千百六十一 事務部門は事業推進部門に(或る女性社員の退職)
平成三十戊戌
六月三十日(土)
昨日で事務部門の女性社員が出産のため退職した。私が人事採用部門だったときに、この女性が入社した。新入社員向けの毎年恒例の高尾登山にも、中途採用ではあったが時期が一緒だったので参加した。
山頂での昼食も済み、下山の後に麓のそば屋で懇親会を開いた。そのときの様子から、この女性は普通の事務員ではないと感じたが、そのとほりで元は幼稚園の教師だった。
その数年後、休日に或るお寺の幼稚園の前を通りかかった。何か月か経過して、職場で幼稚園が話題になり、あのお寺に付属幼稚園があるね、と私が話すと、何とその幼稚園に以前勤務したさうだ。
一ヶ月ほど前だらうか、私は加はらなかったが雑談で、幼稚園の給料は安く、就職したときは9万円だった、幼稚園勤務だと生活できない、と云ふ話が出た。

七月一日(日)
女性社員は別の会社の男性と結婚したが男性に不幸があり、四年後に社内の男性と再婚した。社内の男女が結婚する会社は健全な会社だ。社内の人間とは絶対に結婚しないし云ふ会社は不健全だからだ。
女子社員は昨年度から採用担当になった。私は一昨年まで、戻ってきたパソコンの初期化と必要ソフトのインストールを担当した。このことが仕事の接点を生んだ。
パソコンの初期化は一見すると技術が要らなさうだが、実は奥が深い。OSインストール用CDでディスクのパーティションを操作できない場合や、廃棄時に物理フォーマットするときは、隠し機能でコマンドプロンプトを表示させ、diskpartコマンドを使ふ。このやうな高度な技術が必要だ。
採用担当との接点は、自席で使用するパソコンのパスワードを変更したとき、会社説明会用のパソコンが二度とログインできなくなることがある。それは無線LANのパスワードがドメインに連動する一方で、会社説明会用のパソコンは無線LANに接続しないと新しいパスワードを取得できないためだ。
何となく古いパスワードでOSにログインできさうな気がするが、日にちが経過したためか、新しいパスワードを何回も試してロックが掛かり、ロック解除時に古いパスワードをパソコン内から破棄するためか。
通常は有線のLANを繋ぐのだが、会社説明会用のパソコンは大学廻りにも使ふため、有線のLANが装着されてゐない。この場合、まづ別のユーザでOSにログインし、すると無線LANにも繋がる。この状態でユーザを切り替へて、新しいパスワードを入れるとログインできる。
そんなことがあった。また、昨年から私の仕事に採用担当補助業務が加はったため、更に接点が生まれた。そのため、さくらんぼをおすそ分けで前に頂いた。義父は山形の出身ださうだ。そして最終出勤日の翌朝、私の席にメッセージとともにお菓子が置いてあった。映画「ビルマの竪琴」で水島上等兵の弾く「仰げば尊し」を聴く隊員たちの気持ちが、判る気がした。(完)

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