千十八(その三十一) 1.設計関連文書、2.議事録の改ざん
平成二十九丁酉年
八月二十日(日)
週刊朝日のオンライン限定記事に『安倍政権さらに窮地 加計学園の獣医学部新設「設計関連文書」全文を入手』と題する記事が載った。これによるとまづ
本誌は安倍官邸が国会で頑なに詳細を隠していた今治市職員の「謎の官邸訪問」の詳細をスクープ。
 国家戦略特区を使った獣医学部の新設を今治市が国に提案するより2カ月も前の2015年4月2日、官邸で加計学園、柳瀬唯夫首相補佐官(当時)、今治市、愛媛県の4者が“密会”していた事実を報じた(17年8月16日)。市町村の課長クラスが官邸を訪問することは異例中の異例だ。
そしていよいよ設計文書も出て来た。
国家戦略特区で加計学園の獣医学部の新設がOKとなったのは、最先端のライフサイエンス研究ができる施設、設備を設置することが条件だった。
 加計学園は、これまでの獣医学部にはない、最先端のライフサイエンス研究のために「バイオセーフティーレベル3」の施設をつくるとしている。(中略)本誌が入手した文書の11ページにバイオセーフティーレベル3の研究施設が記されている。だが、それを見た研究者はこう指摘する。
「隔離性が低く、危害性の高い病原微生物等を取り扱う教育、研究、病性鑑定には不向き。これでは高病原性鳥インフルエンザの検査、診断、実験、研究は難しいと思う。施設全体でみても、動物実験を理解していない人が設計しているんじゃないか」
補助金が絡む建築費については
半額の96億円の補助金を今治市と愛媛県から得ることになっている。だが、設計図を見た建築エコノミスト、森山高至さんはこう指摘する。
「獣医学部なので特殊な建物かと思っていたら、ごく普通の商業施設と同じレベル。なんらかの獣医学部の施設がプラスされるのでしょうが、坪単価で80万円から、高くとも100万円でしょうね。とても150万円するとは思えない」
坪単価を過大に申告したとなると
森友学園の籠池前理事長らが逮捕されたのも、国交省に小学校の建築費を過大に見積もって、補助金を多く受け取ったとされる詐欺容疑。それと同じ構図が浮かぶ。民進党幹部がいう。
「文書の全容を国会で審議すれば、疑惑がより鮮明になる。すぐにでも国会で安倍首相に問いただす機会をつくるべきだ」


八月二十五日(金)
日刊ゲンダイもこの問題を報道した。それによると
獣医学部棟最上階の7階大会議室は、ワインセラーやビールディスペンサーを完備した配膳室の真横。さながら“パーティー会場”だが、問題はそれだけではない。図面から浮かび上がるのは、「世界に冠たる先端ライフサイエンス研究」を行う施設としての重大欠陥だ――。
(前略)WHOの指針によると、<実験室は、建物内の交通が制約されていない区域と切り離されなければならない>と定められている。
 つまり、自由に人が行き来できる場所から遮断する必要があるのだが、今治キャンパスの獣医学部棟に設置されるBSL3施設は、研究エリアやディスカッションスペースのすぐ横に造られる予定だ。WHOの指針を完全に逸脱している。
その結果として
専門家が見れば一目瞭然。シロート同然の設計なのだ。こんな欠陥施設のために評価額36億円の広大な土地を無償で払い下げ、さらに最大96億円という破格の補助金まで支払われるのだ。締めて、約133億円――。おまけに獣医学部内の事故によってパンデミックが起こっても何ら不思議ではないのだから、害悪施設を税金で建てるようなものだ。
「図面を見た国立研究所の安全管理専門委員のひとりは、このまま研究を始めたら『1週間で感染者が出る』と指摘しています。(以下略)
それにしても
学園側のトップである加計孝太郎理事長は市民に対して、感染リスクの予防についてきちんと説明する必要がある。
 それをせずに逃げていては、先端ライフサイエンス研究なんて“夢のまた夢”だ。


八月二十六日(土)
国家戦略特区ワーキンググループが批判に耐へかねて議事録を公開した。議事要旨と内容が正反対だった。テレ朝newsによると
25日に公開されたのは、おととし6月に行われた獣医学部の新設に関する会議の議事録です。内閣府の藤原審議官が議事内容を公表するか尋ね、愛媛県側が「非公開でお願いできたらと思っている」と答えています。
それなのに今年3月に公表された議事要旨では
藤原審議官が「公開の扱いでよろしゅうございますか」と問い掛け、愛媛県の担当者が「はい」と答えていました。
これについて
民進党・山井国対委員長:「こんな議事要旨までが改ざんされて発表されるようだったら、国民は何を信用したらいいんですか」
そのとおりだ。

八月二十六日(土)その二
しんぶん赤旗のホームページによると
「加計」獣医学部認可するな
“選定経緯検証を” 国に党愛媛県委要請

 (前略)日本共産党愛媛県委員会(林紀子委員長)、党東予地区委員会、党今治市委員会は、文部科学省や内閣府などに申し入れしました。申し入れでは、国家戦略特区による獣医学部は認可すべきでないと指摘。事業者が同学園に決まった経緯などについて検証を求めました。

国会議員も同席

 申し入れ文書では、特区の認定過程が不透明だと強調。獣医学部の建設費192億円の半額を愛媛県と今治市が補助する計画については、「市の財政と住民向け施策の圧迫要因」になっていると指摘しました。また将来的に「エボラ出血熱」など危険度の高い病原体を用いたバイオセーフティーレベル(BSL)4の研究に取り組む可能性もあると懸念を表明しました。
(中略)
 文科省は「今後、閣議決定された4条件など国家戦略特区で新設される獣医学部が満たすべき条件と、設置認可申請の中身が違っていると判断されれば、内閣府に差し戻して確認を求めていく」と答えました。
民進党も共産党も、権力を攻撃する姿が一番美しい。都民ファーストの会が都議選で勝利したのも、都議会のドンや自民党東京都連会長などを批判したからだ。野球で攻撃のときに守備をしては駄目だ。守備は政権を取ったあとだ。

八月二十七日(日)
議事録の改ざんがその前の八月七日にもう一つあった。日刊ゲンダイによると
 また「加計ありき」を裏付ける新事実が発覚した。国家戦略特区の規制改革メニューに獣医学部新設が加わる直前、2015年6月の特区ワーキンググループ(WG)のヒアリングに、愛媛県と今治市職員とともに加計学園の幹部が同席。それなのに、今年3月公開のWG議事要旨には加計幹部出席の記載が一切なかったのだ。
幹部とは現、加計学園新学部設置準備室長の吉川泰弘らだが
 八田氏は7月の衆院予算委で「議事を公開している。一般の政策決定よりはるかに透明度の高いプロセス」と強調し、内閣改造後の3日にテレビ出演した安倍首相は「特区WGの議事録はすべてオープンになっている」と胸を張っていた。いやはや、である。
「国家戦略特区の正体」の著者で立教大教授の郭洋春氏(経済学)はこう言う。
「ヒアリングの出席者は会議の性格を位置づける非常に重要なポイント。問題の場に加計関係者が出席した事実を伏せていたのは、“加計ありき”の獣医学部新設をヒタ隠しにするためだったのではないのか。そう類推するのが極めて自然でしょう」
(完)

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