千二百十 金儲けが主目的の事業はいけない(有料の不動産セミナーや見学会に参加してはいけない)
平成三十戊戌
十月六日(土)
(前編へ)スルガ銀行に処分が下った。投資用不動産向けの新規融資が6カ月間停止になった。気になるのは、スルガ銀行を担いできた人たちが無反省なことだ。数ヶ月前まで所属した不動産塾でも、「スルガる」と称して会員向けセミナーにスルガ銀行の行員を呼んだ人がゐた。その人が反省をした話は聞かない。
その人は別の理由でもよくない。会員向けに有料セミナーを次々に乱発する。会員は毎月1万数千円を払ふのだから、セミナーは無料が当たり前だ。私は三年間会員だったが、有料セミナーに行ったことは一回もない。厳密には一回だけ「塾長のお任せツアー」に参加した。参加費5000円で何か所か競売物件を自動車で回る。昼食付でこの値段だから、実費程度だ。塾長も、利益が目的ではなく会員のために企画したと云はれた。
今回、ツアーを数ヶ月ぶりに再会し会費が一万円ださうだ。それでもガソリン代、昼食代、高速代を除いた利益は二万円くらいで塾長の人件費だと思へば高くはない。高くはないが、会員は会費を毎月払ふのだから、今までのやうに五千円がよい。
今回この特集を組んだ理由は、お任せツアーがきっかけではない。臨時講師をときどき務める設計士の女性がマンションを新築した。設計士のセミナーは名称と中身が乖離してゐて、期待はずれではあったが、会員向けの無料セミナーとしては悪くはない。悪くはないと云ふ意味は、受講料を払ったらかなり不満が残る。今回新たにその女性の新築したマンションを見に行くツアーは、現地集合で一人二千円の謝礼を設計士に渡したほしいさうだ。
今まで会員が自主的に物件を無料で案内してくれたり、セミナーを担当する講師が無料で案内してくれることがあった。講師は時給のお礼と会員を増やすボランティアの意味があるし、会員は横の情報交換を期待して開いてくださった。その良俗を、有料見学会は破壊してしまふ。

十月七日(日)
最近、不動産塾とは無関係の不動産セミナーで、数万円の案内が来た。ずいぶん高額だ。不動産投資をする人は、少し利益を上げるとすぐ有頂天になって、書籍を出版したり有料セミナーを開きたがる。不動産投資を考へるすべての人たちに言ひたいことは有料の不動産セミナーに参加してはいけない。二千円程度でも見学会に参加してはいけない。
これは会社立ち上げを考へれば判る。数万円のセミナーに参加すれば、会社を設立して儲かりますと云はれて参加するか。する訳がない。そんな話があれば、他人には話さず自分で実行する筈だ。
私は読んでゐないが、以前に「きらきら大家」のハンドル名で投稿するのは塾の講師の誰々さんではないかと噂が飛び交った。塾を退会する直前には「共食ひ大家」の噂も飛び交った。「共食ひ大家」とは、有料セミナーで投資家からカネを巻き上げるらしい。
私は大家と云ふ語を使はない。大家とは家屋を管理する人のことだ。かつて長屋の持ち主は離れたところに住み、町内には家賃の徴収や管理を任された大家さんがゐた。あと大家を「たいか」と読み、その道の専門家のことだ。中国では大家とは「皆さん」と云ふ意味だ。多人数を大家と呼ぶのは良いし、昔の大家は町内の世話役で皆から頼りにされるから、これも大家と呼んで構はない。しかし1人の家主を大家と呼ぶと、カネに任せて人の上に立つ嫌な人間を連想する。だから私は、大家を使はず家主の語を用ゐる。尤も私が所有するのは二件三軒(一回は二軒同時なので合計三軒)に過ぎないので小家だが。

十月八日(月)
事業を立ち上げるには主目的が必要だ。自由経済の世の中だから、赤字になってはいけない。しかし金儲けを目的に事業を立ち上げてはいけない。「悪銭身に付かず」で長続きしない。別の表現を用ゐれば、取引先と従業員はおろか本人さへも心に歪みを生じるから長続きしない。主目的は、二つ考えられる。
一つ目は天職だ。天職で思ひ出すのは不動産塾の講師を非常勤で勤める男性で、その人は定期のセミナーのほかに、すごい節約をして資金を作り不動産投資に使ふセミナーを二回だけ開催したことがある。二回目に私も出席し、電気代を節約するので10アンペアの契約なので、質問の時間に私が「実は5アンペアの契約があり、これなら5Aでも大丈夫ですよ」と話したことがある。クーラーも電子レンジも暖房もないから、私はきちんと計算して太鼓判を押した。
別の人が、そこまで節約して人生の目的は何ですか、と質問し、返事に少しつまったので私が「不動産を購入することはxxさんの天職だと思ひますよ」と助け船を出したことがある。天職が大袈裟なら玄人裸足の趣味と言ってもよい。
事業の主目的で二つ目は、本人の才能を活用して社会に役立つことだ。本人の才能を活用するだけだと、金儲けを主目的にするのと変はらなくなる虞がある。慢心になる虞もある。さきほど紹介した男性は、予算を組んで利益の一部を福祉に寄付してゐる。寄付できることも不動産投資で成功する喜びだ、と語ってくれた。

十月八日(月)その二
私も事業計画は立ててみた。地方の安い物件を購入し東京の退職者を移住させれば、年金を地方経済に還元することになる。一方で健康保険の地方負担の増加と、生活保護になる確率を計算しないといけない。地方と言っても高崎辺りだ。不動産塾の講師を勤める男性は群馬県太田市を中心に物件を買ふ。私に、太田はやらないでね、と言ってゐた。私は高崎だから競合しない。高崎は関東だが首都圏とは市街が不連続だ。首都圏の退職者が移住を希望するかどうか。
以上は、十軒以上所持した場合の事業計画だ。まづ一軒目でつまずいた。高崎で競売に参加したが落札できない。千葉、宇都宮でも参加したが落札できない。ここで方針を変更し、任意売却から1件2軒、一般流通で1軒購入した。この時点で私なりに、どうすれば利益を上げられるかを発見できた。しかしまだ3軒なので発表するには至らない。
地方の安い物件を購入する事業計画は廃止した。不動産は、私の転職ではないし、才能でもない。自宅を売って子供の大学資金にし、残りで不動産を購入しただけだ。事業は、もっとたくさん所有する人がすべきだ。
最近気になることがある。金儲けを主目的に不動産投資を始める人が多い。ビットコインで儲けたので不動産投資もやってみたい。そんな人まで現れた。さういへば、不動産塾でもビットコインのセミナーを一回か二回行った。私はもちろん参加をしなかった。ビットコインは仮想のものだ。やってはいけない。
最後に、事業は黒字にしなければいけない。赤字だと、不正で数字合はせをするやうになる。(終)

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