千十八(その三十三) 安倍の保守主義は偽物だ
平成二十九丁酉年
八月三十日(水)
安倍の保守主義は偽物だった。今は憲法改正のよい機会だ。加計学園に申請を取り下げさせれば、七十年間できなかった憲法改正が実現できる。それなのに安倍はお友達の利権を優先させる。

八月三十一日(木)
安倍が本物の保守主義者ではないことは、西尾幹二さんも主張してゐる。Newsポストセブンに載った週刊ポスト2017年9月8日号によると
もともと相容れぬ敵から太刀を浴びせられるより、一度は信じた相手から裏切られたほうが、傷口は深い。ついに始まった保守論客による安倍批判は、まさにそれだ。安倍政権を信じて支え、挙げ句に裏切られたことのショックは、これまでにない強烈な批判に転じて、首相に襲いかかろうとしている。
〈憲法改正をやるやると言っては出したり引っ込めたりしてきた首相に国民はすでに手抜きと保身、臆病風、闘争心の欠如を見ている。外国人も見ている。それなのに憲法改正は結局、やれそうもないという最近の党内の新たな空気の変化と首相の及び腰は、国民に対する裏切りともいうべき一大問題になり始めている〉
保身、臆病風、及び腰、裏切り……激しい言葉が並んだ痛烈な安倍批判を書いたのは、保守論客として知られる西尾幹二氏で、掲載されたのは産経新聞(8月18日付)である。

九月一日(金)
記事は続く。
西尾論考の波紋はまだまだ広がりそうだ。ベテランの政治部記者は言う。
「森友・加計問題で逆風が吹き荒れる中、それでも安倍政権の支持率は30~40%台に踏みとどまっていた。安倍首相は支持率を下支えしているのが、コアな保守層だと信じている。だからこそ、保守系のメディアや評論家、ネット上で安倍支持を訴える人たちの評価を一番気にしているし、保守派からの批判を一番気にしている」
 その恐れている事態が現実となりつつある。安倍政権に期待が強かった分、裏切られたと感じた人たちは強力な反安倍に回る。支持基盤である保守層が離反していけば、文字通り政権の“底が抜ける”ことになってしまう。
加計学園に申請を取り下げさせて、このまま憲法改正に向かふのか、それともお友達濡れ手に粟商法を優先させるのか。保守派も注目してゐる。

九月二日(土)
二十年前に江藤淳さんが小沢一郎さんのことを「小沢君、水沢に帰りたまえ」と産経新聞のコラムで呼びかけたことがある。
江藤氏は政治家としての小沢氏を高く評価していた。それゆえに党首を務めていた新進党が分裂危機を迎えた小沢氏の苦境を憂え、地元である岩手県の水沢に帰って他日を期すべきだ、と説いた。
今回の安倍批判も、叱咤激励なのではと
江藤淳氏による小沢一郎氏への檄文は言葉こそ厳しかったが、それは期待の裏返しだった。現在の保守論客による安倍批判も、本音はそうではないのか。西尾氏にこう向けたところ、一笑に付された。
「いや、私には江藤さんのように叱咤激励するつもりはないですよ。単純に安倍首相の人間性に呆れ、失望しただけです」
 安倍首相はもはや、下関に帰ったところで再起はできないのかもしれない。

まったくそのとおりだ。(完)

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