千三百十三 1.松本晃さんの主張で一つ足りないこと、2.印象に残った四つの記事
己亥、基督歴2019+3α年、ヒジュラ歴1440/41年、紀元2679年、仏歴2562/63年
1.松本晃さんの主張で一つ足りないこと
五月二十八日(火)
松本晃さんはプロの経営者として有名だ。カルビーを急成長させ、ライザップで再建の道筋を立てた。その松本さんが人の評価法について日経新聞電子版に
プロ野球選手をどうやって評価しますか?(中略)「あいつはいいやつだ。しかし、また一回戦で負けた」という人を高く評価しますか?(中略)評価の尺度を成果以外にしたらどうなるか。結局、好き嫌いの世界になってしまうのです。そうすると組織は絶対ダメになる。

この意見には賛成だ。賛成だが、一つ足りないところがある。成果は無理をせず出したものでなくてはいけない。特に上の人間が成果を出すため部下に対して無理をさせ、本人は出世、かつての部下たちはうつ病、退職。さうならない成果が必要だ。

2.印象に残った四つの記事
五月二十三日(木)
印象に残った幾つかの記事を紹介したい。まづは東洋経済オンラインの
人手不足は「労働条件が酷い」会社の泣き言だ

と云ふ記事だ。
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。退職後も日本経済の研究を続け(以下略)

で記事は始まる。
近視眼的な日本の経営者たちは、今の状況がチャンスであることに気づいていないのか、国に対して極めて危険な訴えをしています。/それが、「人手不足」を理由にした安易な外国人労働者の受け入れ枠の拡大です。(中略)人手不足がひどいと言われている多くの業種には、ある共通の特徴が存在します。それは労働条件が過酷であることです。特に、非正規労働者が多く、賃金水準が非常に低い業種ほど人手不足が目立ちます。

同感だ。今まで失業者が多かったため、非正規雇用や低賃金が増えた。これからは人手不足で元に戻さなくてはいけないのに、今まで甘い汁を吸った経営者が外国人労働者の拡大を狙ふ。

五月二十四日(金)
次は日刊SPAの
40過ぎた“ヒラ社員”の実像 平均年収、未婚率、モチベーションは?

と云ふ記事だ。
役職についていない40~44歳が約67%、45~49歳が約59%、50~54歳は約56%と、どの世代でも半数以上が“役職がない”ヒラ社員である。

このことは何の不思議もない。昔は定年までヒラが当たり前だった。だから記事の
50代前半のヒラ率は50%前後。2人に1人は負け組

はひどい言ひ草だ。昭和六十年代の富士通を例にとると、技能職は職長が最上位でこれはヒラの最上位だ。新たにその上に工師ができて、これは技術職の技師補と同格だから主任クラスだ。しかも職長のない職場は職長制度を導入させようと労働組合が主張してゐた。定年までヒラが普通で、管理職になるのは一部。これを間違へると過労死や、長時間残業によるうつ病など精神病の原因になる。

五月二十五日(土)
次はJPpressに著述家、経営コンサルタントの佐藤けんいちさんが書いた
知られざる戦争「シベリア出兵」の凄惨な真実

と題する記事だ。
シベリア出兵は、第1次世界大戦(1914年7月~1918年11月)末期の1918年8月2日に始まった。ロシア本土からの撤兵は1922年10月25日、北樺太からの最終撤兵は1925年5月15日。足かけ7年に及ぶ戦争であった。(中略)戦死者は3500人にも及んだが、ほとんど何も得ることなく終わった(以下略)

得ることがなかったのは日本側の一方的な見かたであり
攻め込まれたロシアから見れば、侵略戦争以外の何物でもなかった。農民を主体にしたゲリラ部隊のパルチザンだけでなく、一般住民も多く巻き込まれ、虐殺され、略奪された。ロシアからみれば、日本は何をするか分からない恐ろしい国というイメージを残すことになったのである。この事実は、きちんと認識しておかねばならない。これが、第2次大戦末期のソ連軍侵攻とシベリア抑留につながっているのである。

私は、独ソ開戦のときに日本がシベリア国境に軍隊を展開したため、ソ連軍はヨーロッパ戦線で苦戦した。それが原因だと思ってゐたが、別に原因があったのだ。それにしてもソ連の感情を考へれば、ソ連が米英側への停戦斡旋をするはずがない。当時の情報機関は何をやってゐたのか。
現地のロシア人に対して行われた虐殺や略奪だけでなく、日本軍内部でも窃盗や脱営・逃走、上官侮辱や抗命などが多数発生し、軍規が乱れていたことを、現地に派遣されていた憲兵隊が記録している。軍規が弛緩していたのは士官もまた同様であった。戦争の目的があいまいで明確ではなかったことが、これらの不祥事を引き起こしていたのである。


五月二十六日(日)
次は東洋経済オンラインに小西美術工藝社社長デービッド・アトキンソンさんが書いた
「社員を解雇する権利」求める人が知らない真実

と云ふ記事だ。
World Economic Forum(以下WEF)の「The Global Competitiveness Report, 2017-2018」という国際競争力評価の報告書の中で、「ビジネスに悪影響を及ぼしている要因は何か」を経営者に問うアンケートの結果が掲載されています。日本人経営者の回答では、「雇用規制」が第一に挙げられています。(中略)この連載のコメント欄でも、「日本は終身雇用だから、生産性が低い」「雇用規制を緩和しないと生産性は上がらない」「従業員のクビが切れないからダメだ」といった類の意見が寄せられることが少なくありません。

しかし
30年以上前から日本経済を分析してきました。昔は「日本は正規雇用ばかりだからダメだ」と言われ、非正規を増やし、終身雇用もなくすべきで、そうすればアメリカのように生産性が上がると言われたことも多々ありました。
そういう意見を言っていた人たちの主張通り、過去十数年、たしかに非正規雇用は非常に大きく増加しました。しかし、非正規がこんなにも増えたにもかかわらず、生産性は一向に向上していません。逆に非正規雇用者の増加が、生産性向上の妨げになるという悪影響を及ぼしているのが実態です。

そして
先のWEFのデータによると、労働市場の効率性と生産性との間に、かなり強い0.73という相関係数が認められます。日本人経営者が挙げた雇用規制がビジネスに大きな影響を及ぼしているというのは、理屈上は正しく、労働市場の効率性が非常に大切なことがわかります。
しかし、雇用規制が生産性に対して「悪影響」を及ぼしていると言うためには、日本の雇用規制が諸外国に比べて厳しいことが証明されないと、理屈が通らなくなります。
では、日本の労働市場の効率性はどうなのでしょうか。WEFの評価では、日本の労働市場の効率性は世界第22位で、決して低い評価ではありません。ということは、日本の労働市場の効率性は、日本の生産性向上を阻害しているどころか、実は貢献していることになります。

これは同感だ。経営側にこのやうな主張をする人がゐることに、敬意を表したい。(終)

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