千百五十一(その百三十) 大地震直後に記者会見をする非常識な男
平成三十戊戌
六月二十一日(木)
大阪は大地震の翌日も混乱が続く。ケガ人の手当、鉄道、道路、電気、ガス、水道の復旧作業、壊れた建物の応急処置など大変な思ひをしてゐる。そんな時に記者会見を行った非常識な男がゐる。加計学園理事長である。
しかも開始の二時間前にFAXをマスコミに送ったから、地元の記者しか参加できない。多くの記者は被災地の取材に出払ってゐる。しかも時間は二十五分だけで、校務があると言って質問を打ち切った。何とも非常識な記者会見だ。
六月二十二日(金)
マスコミからも批判が相次いだ。スポニチアネックスによると
加計学園理事長、モヤイラッ会見 問題発覚1年後にようやく
との見出しで、記事の前半には
国民の疑問が払拭(ふっしょく)できる内容ではなく、なぜこの日に開催したのかなど、いくつもの「?」を残すものになった。
中盤で
記者が「(学園担当者が)勝手なことをしたという認識か?」と聞くと、加計氏は「はい、そうです」「本人は事を前に進めようとして言った」と返答した。学園側は約30分予定の会見を5分ほど早く打ち切り。報道陣から「なぜ早く切り上げるのか」との声が飛ぶ中、加計氏は足早に会場を立ち去った。
後半は
学園側が会見開催を報道各社にファクスで通告してきたのは、開始時間の約2時間前。送付先も地元岡山の記者クラブ加盟社のみで、問題を取材してきた東京の記者は現地には間に合うはずもなかった。一方的な対応に批判の声が続出。また、前日には大阪で地震が発生し、この日はサッカーW杯の日本戦。永田町では「大きなニュースのある日にぶつけて目立たなくしたのか?」とタイミングを疑問視する声も上がった。
六月二十三日(土)
加計学園について、更に驚くべき事実が判明した。マスコミを間に合はせなくしただけではなく、間に合っても中に入れなかった。LITERAによると
昨日、急遽おこなわれた学校法人加計学園・加計孝太郎理事長による問題発覚後初の会見が大炎上している。(中略)メディアの追及を最小限にするため、大阪北部地震が起きた翌日とサッカーW杯日本初戦というタイミングを“わざと”狙って会見をぶつけるという姑息かつ卑劣な所業をしでかしたのだから。
しかも、加計学園はさらに卑怯な手に出ていたことも判明。なんと、地元の記者クラブ加盟社しか会見場に入れず、集まったそのほかの記者たちを“門前払い”していたのだ。(中略)メディアも必死で食らいついた。実際、11時前に大手メディアの取材陣が加計学園本部前に辿り着いたが、ここで加計学園側は地元記者クラブ加盟社の記者しか入場を認めなかったのだ。
(前略)記者クラブという制度は例外なく癒着の温床でしかない。現に、今回の会見の幹事社は山陽新聞社だったが、山陽新聞社の越宗孝昌会長は加計学園の理事も務める人物。しかも、2012年3月には山陽新聞社と加計学園は包括連携協定を締結し、2009年には加計理事長が同社の第67回山陽新聞賞(教育功労)を受賞している。
加計学園はこれでも教育機関か。山陽新聞社はこれでもマスコミか。呆れるばかりだ。
加計会見の門前払いを喰らったメディアのひとつが、テレビ朝日の『報道ステーション』取材班だった。『報ステ』は加計学園が会見を開くことをキャッチすると、大阪北部地震の取材に当たっていた記者を急遽、岡山市に派遣。11時前に加計学園本部に到着したが、中に通してもらえなかったという。
昨日の放送ではそうした門の前での押し問答の様子も流したのだが、加計学園側の対応は噴飯ものだった。
『報ステ』スタッフは門の前で記者の排除に当たっていた加計学園関係者に「どういう選別をされていらっしゃるんですか?」と尋ねるが、加計学園関係者は「先程ね、説明に来たんですよ」と言うばかり。そして、大阪から駆け付けた別の記者に「いま説明に来ましたよね?」と話を振ると、その記者は「来てないじゃないですか」と静かな怒りを含ませた声で反論。加計側はここでも嘘の説明でごまかそうとしていたのだ。
加計学園は、上から下まで全員が噴飯物だ。
そのうち、「報道対応の責任者」という人物が説明のために門の前へやってきた。この人物は加計学園の皆木英也相談役というが、氏は〈岡山東警察署長をはじめ、岡山県警の要職を歴任〉した人物だ(岡山商科大学学報より)。
報道対応の責任者が、県警の元幹部とは驚く。教育機関でありながら、県警元幹部を相談役にする意図は何だらうか。文部科学省は、そろそろ加計学園の解散を検討するほうがよい。
六月二十四日(日)
記事は更に続く。
皆木相談役は、『報ステ』スタッフから「地元のメディアのみを中に入れるというのは理事長の意向なんですか?」と問われると(以下略)
「そりゃあもう、トップの判断。(中略)全部、理事長の判断をもらって、この学園としての意思としてやらせてもらっています」
さらに、「こういう会見のかたちは理事長が判断されるんですか?」という質問にも(以下略)
「そりゃそうです。うちは法人ですから、それだけ権限を下に下ろしておりません。すべて、こういう大きな重要なことは、すべて理事長判断をいただいております」
(前略)学校法人は社会からの信頼や公益性を備えていなければならず、そのためには自律的かつ透明性の高いガバナンスが担保されなければならない。なのに(中略)加計学園ではガバナンス機能が働いていないと認めているようなものではないか。加計学園はこんなことを相談役が平然と言ってしまうほど、加計理事長に権力が集中しており、すべては加計理事長の指示のもとで動いている、ということなのだ。
それなら尚のこと、事務局長が独断で嘘をつくなんてあり得ない。
六月二十五日(月)
記事は続く。
安倍首相が「獣医大学いいね」と言ったという面談の事実について、記者から「渡邉(良人)事務局長が勝手に(嘘をつくことを)やったという認識か」と尋ねられると、加計理事長はこともなげに「はい、そうです」と返答。その根拠を問われると、「根拠は、とにかく記憶にないし記録にない」と自信満々に答えた。「記憶にも記録にもない」ことが、根拠になり得るというのである。まったく安倍首相と瓜二つではないか。
だが(中略)愛媛県文書には、ふたりが面談をおこなっていなければ辻褄が合わない記述が複数にわたって存在している。これにふたりがまともに反証できていないことからも、加計理事長と安倍首相が嘘をついていることは誰の目にもあきらかなのだ。
そのとほりだ。更に
加計理事長は会見で、「何十年来の友だちなので、仕事のことは話すのはやめようというスタンスでやっている」だと述べたが、(中略)だとすれば、なぜ安倍首相は千葉科学大学開学10周年や加計学園創立50周年の記念式典にわざわざ駆け付け、祝辞まで述べたというのか。しかも、加計理事長は安倍首相の別荘で開かれたバーベキューに獣医学部新設の事務担当者であった渡邉事務局長を同伴し、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)に挨拶までさせているのだ。
記事は最後に
加計理事長は、記者からの「国会からの招致の要請があればどうするか」という質問に対し、「私が決めることではない」と言いつつ、余裕綽々な様子で「お待ちしています」と答えた。安倍首相の権力を笠に着て、絶対に招致されないと高を括っているのだろう。(中略)今度はしっかり国民に説明すべく、国会に招致し、あのゲスっぷりを再現していただくほかない。
野党と、自民党非安倍側各派の良識に、国民は期待してゐる。(完)
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