千三十一(その四十五) 「この男」の化けの皮がはがれる
平成二十九丁酉年
十月九日(月)
日本のことを「この国」と呼ぶ人が出て来た。かつては誰もが「日本」「我が国」と呼んだのに奇妙な表現だ。奇妙な理由はどの国にも使へる。例へば北朝鮮のことを色々述べたあと「この国は」と云へば、それは北朝鮮を指す。
だから少なくとも私の年代なら誰も使はないし、私より十歳下でも云はないだらう。ところが二時間の党首討論の冒頭で安倍は「この国を守り抜く」と書いた。党首討論はまづ長さ50cm幅40cmぐらいのホワイトボードに字を書いてもらひ、それを三十秒で説明する。
最近は「この国」がときどき出て来るから、ついつられて使ったのなら大目に見たい。しかし今回は二時間余の党首討論の冒頭だ。しかも字に書いたから瞬時の発言ではない。それなのに「この国」はひどい。「この男」は私より一歳年上だ。それなのに使ふとは「この男」は本当に保守なのか。

小池さんはホワイトボードに「国民ファーストの政治で日本に希望を」と書いた。国民ファーストを前面に掲げるのは良いことだ。「都民ファースト」と「希望の党」の橋渡しをした。「希望の党」が都議会議員選挙での「都民ファースト」になるには、あと悪者が必要だ。前回は都議会のドンと国政の「この男」が悪者を演じてくれた。今回は「この男」が二役を演じる。

十月十日(火)
焦点は自民党が議席をどれだけ減らすか。「この男」は党首討論で「私が自民党総裁として(与党で)過半数を取れば、当然首相指名を受ける候補として出る」と述べた。厚かましいのにも程がある。お友達濡れ手に粟を誤魔化すため衆議院を解散し、落選した自民党議員のことを考へれば、議席を減らしたら退陣が当然だ。とは云へ前回は勝ち過ぎだから与党で憲法改正に必要な十一議席減までは許容範囲だらう。

輿論調査によると希望の党が思ったほど伸びない。希望の党は新しい政策を掲げてはいけない。安倍批判に徹するとよい。野党は攻撃、与党は守備。野党が政策を掲げると守備になる。野党が政権を取ったあとは従来の政治のうち攻撃した部分を修正してあとは従来の政治を続け、国民の意見を聞きながら少しづつ変へればよい。国民は「この男」の公私混同を怒ってゐるのであり、従来の政治そのものを怒ってゐる訳ではない。

十月十一日(水)朝
例え話をしよう。町の有力者が共有財産をお友達に補助金として優遇した。町民は総出で怒った。俺たちが汗水流して働いて作った共有財産だぞ。町の有力者は誤魔化すため国会議員選挙に立候補し、消費税を教育に使ふだのと政策を並べ立てた。町民もそれにつられて政策への批判を始めた。これでは有力者の思ふ壺だ。
町民は有力者が共有財産をお友達に優遇したことを批判すべきで、政策論争をしてはいけない。

十月十一日(水)夜
「この男」は党内でも批判されてゐる。9月20日の読売オンラインによると
河野洋平元衆院議長は20日、東京都内の日本記者クラブで記者会見し、臨時国会冒頭での衆院解散について、「安倍首相は(学園問題などを)丁寧に説明すると言ってきたのに、一度も丁寧な説明をしないで冒頭で解散する。理解できない」と述べ、首相を批判した。
河野氏はまた、野党が憲法53条に基づいて臨時国会の召集を要求してきたことに関し、「要求された臨時国会をずっと開かず、冒頭に解散する。(首相は)議会制民主主義の本旨を踏まえてほしい」と苦言を呈した。

今回の争点はここだ。今の与党は憲法改正を発議できるにも関はらず解散した。もし議席が1/3を割ったら自民党各派は「この男」を引き摺り降ろすべきだ。憲法改正には積極的な派と消極的な派があることだらうう。しかし自主憲法を党是とする以上、これはやるべきだ。(完)

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