措置を付けている。
「そのおカネをもらった上、次の会社も紹介するという優遇をしてでも辞めて欲しい社員が数多くいたということです。

前の発言に始まりの括弧がなく、後ろの発言に終りの括弧がないのはそのためだ。さて、次の会社を紹介するのだから悪くはないではないかと早合点してはいけない。
私が今の会社で都労委、中労委まで申し立てる騒ぎになった間接原因は労働者派遣だが、直接原因として倒産寸前の或る銀行(今はない)から社長(当時)の大学時代の友人を押し付けられた。受け入れないのなら、借した金をすぐに返済しろと云ふ訳だ。この男が入ったせいで社内の人間関係がめちゃくちゃになり、部長・事業所長の退職者二名、この男を厳しく批判するのが(元)取締役二名、心臓麻痺による急死者一名を出した。以上は私の知る範囲なので、実際はこの二倍はゐると思ふ。
今回この大手会社が紹介する「次の会社」が取引先と云ふことは避けなくてはならない。もし取引先で玉突き退職勧奨が行なはれた場合は、この会社からの玉突き退職勧奨が原因だと云ふことを前面に出して、労働争議を起こすとよい。世の中は労使の協力で成り立つ。玉突き退職勧奨は労使協力を壊すものだから、絶対に認めてはいけない。

六月二十二日(土)
営業職に回すことが、なぜ退職勧奨になるのかを考へて見よう。昨日述べたやうに、営業職は経済活動の中心だ、と云ひたいが、本来は農業、製造業と比べると、それほど中心ではなかった。しかし第三次産業の比率が大きくなるにつれて、営業職は経済活動の中心になった。
営業は難しい。なぜならお客様の頭に合はせて話さなくてはいけない。頭の悪いお客様に合はせるならともかく、自分より頭のいいお客様に合はせることは、本来は不可能だ。
とは云へ、別の能力で補ふことができる。強引、お世辞がうまい、ごまかす、腹黒い。あ、これは悪い例だった。性格がよくお客様から信用される、こつこつと努力する、誠実に解決策を見つける。これがよい例だ。25年くらい前に或る営業は、テレビのニュースを毎日早送りで観ると語ってゐた。お客様の話題に付いて行くためだ。
だから営業職は、本来は知的で、能力を要求される。それなのにSE、事務職が営業に回れない理由を次に考へよう。

六月二十三日(日)
どの仕事も同じだが熟練が必要だ。今までSEだった人を営業にするにはまづ教育を実施し、次にOJT、更にはチームの一員として仕事を分担し、少しづつ範囲を広げなくてはいけない。
売上額のノルマを押し付けることは、営業の悪い形態である。とは云へ、独立志向の強い人が活躍することもある。雇用された個人商店と呼んでも良い。経験年数の少ないうちはチームの一員、経験を積んだら売上額と云ふやり方が向く人もゐるだらう。向かない人もゐるだらう。
売上額が向く人は、体育会系と呼ばれることもある。勝ったか負けたか、何点取ったか取られたか。結果だけで判断する。Diamondオンラインに
レオパレスや大和ハウスの不祥事、元凶は時代錯誤の「体育会ノリ」だ

と云ふ記事が載ったので、紹介すると
会社を揺るがすほどの不祥事に発展したレオパレス問題に次いで大和ハウス工業も、と不祥事が続発している。強引な営業が問題になっている大東建託もそうだが、人口減少という抗えない時代の変化に対して、「根性」と「頑張り」で立ち向かおうとする、時代錯誤の経営哲学が背景にあるのではないだろうか。(ノンフィクションライター 窪田順生)

で始まる。
賃貸住宅建設業界にお勤めの方ならばよくわかると思うが、この世界はかなり体育会で、(中略)有名なのは大東建託の「飛び込み営業」だ。「大東建託現役社員が指摘『ひたすら飛び込む』営業戦略の弱点」には、そのあまりのハードな体育会のノリから、営業マンが「辛いなあ。死んだ方がマシかなあ」と悲痛な声を上げていることが紹介されている。

その一方で
確かに度の過ぎた「体育会のノリ」も問題だが、企業が成長するうえには、ある程度は必要ではないかと思う人もいるだろうが、それは大きな勘違いだ。
「人口減少社会」における体育会のノリは百害あって一利なし。体罰指導で急に強くなる部活と一緒で、瞬間風速的に業績は上がるかもしれないが、中長期的に見ると、パワハラや不正が溢れ変えるブラック組織をつくることにしかならないのだ。

そのとほりだ。ここを改善しないと、SEを営業に回しても退職勧奨にしかならない。人口減少社会では、優れたマーケティングこそ必要だ。

六月二十四日(月)
日本IBMが二十年くらい前に、商談のきっかけを作る担当、商談を進める担当、受注する担当と、営業をチーム制にした記事を読んだことがある。今も続いてゐるのか不明だが、おそらく続いてゐると思ふ。
体育会系や、退職勧奨対象ではない営業にするには、チーム制が一番良い。(終)

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