千六十(その一) 千葉県内の鉄道(1.客車のオルゴール、2.二つの高額鉄道、3.佐倉駅の引き込み線)
平成二十九丁酉年
十二月三日(日)曲を訪ねて三千里
千葉県内に用事があり東葉高速鉄道に初めて乗った。そのため今回は千葉県内の鉄道を特集することにした。
千葉県の鉄道で一番気になるのは、小学校五年生の夏休みに臨海学校で両国から房総東線(当時)の岩井まで客車の列車に乗った。そのとき車内放送の音量が小さく、ほとんど聞き取れないなかで聞いたオルゴールの曲は何だったか。
気動車は「アルプスの牧場」、電車は「鉄道唱歌」。これは前から知ってゐた。客車が「ハイケンス」だと云ふことは19歳のときに知った。このころ路面電車の廃止が相次いだので、それまで国鉄にあまり関心がなかったためだ。
一旦は「ハイケンスのセレナーゼ」だったのかと数年間喜んだが、何か曲調が異なる。その後、10年ほど前にインターネットで客車用に別の曲も使はれたことを知った。このときも数年間喜んだが、やはり曲調が異なる。
昨日インターネットを調べるうちに、「ブラームスの子守歌」が20系の急行「銀河」で使はれたことを知った。これは曲調が近い。しかし20系だから異なる。昭和50年に米原発長岡行き普通列車の謎のオルゴールがある。これは曲として成り立つのかと云ひたくなるやうな変な曲だ。これでは無い。

十二月三日(日)その二東葉高速鉄道
東葉高速鉄道に乗ったら運賃がやたらと高い。千葉県内にはもう一つ北総鉄道があり、これも同じ程度に高い。しかし二つの鉄道が高い理由と、乗客の反応は異なる。まづ東葉高速鉄道は、同社のホームページによると
「日本鉄道建設公団」(現在は「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」)が資金調達と建設工事を行い、完成後に当社が買い取ったものです。
買い取り代金(=鉄道建設費)はおよそ3,000億円で、当社はこれを平成14年から60年間の分割払いで「鉄道・運輸機構」に返済しているところです。
当社の年間の運賃収入はおよそ150億円ですが、(以下略)

当時の国鉄は赤字路線の建設をさぼるため、鉄建公団が作られた。後に国鉄は建設された路線の引き取りを拒否するやうになり、第3セクターを設立して営業を開始するやうになった。
東葉高速鉄道は当時の運輸省(とその審議会)、帝都高速度交通営団(私が25歳くらいまでは、切符にもこの名称が印刷されてゐたがその後「交通営団」とぼかすやうになった)の管轄下で建設が決まり、帝都高速度交通営団は確か国鉄が7割出資してゐた。つまり完全に運輸省(現、国土交通省)の責任だ。それなのに帝都高速度交通営団が手を引き、次に声を掛けた京成電鉄には断られ、千葉県などが出資する第3セクターで建設された。
その間にバブルがあったため建設費が高騰し、このやうに高額な運賃になってしまった。しかし距離が短い上に、乗り入れる東西線が安いため、都内まで行く人からそれほどの不満は出ていない。

十二月三日(日)その三北総鉄道
北総鉄道は、まったく別の理由で高い。千葉ニュータウンは昭和41年(1966)に計画人口34万人で開始したのに、平成25年(2013)の事業終了時に人口は9万6千人に留まった。北総鉄道の運賃が高いのは、千葉ニュータウンの縮小が原因と云はれてきた。
もし本当にそれが理由なら、私が改めてここで取り上げたりはしない。別の理由があると考へる。千葉ニュータウンへは都営地下鉄新宿線を本八幡から延長し、県営鉄道としてもう一つ鉄道を建設する計画があった。不確実だがこれもメトロニュースで見た記憶がある。
千葉ニュータウンが縮小された結果、県営鉄道は中止になった。北総鉄道と県営鉄道の輸送量を同じとすれば、計画人口34万人を17万人まで下げることには対応できる。当時と異なり今は共働きが多いから、今の人口10万人は当時の人口15万人に匹敵する。十分に対応できるはずだ。
北総鉄道の運賃が高いことには、多くの乗客が不満を持ち、訴訟騒ぎや市長選での争点やバス運行騒ぎにまでなった。その理由は北総鉄道が東葉鉄道と比べて長距離な上に、京成電鉄、都営地下鉄と乗り入れるから高額になる。

十二月三日(日)その四解決策
北総鉄道は京成電鉄に50%を出資させるから悪い。東葉鉄道を拒否した京成電鉄だ。北総鉄道の株式も売却させ、JRと同じ軌間も敷設して(三線式)成田エクスプレスやJR乗り入れ普通列車を走らせ、高砂の少し先で新金線(貨物線)から総武線に乗り入れる。

以上は小手先の解決策で、もっと根本の問題がある。つくばエクスプレスと云ふ鉄道がある。こちらは資本金が1,850億円で、JR東日本の2,000億円に次ぎ、鉄道会社で第2位だ。しかも借入金の大部分が無利子だ。
私はつくばエクスプレスが好きではない。その理由は浅草駅にある。地下鉄と東武鉄道の浅草駅とは離れた位置にあるから、浅草など別の駅名にするのが当然だ。
このやうに非常識なつくばエクスプレスは通常運賃。かつて運輸省(当時)や千葉県の行政に従って建設された二つの鉄道は高額運賃。ずいぶん矛盾した話だ。今からでも遅くはないから、増資の上で無利息借り入れに切り替へるべきだ。

諸悪の根源は役所にある。本来の役所は税金を消費して活動するから、収支が判らない。それに比べて運輸省の審議会が計画したものや、役所の主導で始めたニュータウンは失敗する。多摩ニュータウンだって将来は判らない。

十二月五日(火)二つの得意先
北総鉄道の三線式をもう一度説明すると、自動車部品製造会社に例へると判り易い。今までは日産自動車が50%の株を持つので日産にしか納入できなかった。そして赤字が続いた。日産に株を手放してもらって、トヨタ、日産に納入するやうになった。そして黒字になった。同じことを北総鉄道でもやればよい。
京成が株を手放さない場合は、東葉鉄道を増資する。そして運賃をつくばエクスプレス並みに下げる。そのうち北総鉄道でも利用客が苦情を云ひ出し増資せざるを得なくなる。

十二月六日(水)佐倉駅の引き込み線
半年ほど前だらうか。職場の社内コンパで、千葉県に住む鉄道の好きな若い技術者と話をした。昔、西千葉に気動車区があったこと、両国からお茶の水までディーゼル機関車が牽引したお召列車が一回通ったこと、佐倉は12系客車が6両だったが後にディーゼル発電機を備へた車両を二両にするため9両になったこと、客車や気動車を大宮工場に回送するときは我孫子経由の貨物列車の車掌車の前に連結したことなどを話した。
人生が長い分、私の知識は豊富だが、佐倉駅の千葉寄りに西側に向かふ引き込み線があり、昔の鉄道連隊の演習線(今はほとんどが新京成電鉄線)に繋がってゐたのではないかと云ふと、距離が遠いからそれはないのではないかと云ふ。
私は千葉県にそれほど土地勘がなかったから今までずっと鉄道連隊の演習線だと思ってきた。違ふとすると何だらうか。近くに工場はない。調べるうちに昔は佐倉駅から千葉方面への線路が西側を走ってゐたことが判った。旧線路の手前を保線用に残すことはよくある。一ヶ月ほど前からこれではないかと思ふやうになった。(完)

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